332 / 395
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その234
しおりを挟む
「心眼…」
その名前を俺は聞いた事がある。
何処で?
わからない。
その名前を思い出そうとすると、不思議と何かが俺の頭の中の奥へ奥へと遠ざかって、中々捕まらない。
そんな感覚がある。
くそ…。
でも、神仏候の2人に分かれた片方は、城の地下に閉じ込めて、そして気づいたら消えていたんだよな?
俺の後ろにいる奴は、どっちだ?
地下から消えた奴か?
それとも、その前に消えた奴の方か?
「!?」
急に体が軽くなる。
俺の後ろにいた奴の気配が消えた。
振り返ってみると、やっぱりそこには誰もいない。
気づけば、周りの街から浮かぶ明かりが戻っていた。
ヒソヒソと声が聞こえてくる。
俺が城に向けて真空斬を放ったからだ。ハムカンデに逆らった、余計な事をしてくれたとでも言う様に。
従順なお前らの方が、どうかしてる。
ハムカンデはそこまで信用できる奴じゃないだろう。
あいつは、胡散臭い奴じゃないか。
…。
家からぼんやりとした明かりが落ちる地面に、血溜まりの中のシブの頭が見える。
その口元は、少し微笑んでいた。
血の気をなくし、もうシブは動かない。
指先が震えてくる。
あれだけしゃべる奴が、もう何も。
何も話しはしないんだ。
もう、苦しまなくて済むから、うれしくて微笑んでいるのか?
最後に俺に言ったよな。
ハクマ、良かったって。生きていたんだね、って。
本音が言えて、もう思い残す事はないのか?
本当のお前は、暮梨みたいに、棘で作った壁の中に、優しさが溢れていたんだ。
ああ。
お前とは色々とあったけどな。
助かったよ。
ありがとうな…。
でも、この世界じゃ、俺みたいに弱いと、誰も助けられないんだ。
もっと俺が強ければ、状況が違ったのかも知れない。
家族もバラバラになったからな。
きっと、俺の世界でも、何も役に立たない。
遠くの方で、クスクスと笑ってる奴がいる。
ハムカンデにケンカ売って、正気に帰って、後悔してる様に映ったか?
不幸そうな奴を見るのは楽しそうだもんな。
でも、俺は後悔してねえよ。
血塗れになって死んだシブが、微笑んでるんだよ。
ああ。
俺はあいつに勝つぜ。
言葉巧みに、自分の思うままに周りを人形みたいに扱って、気に入らなければ捨てていく人でなしは許せないよな。
やってやる。
だから、安心して眠ってくれ。
もう、お前を束縛するものは何もない。
古球磨族という種族の名すら、束縛できないんだ。
もう、安心だ。
…。
シブをこのままここに置いては行けないな。
何処かに持っていって、埋めてやろう。
「?」
ゾクッ!
何だ、この強烈な圧迫感は?
息ができない。
俺の後ろに、何がいるんだ…!?
カツッ。
カツッ。
「…あ」
ゲル!!?
「…シブ」
ゲルはシブの名前を読んだ後、うねった前髪から垣間見える目で、心まで凍りつきそうなとても冷たい目で俺を見た。
でも、俺を殺そうとする様な目じゃない。
俺は恐くて、その目から逸らす事も、睨み返す事もできなかった。
カツッ。
カツッ。
ゲルは俺を見つめた後、目を逸らして、シブの死体を持ち上げると、ゆっくりと城の方に向かって歩いていった。
ゲルが俺に言いたかった事はわかってるんだ。
死なせやがった。
そう言いたいんだろう?
ゲルは状況がわかっていたから、俺に刀を向けていない。
俺に守れる力なんてなかったんだ。
ごめんよ…。
俺。
何もできなかった…。
その名前を俺は聞いた事がある。
何処で?
わからない。
その名前を思い出そうとすると、不思議と何かが俺の頭の中の奥へ奥へと遠ざかって、中々捕まらない。
そんな感覚がある。
くそ…。
でも、神仏候の2人に分かれた片方は、城の地下に閉じ込めて、そして気づいたら消えていたんだよな?
俺の後ろにいる奴は、どっちだ?
地下から消えた奴か?
それとも、その前に消えた奴の方か?
「!?」
急に体が軽くなる。
俺の後ろにいた奴の気配が消えた。
振り返ってみると、やっぱりそこには誰もいない。
気づけば、周りの街から浮かぶ明かりが戻っていた。
ヒソヒソと声が聞こえてくる。
俺が城に向けて真空斬を放ったからだ。ハムカンデに逆らった、余計な事をしてくれたとでも言う様に。
従順なお前らの方が、どうかしてる。
ハムカンデはそこまで信用できる奴じゃないだろう。
あいつは、胡散臭い奴じゃないか。
…。
家からぼんやりとした明かりが落ちる地面に、血溜まりの中のシブの頭が見える。
その口元は、少し微笑んでいた。
血の気をなくし、もうシブは動かない。
指先が震えてくる。
あれだけしゃべる奴が、もう何も。
何も話しはしないんだ。
もう、苦しまなくて済むから、うれしくて微笑んでいるのか?
最後に俺に言ったよな。
ハクマ、良かったって。生きていたんだね、って。
本音が言えて、もう思い残す事はないのか?
本当のお前は、暮梨みたいに、棘で作った壁の中に、優しさが溢れていたんだ。
ああ。
お前とは色々とあったけどな。
助かったよ。
ありがとうな…。
でも、この世界じゃ、俺みたいに弱いと、誰も助けられないんだ。
もっと俺が強ければ、状況が違ったのかも知れない。
家族もバラバラになったからな。
きっと、俺の世界でも、何も役に立たない。
遠くの方で、クスクスと笑ってる奴がいる。
ハムカンデにケンカ売って、正気に帰って、後悔してる様に映ったか?
不幸そうな奴を見るのは楽しそうだもんな。
でも、俺は後悔してねえよ。
血塗れになって死んだシブが、微笑んでるんだよ。
ああ。
俺はあいつに勝つぜ。
言葉巧みに、自分の思うままに周りを人形みたいに扱って、気に入らなければ捨てていく人でなしは許せないよな。
やってやる。
だから、安心して眠ってくれ。
もう、お前を束縛するものは何もない。
古球磨族という種族の名すら、束縛できないんだ。
もう、安心だ。
…。
シブをこのままここに置いては行けないな。
何処かに持っていって、埋めてやろう。
「?」
ゾクッ!
何だ、この強烈な圧迫感は?
息ができない。
俺の後ろに、何がいるんだ…!?
カツッ。
カツッ。
「…あ」
ゲル!!?
「…シブ」
ゲルはシブの名前を読んだ後、うねった前髪から垣間見える目で、心まで凍りつきそうなとても冷たい目で俺を見た。
でも、俺を殺そうとする様な目じゃない。
俺は恐くて、その目から逸らす事も、睨み返す事もできなかった。
カツッ。
カツッ。
ゲルは俺を見つめた後、目を逸らして、シブの死体を持ち上げると、ゆっくりと城の方に向かって歩いていった。
ゲルが俺に言いたかった事はわかってるんだ。
死なせやがった。
そう言いたいんだろう?
ゲルは状況がわかっていたから、俺に刀を向けていない。
俺に守れる力なんてなかったんだ。
ごめんよ…。
俺。
何もできなかった…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
25
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる