315 / 441
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その222
しおりを挟む
く、首を斬られ…た。
どのくらい、斬られたんだ?
痛え…。
シブの追撃の刀が頭上からゆっくりと俺に目がけて振り下ろされていく。
ゆっくりと。
そう、ゆっくり。
死ぬ間際なんて、そんなもんだろう。
その間に、走馬灯でも見るんだ。
ほら、見えた…。
キーン、コーン、カーン、コーン。
あれ?
懐かしいな。
この制服、中学の時のだ。
「矢倉、何黄昏てんだよ!明日はフリーマーケット、わかってるよね?」
「は?」
「ほら、残ったクッキーやるからさ。明日、暇なんだろ?」
少し吊り目の、地毛が茶髪でくせっ毛の女子…。名前、何だったかな?
あー!暮梨瑠璃だ。
ははは、懐かしい。
お菓子作りが得意だったよな?
「お菓子好き仲間だろ?明日はお母さんと一緒に、手作りクッキーを売るんだよ。買いに来てくれよ!」
そんな事言ってたよな。
俺は行きたくなかったけど。
だって、タダで学校にクッキー持ってきてみんなに食わせてくれる奴に、敢えてお金を払う必要あんのか?なんて思ったんだよ。
適当言って断っても良かったんだ。
だけど、暮梨が他の同じクラスの奴ら誘ってんのに、誰も行きたがらなそうだった。
こいつの茶髪は地毛なんだよ。別に素行がそんなに悪い訳でもない。
でも、口は悪かった。
少し、みんなとは距離があったよな。
転校してきたからというのもあるのかな?まぁ、仕方がないか。
だから、俺はこいつが差し出したクッキーを口に入れて、行くよって、言ったんだ。
その夜。
俺は父さんと言い争いをして、家から出ていけって。
そう。
お前は、俺の子じゃない。
そう言っていたよな。
俺も、父さんの操り人形じゃない。
何でも言いなりだと思うなよ。
思う様に動くと思ったか?
…だけど、何が原因で言い争いになったんだったかな?
不思議と覚えていない。
とにかく、俺は家を飛び出して、公園のブランコに乗ってたかな。
今思うと恥ずかしいな。
何でブランコなんだよ。他にあっただろうが。
次の日何をしようかなんて、そんなもの、全て消し飛んだ。
俺は、フリーマーケットに行かなかったんだ。
別に、たかがクッキーだろ?
きっと誰かが行ってやって、買ってあげてるだろう。
そう思ったんだ。
次の日、暮梨に謝ろうとしたら、あいつ暗い顔してた。
何を話しかけても、うん、ふぅん、わかった、とか。何かまともに話をしたがらなかったよな。
俺は仲直りのつもりで、またクッキー作ってきたら、俺にもくれよ、って。
言った。
そうしたら、結構な声で、誰が作ってきてやるかよ!?って。
誰にもやらねえ、って言ってたよな。
後でわかったけど、あいつのクッキー、クラスの誰も買いに行ってやらなかったんだ。
自分の親に、クラスのみんな誘ったとか言ってただろうな。
家でクッキー作って、学校に持っていってるのも、家族は知っていただろう。
なのに、フリーマーケットであいつのいる店に、クラスの誰も行かなかった。
俺、自分の事で…他の人の事を考えられなかったんだ。
でも、悪かったよ。
俺だけでも行ってやれば、良かったんだ。
次の日、暮梨は学校を休んだ。
そして、次の日も。
そして1週間を過ぎて、1ヶ月が過ぎて。その存在がクラスから消えようとしていた頃、暮梨は引っ越していった。
俺がお前と話をした最初のきっかけは、廊下で棒状のクッキーを食べてた時だよな。
転校前の学校じゃ、許されていたのかも知れないけど、この学校じゃ、廊下でもの食ってたら、結構な温度感で怒られるぞって、言ってやったら。
じゃあ、お前にもあげるよって。
クリッキーをくれたんだ。
おかげで、俺も後でクソ教師に怒られた。
男なのにお菓子好きか?って聞いてきたから、大体、みんなお菓子好きだろ?って言ったら、みんなが好きなのはスナック菓子だろう?って。
確かに。
俺がおかしいのか?
いやいや、そんな事はない。
「なあ?ひとの話、聞いてんのか?矢倉」
「え?ああ…」
「もちろん、来てくれるよな?私のお店に」
「まあ、行ってあげるか。クッキーの試食も、たくさんした事だしな」
「おー。絶対に、来いよ!」
「わかってるよ」
「…父さんとケンカしたとしても、暮梨のクッキー、買いに行くからよ」
どのくらい、斬られたんだ?
痛え…。
シブの追撃の刀が頭上からゆっくりと俺に目がけて振り下ろされていく。
ゆっくりと。
そう、ゆっくり。
死ぬ間際なんて、そんなもんだろう。
その間に、走馬灯でも見るんだ。
ほら、見えた…。
キーン、コーン、カーン、コーン。
あれ?
懐かしいな。
この制服、中学の時のだ。
「矢倉、何黄昏てんだよ!明日はフリーマーケット、わかってるよね?」
「は?」
「ほら、残ったクッキーやるからさ。明日、暇なんだろ?」
少し吊り目の、地毛が茶髪でくせっ毛の女子…。名前、何だったかな?
あー!暮梨瑠璃だ。
ははは、懐かしい。
お菓子作りが得意だったよな?
