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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その194裏

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同じ種族とも思えないくらい、誇りがない。東角猫トーニャ族なら、もう少し顔を綺麗にしてよ。誰かに虐げられる前に、こっちがやってやるんだよ。私達は、この第5大陸の中では、貴族階級なんだから。

私がこの街で最初に入り込んだ家に、私を小馬鹿にするオーロフ族がいた。笑いながら、いきなり殴りかかったオーロフ族の手を払い除けただけ、それなのに、何かに感情を持っていかれそうになった。

この街は危険だ。

何かの仕掛けがある。

気をつけないと。

いっそうの事、このまま街を出て、いつもと同じ暮らしをすればいい。

その方が、気楽だろうね。

わかってるんだよ。

不用心な奴を狙って、反撃できない様にして、魔力買取人の所まで運び、そいつの魔力を売ってお金に換える。

それが私の生き甲斐。

それが一番私の性に合ってるんだ。

その他の道を選んだら、私が私じゃなくなる。

ずっと、そんな気がしていた。

あいつと出会うまでは…。

もう、死んでいるのかも知れない。

だって、あれから何年経ったと思ってるんだよ。

もし生きていたとしても、私が誰かなんて覚えていないんじゃない?

だって、もう幼い頃の私じゃない。

今、この街で生きているかどうかもわからない相手の事を探そうとしてる事自体、無駄なんだ。

ほら、くだらない事をしていないで、この街を出ようよ。

オーロフ族を皆殺しにしてやりたかったけど、この街の仕掛けがわからないから、逆に私が死んでしまうかも知れない。

腹立たしいけど、もういい…。





あの時、私は涙を流していたな。

嘘じゃない、本当の涙。

あのリョウマ族が流していた様な、本当の涙だよ。

涙の存在なんて、忘れてた。

私だけじゃない。多分、この世界中の住人の全て。

そうだろう?

絶望なんか、日常的な事なんだよ。

呼吸をするのと同じ。今さらもう、何も感じない。

お前は、希望が心の奥に残されていたんだな。

私は、本当はどうなんだろう?

オーロフ族の半分近くの大人数が北の方へ行くって。そして、多くの東角猫族がそのオーロフ族達に連れていかれた。

その時に、古球磨ごくま族も北に帯同していったんだ。だから、南の村のオーロフ族による支配が薄れた。

私はあそこにはもう、住みたいとは思えない。私達は貴族なのに、下民階級に偉そうな態度をされて、バカみたい。

また、東角猫族を貴族階級に戻してみせる。私以外なんて、正直どうでもいいけど。でも、彼女が戻ってきた時のために。そのために、お金はできるだけ欲しい。

そうだ。

クラファミース、私はここにいるんだよ?

また…。

またいつか、一緒に。

暮らせたらいい、って。

今なら、正直にそう思える。

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