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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その167裏

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「どう言うつもりだい!?妙に早く帰ってきてさ!魔吸器ジグマに魔力が溜まってないじゃないか!お前、ちゃんと住人や獣を探したのかい!?」



「行ける場所がそんなに広くないから、旅なんてする住人はいないし、獣も魔力を大して持っていなくて…」



「言い訳を言うんじゃないよ!東角猫トーニャ族は見た目ばかりで、頭が働かないんだから!」



ガッ!



「痛いっ!」



「この立派な耳を切り落としてみようか?そうしたら、ちゃんと魔力を探して奪ってくるよねえ?」



「ま、待って下さいぃ…!」



「私が怒れば空が守ってくれるとでも思ってるのかい?家の中にいれば、そんな力も大して働かないのは、お前も知ってるだろう?この弁帝街べんていがいに来て、私もストレスが溜まってんだよ!」



「わかっています…」



「シストナの街の時は、お前達、東角猫族が同族の家に侵入して金品を盗む様を見て、気が晴れたものさ。昔の私達オーロフ族と同じ事をしてさ。言う事を聞かなきゃ、表に出して、鞭で動かなくなるまで打ち続けて、あの時は本当に気分が良かったねえ!」



「だけど、古球磨ごくま族が《冬枯れの牙》に目をつけられていたせいで、こんな何もない第5大陸の北西の地に来る事になるなんて…。新しく街を作ろうなんて言い出したホルケンダとハムカンデについてくる羽目になるなんて、本当についてないよ!」



「この土地を奪うための戦いに、お前達東角猫族と古球磨族、あとはエズアだけで良かったのに、私まで戦わせて…。胸にこんな物々しい魔闘石ロワなんて埋め込まれてさ。これじゃあ、私までもお前達と同じハムカンデの奴隷と変わらないじゃないか!」



「私には、それすらないの…」



「当たり前でしょう!あんた達みたいに外見ばかりで中身のない種族に力が備わったら、何するかわからないでしょうが!」



「片耳だけでも私の声は聞こえるんだから、もう一つはいらないわよね?」



「止めてっ!お願い…!」



「街を徘徊してる古球磨族のゲルに差し出してやろうか!?あいつはオーロフ族にまで刀を向ける気狂いだよ。お前みたいな役立たずが殺されればいいのにさ!この街に来たリョウマ族のおかげで、頻繁にこの街を歩く様になっちまったじゃないか」



ボカッ!



「痛いっ!」



「みんな家から出たがらないから、オーロフ族がどのくらい残ってるかわからない。黒眼五人衆の奴らだけでも死んでくれないものかねえ…。今の私の魔力なら、古球磨族を倒せる気がしてくるよ」



「私も故郷に戻りたい…。一緒に戻りましょう?」



ドガァッ!



「うぎゃあぁぁっ!!」



「お前達が生き残れるとでも思ってんのかい?オーロフ族がお前達や古球磨族を魔力で凌駕すれば、お前達は用済みになるんだよ。その時は、覚悟する事だねえ…。皆殺しにされるんだからさ。それが私の唯一の楽しみってやつなのさ」
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