「お菓子好き仲間だろ?明日はお母さんと一緒に、手作りクッキーを売るんだよ。買いに来てくれよ!」
そんな事言ってたよな。
俺は行きたくなかったけど。
だって、タダで学校にクッキー持ってきてみんなに食わせてくれる奴に、敢えてお金を払う必要あんのか?なんて思ったんだよ。
適当言って断っても良かったんだ。
だけど、暮梨が他の同じクラスの奴ら誘ってんのに、誰も行きたがらなそうだった。
こいつの茶髪は地毛なんだよ。別に素行がそんなに悪い訳でもない。
でも、口は悪かった。
少し、みんなとは距離があったよな。
転校してきたからというのもあるのかな?まぁ、仕方がないか。
だから、俺はこいつが差し出したクッキーを口に入れて、行くよって、言ったんだ。
その夜。
俺は父さんと言い争いをして、家から出ていけって。
そう。
お前は、俺の子じゃない。
そう言っていたよな。
俺も、父さんの操り人形じゃない。
何でも言いなりだと思うなよ。
思う様に動くと思ったか?
…だけど、何が原因で言い争いになったんだったかな?
不思議と覚えていない。
とにかく、俺は家を飛び出して、公園のブランコに乗ってたかな。
今思うと恥ずかしいな。
何でブランコなんだよ。他にあっただろうが。
次の日何をしようかなんて、そんなもの、全て消し飛んだ。
俺は、フリーマーケットに行かなかったんだ。
別に、たかがクッキーだろ?
きっと誰かが行ってやって、買ってあげてるだろう。
そう思ったんだ。
次の日、暮梨に謝ろうとしたら、あいつ暗い顔してた。
何を話しかけても、うん、ふぅん、わかった、とか。何かまともに話をしたがらなかったよな。
俺は仲直りのつもりで、またクッキー作ってきたら、俺にもくれよ、って。
言った。
そうしたら、結構な声で、誰が作ってきてやるかよ!?って。
誰にもやらねえ、って言ってたよな。
後でわかったけど、あいつのクッキー、クラスの誰も買いに行ってやらなかったんだ。
自分の親に、クラスのみんな誘ったとか言ってただろうな。
家でクッキー作って、学校に持っていってるのも、家族は知っていただろう。
なのに、フリーマーケットであいつのいる店に、クラスの誰も行かなかった。
俺、自分の事で…他の人の事を考えられなかったんだ。
でも、悪かったよ。
俺だけでも行ってやれば、良かったんだ。
次の日、暮梨は学校を休んだ。
そして、次の日も。
そして1週間を過ぎて、1ヶ月が過ぎて。その存在がクラスから消えようとしていた頃、暮梨は引っ越していった。
俺がお前と話をした最初のきっかけは、廊下で棒状のクッキーを食べてた時だよな。
転校前の学校じゃ、許されていたのかも知れないけど、この学校じゃ、廊下でもの食ってたら、結構な温度感で怒られるぞって、言ってやったら。
じゃあ、お前にもあげるよって。
クリッキーをくれたんだ。
おかげで、俺も後でクソ教師に怒られた。
男なのにお菓子好きか?って聞いてきたから、大体、みんなお菓子好きだろ?って言ったら、みんなが好きなのはスナック菓子だろう?って。
確かに。
俺がおかしいのか?
いやいや、そんな事はない。
「なあ?ひとの話、聞いてんのか?矢倉」
「え?ああ…」
「もちろん、来てくれるよな?私のお店に」
「まあ、行ってあげるか。クッキーの試食も、たくさんした事だしな」
「おー。絶対に、来いよ!」
「わかってるよ」
「…父さんとケンカしたとしても、暮梨のクッキー、買いに行くからよ」
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!
【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】
ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。
主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。
そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。
「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」
その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。
「もう2度と俺達の前に現れるな」
そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。
それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。
そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。
「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」
そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。
これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。
*他サイトにも掲載しています。
皇女様の女騎士に志願したところ彼女を想って死ぬはずだった公爵子息に溺愛されました
ねむりまき
恋愛
※本編完結しました!今後はゆっくりペースで他エピソードを更新予定です。
-原作で隠されてた君が運命の人だった-
家族に溺愛されすぎて社交界から隔離されて育った侯爵令嬢エミリア、読んでいた小説の始まる3年前の世界に入り込んだ”私”が宿ったのは彼女だった。馬車事故で死んでしまう設定の皇女、そんな彼女を想って闇落ちし自害してしまう小説の主人公・公爵子息アルフリード。彼らを救うためエミリアは侯爵家の騎士団の制服をまとい、もぐりこんだ舞踏会で皇女に対面。彼女の女騎士になりたいと直談判することに。しかし、そこでは思わぬトラブルが待ち受けており……なぜかアルフリードに見初められ結婚まで申し込まれてしまう。
原作でも語られていなかったアルフリードの生い立ち、近隣諸国との関係。シスコンの兄など様々な登場人物(動物)や出来事に翻弄されながらも、エミリアは無事に彼らを救うことができるのか?
※第2部までは伏線を散りばめた、ほのぼの系。第3部からシリアス展開も混ぜながら、物語が本格的に動き出す構成になってます。
※第2部、第3部の前にそれまでの登場人物とあらすじをまとめました。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる
灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~
幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。
「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」
「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」
最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる