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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その189裏

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この街に役者が揃ってしまった様だ。

これもまた運命なのかも知れない。

私がこの地を脅かされ、身を封じられた事も必然の事なのかも知れないな。

裸眼らがんよ、私の声が一つでも届くのなら、よく聞くのだ。

再びこの大地が滅び、人類の絆が途絶えたとしても、何一つ憂う事などない。

無に帰す事で悟る事もあろう。

そして、そうならない時も、滅びは形を変え、如何なる結末とも、進化を果たす。

何も期待などするな。

ただ、目を閉じて、全てに身を任せるのだ。

その中で私自身に滅びの矢が差し向けられたとしても、それもまた必然。

私は体を失った。

そして、お前は心を失った。

もう、再び一つとなる事もないだろう。

やがて、この地で眠る闇竜の意識が目を開く。完全に目覚めれば、この大陸は崩壊し、その滅びは他の大陸にも連鎖する事だろう。

再び、星の崩壊が起こる。

それは、闇竜とて不本意なのかも知れないが。

この大陸が崩壊せず、浮遊したまま現状を維持させているのは、闇竜の力があってのもの。

闇竜の空間停止能力を操作し、意識を眠らせたあの男の力は計り知れない。

多くの星の住人は騙せても、神仏までも欺く事などできはしないのだ。だが、他の案を選択する事の難しさも理解はしている。そして、今はその姿を消している。

嫉妬深く粘着質なハムカンデがこの地で闘争を始め、比較的浅い場所に埋まっていた闇竜がハムカンデの悪意に反応し、今、まるで本来の在るべき姿を思い出そうとするかの様に、再び意識を得ようと踠いている。

闇竜が目覚めるのも、時間の問題。

ただ、その前に、ハムカンデがこの場所に留まるオーロフ族達の魔力に満足し、他の種族を殺した後、この地を離れる事が先か。

それとも、見限られる事を悟った古球磨ごくま族達がハムカンデ達オーロフ族を殺す方が先か。

或いは、あの者が…。

どういう結末を見せても、私は決めたのだ。

全てはあの方のご意思に。

それこそ、この世界が混沌とした中で私達が選択した最終不可逆的計画…。

まだあの計画は、完全に途絶えてはいないのだから。



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