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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その191裏
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「ハムカンデ様!ザンヘンは何処にも行ってません!自分の部屋に座り込んで呆然と天井を眺めて…。恐らく、空に感情を抜かれて、意識が朦朧としている状態です」
「…」
「ザンヘンの体に致命傷ではないものの、刀傷が胸元に…」
「最近、この宝酷城に姿を見せないと思ってはいたが。これで、我々オーロフ族の強者3人が使い物にならなくなった。やりおるわ、奴ら。空の目を盗んで、オーロフ族より一手、先に動いてきた訳だな」
「…古球磨族でしょうか?」
「そう考えるのが自然の流れだな。ただ、やり口は少し知恵の回る者の仕業だ。戦いながらも、相手にのみ空に感情を抜かせ、まるで非があるならばお互い様だとでも思わせるかの様じゃないか。メベヘやゲルにはできまい」
「では、まさか彼が?」
「牙を見せない様に狡猾に立ち回っていたのだろうが、奴はそもそも、黒眼五人衆の頭目だ。反目に回るための目処が立ったという事か。それならば、ゲルがメベヘの腕を落とした事に感謝するべきだな。メベヘは我々の完全な駒とする事ができるはずだ」
「ザンヘンまでも失ったなら、もうオーロフ族にばかりこだわってもいられないでしょう。東角猫族や、リョウマ族も仲間に引き入れるべきかと」
「もうすでに、この弁帝街に他種族も仲間として引き入れているではないか。どうした、コボロクよ」
「…捨て駒に過ぎないのでしょう?」
「言葉が過ぎるな、コボロクよ。私に忠誠を誓うのなら、あの者達はとても貴重な存在だよ」
「強いて言うならば、捨て駒とはホルケンダの浮浪殲滅部隊の事を言うのだよ。奴らの事こそ、使い物にならない捨て駒同然よ」
「ホルケンダ様の浮浪殲滅部隊こそ、重宝すべきではなかったでしょうか?彼らは私達の同族、オーロフ族です」
「何を言うか…。凶行に及んだゼドケフラーの幼獣を、この街に侵入させたのだぞ。街の外で見張りをやらせても、この不甲斐ない働きぶりだ。無能にも程がある。何にも使い物にならないのが、あの者どもだ。もはや、自害すべき所を、私の温情で生かせておいてやっているのだ。大いに感謝すべきなのだよ」
「ホルケンダ様の不慮の死さえなければ…」
「コボロクよ、このハムカンデの存在が無に等しいと言うか。ホルケンダがいれば、このハムカンデは不要と?そうか、お前は私にさえ備わっていない先見の明があるという事だな。実に頼もしい存在だよ…」
「違いますっ!わ、私は、ハムカンデ様だけではなく、ホルケンダ様がいたら、きっとこの窮地も挽回できたはずと…!」
「今、私が言った事と何が違うのだ?同じ事を、お前の言葉の表現で私に伝えたに過ぎない…」
「お、お許しを!ホルケンダの方こそ、無に等しい存在でした!ハムカンデ様、貴方様がいれば、この街は安泰でございます!!」
「この街はもう長くは持たない。ただ、オーロフ族の名声を北の大陸まで轟かせ、勢力を拡大させる事も視野に入れて動いてはいたつもりだ。従える種族も、忠誠心のある者達に切り替える事も必要…」
「魔闘石は粗悪品が存在する。実のところ、それはお前の言う、捨て駒に使っている。力の暴走の後に究極の力を得るが、死期も早まるのだ」
「その粗悪品は…?」
「本来は死をくれてやるべき存在だが、いざという時のために、生かせておいてやっている者がいる。その者達が、その粗悪品を装着しているのだ。その中に、お前の名が刻まれていない事を祈ると良いぞ、コボロクよ」
「え?私は、貴方と同じオーロフ族なんですよ!私は…」
「フフ…。この宝酷城の4階にある私の部屋に招いているのだ。お前は今、気に入らない事を私に向かって言ってはきたものの、変わらず信用しておいてやる。今後は、私に伝える言葉に細心の注意を払うと良いぞ」
「大変失礼致しました、ハムカンデ様」
「ここから先は、敵味方の判断が曖昧になるかも知れん。お前も、背中から刺されぬ様、用心しておけ」
「は…い?それは、一体どういう事で?」
「少し前に怪しげな動きをする者達が侵入した。1人は、《冬枯れの牙》だ。しかし、それは黒眼五人衆が始末した。もう1人は、侵入したところで、大した事はできまい。捕まえ次第、うまく利用するが得策と言えよう。今後は、敵さえ場合によっては、一時的に味方に寄せておく必要もあり、また他方では味方と見なしていた者どもを切り払う、非情な選択も必要という事だ」
