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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その253

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左肩が焼ける様に痛い。ほぼ無防備な状態でパルンガの攻撃を受けちまった。

まだ顔や胸じゃないだけマシなのかも知れないけど、傷の具合がわからない。

とっさに体を逸らしたから、いくらかは攻撃の威力は殺したかも知れないけど。

パルンガは俺が攻撃を食らいながらも回り込む様に動くと、追撃が思う様にできていないでいた。

体が異常に重そうだ。



「グルルルッ…!」



俺が呼びかけても、少しもまともに戻ってくれない。

力一杯攻撃しやがって、少しは遠慮しろよな…。



「闘え、闘え!」



「殺せ、殺せ!」



目を覚ませ、パルンガ。

お前はこんな所で俺と闘っても仕方がないだろう。

お前が求めているのは、ベルダイザーのはずだ。

俺を倒したって、お前が成獣になる事はない。



「げぇぇ…。お前は卑怯な奴だなぁ。何で闘わないんだ?相手の体力を奪って、動きが鈍ったところをやるつもりか?リョウマ族は楽しいな」



何?俺の後ろの竜の杭辺りにいる奴から声が聞こえる。

耳障りな声だ。

陰湿そうで気味が悪い。



「どうせ、お前もこの闘いに勝とうが負けようが、ハムカンデの奴隷は確定だ…。好きにすればいい。でも、そうはなりたくないんだったらよ、ゼドケフラーと闘う振りをして、ハムカンデを狩る隙を狙った方が利口だよな?」



何だ、こいつ。この街の奴じゃないのか?ハムカンデを敵視してるのか?



「ガルルルルッ!」



パルンガの唸り声に力が戻った。次の攻撃がくる。

はぁっ、左肩は痛い。だけど、剣が構えられない訳じゃない。力は入る。肩の鎧の部分は貫かれていない。

だけど、パルンガの攻撃を真正面から受け続けたら、いくら剣越しだとは言え、俺の体が先にやられる。

傷を負ってるんだし、当然だよな。

この街で俺の事を良くしてくれた様な奴は、結局は裏切り者だ。

俺みたいな奴は少し優しくすればなびく様な、かんたんな奴だって思われていただろうな。

利用しやすいって、思っただろうけど。

残念だったな。

利用しやすくても、大して役には立たない。

だけど、俺もまた、お前らを利用してやったとも言えるよな。

情報も手に入ったし…。



「ガァアアアッ!」



パルンガの突進!?

来いよ、俺はとっくに剣を構えているぞ!



ダダダーーーンッ!



地面を蹴って、大きく飛んだその瞬間、俺はお前の真正面にはいない!



ザザザッ!



ブンッ!



俺は対戦の稽古を何度もやった。意図はどうでも、俺もまたグラッチェリを利用して、立ち回りの技術を手に入れたって事だ。



ザザーーッ!



パルンガ、お前も底なしの体力がある訳じゃない。幼獣の体の限界という事もあって、動きは鈍くなるばかりだ。

感情だけがほとばしってるけどな、体力が落ち続ければ怒りが引いて、俺の声が少しは耳に入る様になるんじゃないのか?

俺達がやっている事は、全くの不毛なんだよ。

闘う相手は俺じゃない。

俺は、お前の敵じゃないんだ。

俺とお前との思い出を、少しは思い出せ。

俺は、お前と旅してきて楽しかった。

お前も、そう悪くはなかったんじゃないのか。



「いい加減、目を覚ませ。パルンガ!」




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