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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その208

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急に、次の問題を出すって?

心の準備がまだだ。

それで、答えられなければずっと目が開かないだなんて。

やっぱり、こいつは俺を弄びたいだけなんだな。



「光と影…」



「銀貨の表と裏…」



「それを同時に見る事が、果たしてできるものかどうか…答えよ」



はあ?

光と影…って?

何だ、それ。

うーん。

普通に考えれば。

光が当たれば、影は消えるよな。



「実に私はどうかしていると思えるよ。こんな問題を出している事に、違和感を覚える。何故なら、この問題に正解を導き出せない者など存在しないからだ。特に、銀貨の事を出してしまうだなんて、私は余程、お前に正解をしてもらいたいのだな」



銀貨?

その表と裏を同時に見る事が、できるのかだって?

表を見れば、裏は見れない。

裏を見れば、表なんて見えないだろう。

真横から見たって、今度は表も裏も見えないんだから。

そのまま答えてもいいのか?

確かに、かんたんな問題だ。



「さあ、笑いながらでも構わない。答えてくれ…」



こいつは何か、うかつに答えるのを待ち望んでる様にも思えるんだよな。

意地が悪そうだ。

さっきも、俺は間違った答えを言いそうになった。

今度は、さすがに大丈夫か?

光と影…。

それを同時に見る。

これは、場合によってはあり得る話だ。

昼間に日が昇った状態でも、物影は存在する。

仮に太陽を直視したとしても、角度によっては家の日の当たらない場所、要するに影、それを同時に見ようと思えば、見る事はできる。

まあ、太陽なんか直視したら目がやられる。そんな事をしなくても、昼間は光が溢れている。

日の当たる光の部分と当たらない影の部分を同時に見る事は可能だ。

でも、それは光と影…解釈の違いで、正解にも不正解にもなりそうな気がするな。

それで、対になっている問題が、銀貨の表と裏を同時に見れるか、だろ?

こっちの方を答えの判断基準にするべきだな。



「長考とは実に予想外の展開だ。やはり、慎重に答えたくなるものか?リョウマ族に扮した者よ…」



扮した?俺がリョウマ族に似てるけど、違うって言いたいのか?

俺がいつ、自分がリョウマ族って言ったんだよ?てめえが勝手に勘違いしてるだけじゃねえか。

マネなんかしてるつもりもねえ。

バカにしやがって。

こんな奴と長々と同じ部屋にいたくもねえ。早く答えて正解して、消札をもらうか。



「答えは…」



待てよ?

また、俺は勝手に情報を足してないか?

よく考えろ。

こいつが言ったのは、銀貨の表と裏、それを同時に見る事ができるか?って言ったんだ。

誰が、1枚の銀貨を…って言った?

1枚の銀貨の表裏を同時に見るなんて、ムリだ。

だけど、銀貨を2枚用意して、それぞれの銀貨を表と裏、見える様に並べれば、同時に見えるじゃないか。

こいつ、やっぱり、答えを急かして間違えやすい様に仕向けてるな。



「答えは、見える、だ」



「…」



どうした?

早く言えよ。俺の答えは正解か?それとも、不正解?



「ふぅむ。楽しいひと時であった。その時間は儚く、惜しいものだな…」



「!?」



俺は間違えたのか?

どうして…。



「正解だ」



「小僧、お前との楽しいひと時はまだまだ続きそうだな」

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