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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その189
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あ…。
焦げ目がついた木造の天井が見える。
そうか。
俺、いつの間にか寝てたのか。
よく寝た気がする。多分、次の日が来たな。
くそっ、鎧のままで寝ちまった。せっかくの宿の意味が全くねえ。鎧姿のままだと寝返りもまともにできないから、起きた時に体が岩みたいに固くて痛くなるんだよ。まぁ、ベッドが心地良かったから、そんなには体が…。
いや、痛ぇ…。
これはあのグラッチェリとの力試しのせいだな。筋肉痛になってる。でも、思ったよりはそこまで痛くはないかも知れない。この体がこの世界で生まれたものだから、戦いというものに馴染んでるからかも知れないけどな。
ふう…。
今日中に宝酷城からパルンガを助けて、消札を取って、この街から脱出しないとな。
明日になったら終わりだ。ハムカンデが用意する相手、黒眼五人衆ナグと力試しという名の殺し合いをしないといけなくなる、というか俺が一方的に血祭りにあげられる可能性の方が高いか。助かったとしても、俺の胸に魔闘石の取り付けは逃れられない。いずれにしても最悪だ。
この街の脱出方法は、あの猫女が…ティデが、用意するという言葉を信用するしかなくなった。そう言えば、ティデって名前じゃないって言ってたか?まぁ、どうでもいいか。
あいつ、名前言わないし。
それは俺も同じだな。
腹減ったな。ちょうどいいから、早速、あの猫女の家に行ってみるか。あいつが用意したパルンガ救出作戦の話を聞こうじゃないか。
パルンガは昨日の夜、寝る前に伝言魔法で呼びかけても返信がなかったな。寝てたのかも知れないけど、大丈夫かな。
今なら、起きてるかも知れない。
やってみるか。
「アルテリンコ・ブイ!」
パルンガ、起きてるか?
「…」
返答なし。まぁいい。変にメッセージのやり取りしてハムカンデ達に気づかれたら、警戒される。
まずはあの猫女の家に行くか。
ボルティアの宿を出ると、空の明かりが眩しく感じる。俺の目が疲れてるっていうのも、あるだろうな。
しかし、いつ見ても空が赤くて心地良くないのは相変わらずだな。地面に明かりが届くその色自体は、特に違和感があるほど真っ赤という感じはしないから、そこは別に気にならないんだけど。
そう言えば、この星には太陽がないんだったかな?ただ明るいだけ。だから、時間がわかりづらいんだな。
道に何人かのオーロフ族が歩いてる。箱を大切そうに持って歩いてるのは、前にも見た光景だな。城に向かっていそうだから、多分、貢ぎ物ってヤツだ。
あ、睨みつけてきた。
何だよ、身分が高い者に向かってまっすぐに視線を向けるなんて、無礼過ぎるとか、そんな感じか?
そんなものは、俺には関係ない。
というか、今の自分の立ち位置がわからない。
自分の世界じゃ、高貴なお生まれではないし、この世界での生まれなんて、仕組まれた感じだしな。俺は転生してこの世界に来たんだから、純粋にこの世界で生まれた人から見れば、もしかして生まれてごめんなさいレベルの話か?そう考えると、階級は一番下にも思えるな。
まぁ、いいや。あまり道に立ち止まって考えても、この街の奴らの目に止まるだけだ。猫女の家に行こう。
…。
俺、昨日、いくつか夢を見たよな。
特に最後のアルティフって男が出てきたのは、あれは夢なのかな?
俺がラグリェにやられて瀕死のところを助けてもらったのは、多分事実。俺は、あの癒しの泉だか何だかに浸かっていたところで意識が戻った。
傷が治っていく不思議な場所だった。
あの時に目の前にいた、目も肌も白い奴がいたよな。とても冷たい目をしていた。夢の中の男は、そいつで間違いない。
俺はあの時、生きた心地がしなかった。自暴自棄になっていたんだ。だから、助けてほしいなんて言ってない、みたいな事を言ったと思う。
あの時、白い奴は何て言ってたかな。
確か、その白い奴の連れが癒しの神とかに俺の傷を癒す様にお願いしたとか。その時に、魔物を寄せるナイフを自分に刺す事を交換条件にされたとか、そんな事を言ってなかったか?
何で、そんな事を神が言うんだ?
不思議な話を言っていた。
俺の聞き間違いか?
でも、白い奴が結構怒っていたのを覚えている。あの時は、俺が、感謝するどころか、助けられたのをまるで迷惑だ、みたいな言い方をしていたと思う。
白い奴が怒っていたのは、自分に対してじゃなくて、連れに対して恩知らずな事を言ったから。
命を賭けてまで、知らない俺なんかを助けたのにって事なんだろう。
でも、よく伝わったのは、その白い奴は連れの事、とても大切に思ってるって事。
あんな冷たそうな奴が大切に思う奴って、どんな奴なんだ?
この世界では、他人なんてどうでもいいはずなのにな。
だから、少し興味があるな。
そうだな。
もし、夢じゃなかったら…。
俺がこの街から脱出できたら、移動魔法で戻してやるって言ってたよな?
