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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その255

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「グァアア…ッ!ガァアアアッ!!」



「パルンガ!!」



「狂気の血とも言えるが、そのゼドケフラーからすれば、崇高な血とも言える。暴威の脈打つ衝動を抑える事ができれば、この血はこの上ない力を与えてくれるのだ」



血だと?パルンガに吹き矢で打ったのは誰かの血か?



「私の体にも取り入れているのだ。決して毒などではなく、使い方によっては素晴らしい贈り物だ」



「グァアアッ!グァアアッ!」



「まさか、パルンガに変な血を打ち続けていたのか!?」



「ほう?この血の価値を分かっていないな。そう易々と貴重な血を分け与える訳もなかろう。今回は君が私に過ちを犯さぬ様、仕方なく行った措置というものだよ」



パルンガは幼獣の体がもたなくなっていたのは間違いない。でも、数日で急激にこんなにも興奮状態になったりして、俺に殺すしか言わなくなったりはしないだろう。

てめえ、仕組みやがったな!?



「サイクロス、落ち着いて。どの道、そのゼドケフラーはもう生きられない。その死体同然の獣人に君は殺されて本望か?生きるためには、結局は…」



「誰にも期待してはいけないんだよ!」



うるせえよ、グラッチェリ!?

俺は、誰にも期待しちゃいねえ…。

ただ、こいつはこんな事してる暇なんかねえんだよ!

ベルダイザーを追わないと、死んじまう。



…。



もう間に合わねえとか、この際どうでもいい。

最後まで、ベルダイザーを追わせてやりたいんだ!



「ガァアアアッ!ガァアアアッ!」



パルンガの目に光が戻った。また少し体が大きくなって、筋肉質になった。鼻息が荒い。

興奮状態だ。

それは打たれた血のおかげか?

でも、体の至る所が痙攣して、その度にパルンガの表情が歪んでいる。苦しいんじゃないのか?



お前、もう…。



本当に、死んしまうぞ。



「おい、パルンガ!俺の声が聞こえるか?」



「ガルルルルッ!」



「俺はお前の事、最初は頭おかしい変な奴だって思ってたけどな…」



「ガルルルルッ!」



「お前があまりにもバカで…」



「ガァアアアッ!!」



「単純な奴だから…」



「ガァアアアッ!ガァアアアッ!」



「俺なんか助けにきてくれたお前の事…」



「ガァアアアッ!」



「いつの間にか、大切な友達だって、思っていたんだよ…」



「ガァアアアッ!ガァアアアッ!!」



「殺ス…!」



「そうか。そんな体になってまで、俺を殺したいか」



「そうか…」



やっぱり、俺とは違うって事なのか。

この世界の奴らは冷酷でイヤな奴ばかり。でも、お前は。

お前だけは違うと思ってたのに。



「ガァアアアッ!殺ス!!」



もうわかったよ。

パルンガ。

だから、何度も殺すだなんて、言わないでくれよ。

頼むから…。



「ベルダイザーァアアッ!!」



「!?」



「パルンガ!?」



お前まさか、俺の事…。



ベルダイザーに見えているのか?
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