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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その222

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く、首を斬られ…た。

どのくらい、斬られたんだ?

痛え…。

シブの追撃の刀が頭上からゆっくりと俺に目がけて振り下ろされていく。

ゆっくりと。

そう、ゆっくり。

死ぬ間際なんて、そんなもんだろう。

その間に、走馬灯でも見るんだ。

ほら、見えた…。







キーン、コーン、カーン、コーン。



あれ?

懐かしいな。

この制服、中学の時のだ。



矢倉やぐら、何黄昏てんだよ!明日はフリーマーケット、わかってるよね?」



「は?」



「ほら、残ったクッキーやるからさ。明日、暇なんだろ?」



少し吊り目の、地毛が茶髪でくせっ毛の女子…。名前、何だったかな?

あー!暮梨瑠璃くれなしるりだ。

ははは、懐かしい。

お菓子作りが得意だったよな?



「お菓子好き仲間だろ?明日はお母さんと一緒に、手作りクッキーを売るんだよ。買いに来てくれよ!」



そんな事言ってたよな。

俺は行きたくなかったけど。

だって、タダで学校にクッキー持ってきてみんなに食わせてくれる奴に、敢えてお金を払う必要あんのか?なんて思ったんだよ。

適当言って断っても良かったんだ。

だけど、暮梨が他の同じクラスの奴ら誘ってんのに、誰も行きたがらなそうだった。

こいつの茶髪は地毛なんだよ。別に素行がそんなに悪い訳でもない。

でも、口は悪かった。

少し、みんなとは距離があったよな。

転校してきたからというのもあるのかな?まぁ、仕方がないか。

だから、俺はこいつが差し出したクッキーを口に入れて、行くよって、言ったんだ。

その夜。

俺は父さんと言い争いをして、家から出ていけって。

そう。

お前は、俺の子じゃない。

そう言っていたよな。

俺も、父さんの操り人形じゃない。

何でも言いなりだと思うなよ。

思う様に動くと思ったか?

…だけど、何が原因で言い争いになったんだったかな?

不思議と覚えていない。

とにかく、俺は家を飛び出して、公園のブランコに乗ってたかな。

今思うと恥ずかしいな。

何でブランコなんだよ。他にあっただろうが。

次の日何をしようかなんて、そんなもの、全て消し飛んだ。

俺は、フリーマーケットに行かなかったんだ。

別に、たかがクッキーだろ?

きっと誰かが行ってやって、買ってあげてるだろう。

そう思ったんだ。

次の日、暮梨に謝ろうとしたら、あいつ暗い顔してた。

何を話しかけても、うん、ふぅん、わかった、とか。何かまともに話をしたがらなかったよな。

俺は仲直りのつもりで、またクッキー作ってきたら、俺にもくれよ、って。

言った。

そうしたら、結構な声で、誰が作ってきてやるかよ!?って。

誰にもやらねえ、って言ってたよな。

後でわかったけど、あいつのクッキー、クラスの誰も買いに行ってやらなかったんだ。

自分の親に、クラスのみんな誘ったとか言ってただろうな。

家でクッキー作って、学校に持っていってるのも、家族は知っていただろう。

なのに、フリーマーケットであいつのいる店に、クラスの誰も行かなかった。

俺、自分の事で…他の人の事を考えられなかったんだ。

でも、悪かったよ。

俺だけでも行ってやれば、良かったんだ。

次の日、暮梨は学校を休んだ。

そして、次の日も。

そして1週間を過ぎて、1ヶ月が過ぎて。その存在がクラスから消えようとしていた頃、暮梨は引っ越していった。

俺がお前と話をした最初のきっかけは、廊下で棒状のクッキーを食べてた時だよな。

転校前の学校じゃ、許されていたのかも知れないけど、この学校じゃ、廊下でもの食ってたら、結構な温度感で怒られるぞって、言ってやったら。

じゃあ、お前にもあげるよって。

クリッキーをくれたんだ。

おかげで、俺も後でクソ教師に怒られた。

男なのにお菓子好きか?って聞いてきたから、大体、みんなお菓子好きだろ?って言ったら、みんなが好きなのはスナック菓子だろう?って。

確かに。

俺がおかしいのか?

いやいや、そんな事はない。



「なあ?ひとの話、聞いてんのか?矢倉」



「え?ああ…」



「もちろん、来てくれるよな?私のお店に」



「まあ、行ってあげるか。クッキーの試食も、たくさんした事だしな」



「おー。絶対に、来いよ!」



「わかってるよ」



「…父さんとケンカしたとしても、暮梨のクッキー、買いに行くからよ」





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