「わ、私は、ハムカンデ様にお仕えします!」
「フフ、いいぞ。コボロクよ」
「はい!」
「お前の忠誠を試す意味でも、お前に興味深い真実を伝えておいてやる…」
「は、はい!!」
「ホルケンダは、私が殺した」
「…」
「ザンヘンの体に致命傷ではないものの、刀傷が胸元に…」
「最近、この宝酷城に姿を見せないと思ってはいたが。これで、我々オーロフ族の強者3人が使い物にならなくなった。やりおるわ、奴ら。空の目を盗んで、オーロフ族より一手、先に動いてきた訳だな」
「…古球磨族でしょうか?」
「そう考えるのが自然の流れだな。ただ、やり口は少し知恵の回る者の仕業だ。戦いながらも、相手にのみ空に感情を抜かせ、まるで非があるならばお互い様だとでも思わせるかの様じゃないか。メベヘやゲルにはできまい」
「では、まさか彼が?」
「牙を見せない様に狡猾に立ち回っていたのだろうが、奴はそもそも、黒眼五人衆の頭目だ。反目に回るための目処が立ったという事か。それならば、ゲルがメベヘの腕を落とした事に感謝するべきだな。メベヘは我々の完全な駒とする事ができるはずだ」
「ザンヘンまでも失ったなら、もうオーロフ族にばかりこだわってもいられないでしょう。東角猫族や、リョウマ族も仲間に引き入れるべきかと」
「もうすでに、この弁帝街に他種族も仲間として引き入れているではないか。どうした、コボロクよ」
「…捨て駒に過ぎないのでしょう?」
「言葉が過ぎるな、コボロクよ。私に忠誠を誓うのなら、あの者達はとても貴重な存在だよ」
「強いて言うならば、捨て駒とはホルケンダの浮浪殲滅部隊の事を言うのだよ。奴らの事こそ、使い物にならない捨て駒同然よ」
「ホルケンダ様の浮浪殲滅部隊こそ、重宝すべきではなかったでしょうか?彼らは私達の同族、オーロフ族です」
「何を言うか…。凶行に及んだゼドケフラーの幼獣を、この街に侵入させたのだぞ。街の外で見張りをやらせても、この不甲斐ない働きぶりだ。無能にも程がある。何にも使い物にならないのが、あの者どもだ。もはや、自害すべき所を、私の温情で生かせておいてやっているのだ。大いに感謝すべきなのだよ」
「ホルケンダ様の不慮の死さえなければ…」
「コボロクよ、このハムカンデの存在が無に等しいと言うか。ホルケンダがいれば、このハムカンデは不要と?そうか、お前は私にさえ備わっていない先見の明があるという事だな。実に頼もしい存在だよ…」
「違いますっ!わ、私は、ハムカンデ様だけではなく、ホルケンダ様がいたら、きっとこの窮地も挽回できたはずと…!」
「今、私が言った事と何が違うのだ?同じ事を、お前の言葉の表現で私に伝えたに過ぎない…」
「お、お許しを!ホルケンダの方こそ、無に等しい存在でした!ハムカンデ様、貴方様がいれば、この街は安泰でございます!!」
「この街はもう長くは持たない。ただ、オーロフ族の名声を北の大陸まで轟かせ、勢力を拡大させる事も視野に入れて動いてはいたつもりだ。従える種族も、忠誠心のある者達に切り替える事も必要…」
「魔闘石は粗悪品が存在する。実のところ、それはお前の言う、捨て駒に使っている。力の暴走の後に究極の力を得るが、死期も早まるのだ」
「その粗悪品は…?」
「本来は死をくれてやるべき存在だが、いざという時のために、生かせておいてやっている者がいる。その者達が、その粗悪品を装着しているのだ。その中に、お前の名が刻まれていない事を祈ると良いぞ、コボロクよ」
「え?私は、貴方と同じオーロフ族なんですよ!私は…」
「フフ…。この宝酷城の4階にある私の部屋に招いているのだ。お前は今、気に入らない事を私に向かって言ってはきたものの、変わらず信用しておいてやる。今後は、私に伝える言葉に細心の注意を払うと良いぞ」
「大変失礼致しました、ハムカンデ様」
「ここから先は、敵味方の判断が曖昧になるかも知れん。お前も、背中から刺されぬ様、用心しておけ」
「は…い?それは、一体どういう事で?」
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「はい!」
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「は、はい!!」
「ホルケンダは、私が殺した」
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