よくわからないけど、もしそうなったら、その連れってのに会う機会ができる訳だよな。
焦げ目がついた木造の天井が見える。
そうか。
俺、いつの間にか寝てたのか。
よく寝た気がする。多分、次の日が来たな。
くそっ、鎧のままで寝ちまった。せっかくの宿の意味が全くねえ。鎧姿のままだと寝返りもまともにできないから、起きた時に体が岩みたいに固くて痛くなるんだよ。まぁ、ベッドが心地良かったから、そんなには体が…。
いや、痛ぇ…。
これはあのグラッチェリとの力試しのせいだな。筋肉痛になってる。でも、思ったよりはそこまで痛くはないかも知れない。この体がこの世界で生まれたものだから、戦いというものに馴染んでるからかも知れないけどな。
ふう…。
今日中に宝酷城からパルンガを助けて、消札を取って、この街から脱出しないとな。
明日になったら終わりだ。ハムカンデが用意する相手、黒眼五人衆ナグと力試しという名の殺し合いをしないといけなくなる、というか俺が一方的に血祭りにあげられる可能性の方が高いか。助かったとしても、俺の胸に魔闘石の取り付けは逃れられない。いずれにしても最悪だ。
この街の脱出方法は、あの猫女が…ティデが、用意するという言葉を信用するしかなくなった。そう言えば、ティデって名前じゃないって言ってたか?まぁ、どうでもいいか。
あいつ、名前言わないし。
それは俺も同じだな。
腹減ったな。ちょうどいいから、早速、あの猫女の家に行ってみるか。あいつが用意したパルンガ救出作戦の話を聞こうじゃないか。
パルンガは昨日の夜、寝る前に伝言魔法で呼びかけても返信がなかったな。寝てたのかも知れないけど、大丈夫かな。
今なら、起きてるかも知れない。
やってみるか。
「アルテリンコ・ブイ!」
パルンガ、起きてるか?
「…」
返答なし。まぁいい。変にメッセージのやり取りしてハムカンデ達に気づかれたら、警戒される。
まずはあの猫女の家に行くか。
ボルティアの宿を出ると、空の明かりが眩しく感じる。俺の目が疲れてるっていうのも、あるだろうな。
しかし、いつ見ても空が赤くて心地良くないのは相変わらずだな。地面に明かりが届くその色自体は、特に違和感があるほど真っ赤という感じはしないから、そこは別に気にならないんだけど。
そう言えば、この星には太陽がないんだったかな?ただ明るいだけ。だから、時間がわかりづらいんだな。
道に何人かのオーロフ族が歩いてる。箱を大切そうに持って歩いてるのは、前にも見た光景だな。城に向かっていそうだから、多分、貢ぎ物ってヤツだ。
あ、睨みつけてきた。
何だよ、身分が高い者に向かってまっすぐに視線を向けるなんて、無礼過ぎるとか、そんな感じか?
そんなものは、俺には関係ない。
というか、今の自分の立ち位置がわからない。
自分の世界じゃ、高貴なお生まれではないし、この世界での生まれなんて、仕組まれた感じだしな。俺は転生してこの世界に来たんだから、純粋にこの世界で生まれた人から見れば、もしかして生まれてごめんなさいレベルの話か?そう考えると、階級は一番下にも思えるな。
まぁ、いいや。あまり道に立ち止まって考えても、この街の奴らの目に止まるだけだ。猫女の家に行こう。
…。
俺、昨日、いくつか夢を見たよな。
特に最後のアルティフって男が出てきたのは、あれは夢なのかな?
俺がラグリェにやられて瀕死のところを助けてもらったのは、多分事実。俺は、あの癒しの泉だか何だかに浸かっていたところで意識が戻った。
傷が治っていく不思議な場所だった。
あの時に目の前にいた、目も肌も白い奴がいたよな。とても冷たい目をしていた。夢の中の男は、そいつで間違いない。
俺はあの時、生きた心地がしなかった。自暴自棄になっていたんだ。だから、助けてほしいなんて言ってない、みたいな事を言ったと思う。
あの時、白い奴は何て言ってたかな。
確か、その白い奴の連れが癒しの神とかに俺の傷を癒す様にお願いしたとか。その時に、魔物を寄せるナイフを自分に刺す事を交換条件にされたとか、そんな事を言ってなかったか?
何で、そんな事を神が言うんだ?
不思議な話を言っていた。
俺の聞き間違いか?
でも、白い奴が結構怒っていたのを覚えている。あの時は、俺が、感謝するどころか、助けられたのをまるで迷惑だ、みたいな言い方をしていたと思う。
白い奴が怒っていたのは、自分に対してじゃなくて、連れに対して恩知らずな事を言ったから。
命を賭けてまで、知らない俺なんかを助けたのにって事なんだろう。
でも、よく伝わったのは、その白い奴は連れの事、とても大切に思ってるって事。
あんな冷たそうな奴が大切に思う奴って、どんな奴なんだ?
この世界では、他人なんてどうでもいいはずなのにな。
だから、少し興味があるな。
そうだな。
もし、夢じゃなかったら…。
俺がこの街から脱出できたら、移動魔法で戻してやるって言ってたよな?
よくわからないけど、もしそうなったら、その連れってのに会う機会ができる訳だよな。
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