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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その164
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ティデと思った東角猫族は、最後まで名前を言いたがらなかったな。
本当は、ティデって名前じゃないのか?
そして、俺の名前を聞かれた。
俺は、テテだと答えたら、バカにするんじゃないよと返してきた。
ゼドケフラーの幼獣が、相手の事を呼ぶ時、テテと呼ぶのを知っている様だった。
たまたま同じなだけだと、思ってはくれないよな?
俺の名前は、この世界いる間は、テテでもいい。
矢倉郁人という名前は、この世界に先に来ていたもう1人の俺が実力と共に広めている。
じゃあ、俺は?
矢倉郁人を名乗れば、俺には荷が重い。
名無しでも、テテでも、どちらでもいい。
この街は黒い家が並ぶ。その家の中にオーロフ族がほとんど一日中、閉じこもってるのかな。
朝に奴隷の東角猫族が魔力集めに街を出て、街にはオーロフ族や価値を認められた種族がいる。
でも、あまり外には出ていない。
たまに道で見かけるオーロフ族は、箱を持って宝酷城に向かっている。
中には何が入っているのかな。
税金を納めに行ってる?
俺を白い目で見るのは、どのオーロフ族も同じだな。
剣を持って歩いているから?価値を認められていない街に来たばかりの奴が、外を堂々と歩いているから?その両方か。
俺はハムカンデに魔法をかけられて、この街周辺以上は出られないという事だけど、何処まで行けるのか、試してみたいと思った。
だから、この街に降りた長い階段を上ってみようと思ったんだ。
その階段に近づくにつれ、オーロフ族に声をかけられた。
おい!とか、リョウマ族!とか、そんな感じで。
ハムカンデに力を見せるっていうのが知れ渡ってる?それとも、この街に入った時点で、ここから生きて出られないのが確定しているから、それを強引に出ていこうとしている様に見えて、それを咎めている?
それらを無視して、俺はひたすら歩いて、長い階段の前に来た時に、包帯を巻いた女が後ろから、止まりなよと声をかけてきた。
「明後日にハムカンデ様の前で力試しと、言ってたんよなぁ…?それなら、その階段を上る必要はあるのかなぁ」
黒眼五人衆のシブ。でも、ゲルは側にいない。
「今、私以外の誰かを確認したねぇ?もしかして、私だけなら、どうにかなると思ったんかなぁ…。その考えが過ちだと、教えてあげようか?」
バカにした口調がムカつくな。俺をどうやって引き止める?その腰にある刀を抜くか?空に感情を抜かれるんだろ?止めとけって。
「このすぐ近くにある場所に連れて行く事で、お前との戦いは可能。赤い空に期待しても、無駄なんよさぁ…」
あの猫女の、家に黒い塗料を塗る前に書いた魔法の事を言っているのか?その家の中なら、ある程度は戦える?
「この長い階段を使って、明後日の力試しに向けて鍛錬してもいいよな?他にいい稽古場所なんてないし」
「…いいからさぁ、その階段に掛けた足を下ろしなよねぇ?その足が惜しくないのなら、何も言わないけどねぇ」
「俺は、ハムカンデに魔法をかけられているから、どうせこの街の周辺からは出られないんだよ。その中でなら、自由だろ?」
「キャハハッ!お前に自由なんてないんだよぉ。私達黒眼五人衆は、この街中での住人の見回り役なのさ、下手な事はさせられないんよなぁ」
俺より少し若そうな包帯ぐるぐるちゃんが、何を偉そうに。
赤い空がある限り、俺は言う事を聞くつもりはない。
さぁ、行くぞ。
カツッ!
「階段をさらに上ったねぇ?いい度胸だよ、お前さ…」
ポリポリッ。
こんな時に、何食ってんだ?
ん?こいつ、棒のクッキー食ってんのか?まさかそれは。確か、クリッキーとかいうお菓子。
何か、腹減ったな。
もしかして、本当に俺の知ってるお菓子だったりしないかな。
「それ、クリッキーか…?」
「はぁ?クリッキー??」
「固焼きバニラ風味の棒状クッキーだろ?」
何だ、違うのか。まぎらわしいもの食いやがって。
「これは樹皮を巻いて乾燥させて食う、キスカって物なんよ。別にうまくはないんよなぁ」
「ああ、そう…」
樹皮を巻いて食うだって?ずいぶんとまずそうなもん食ってんな。じゃあ、用はないな。
「クリッキーっていう物、お前は持ってるんかぁ?」
持ってたら、お前なんかに聞く訳ないだろうが。聞いた俺がバカだった。
「クッキーって何…?」
クッキーって、何て言えばいいんだよ。クッキーはクッキーだろうが。それ以上でも、以下でもない。
「小麦粉とか砂糖とか、卵とか…。混ぜて焼くお菓子だよ。サクサクして甘いんだ」
殺人鬼と何話してんだ、俺。
「サクサクして甘いのかぁ。そのお菓子、作ってくれよぉ…」
中学の家庭科の授業をいい加減にやりまくってた俺に、お菓子が作れるはずがないだろう。俺が作れるのは、カップ麺に注ぐお湯だけだ。
「ムリだよ。お前、女だろう?自分で作ればいいじゃん」
「女…?」
「お前、女だろう?」
「…」
何だ、違うのか?いや、声とかちょっとした腰の動きとか、女だよな?まさか、間違えた?
「!?」
包帯越しに血が滲み始めた!あのナグと同じだ。どうして、急に血が滲み始めるんだ。
「あ!…ああっ!」
額から左目にかけて、血が滲んで、胸からも滲み始めている。うぐっ!まともに見てられねえ。
ガシュッ!
「あ!」
シブが慌てて包帯を触ったから、包帯が解けて…。
うっ!?額から鼻と左目の間まで、深い傷口が!そこから血が滴り落ちてきている。
うぅ、気持ち悪い。
「見るな!見るなぁあっ!!」
シブは、震えて一生懸命に顔を隠そうとしていた。
血が滲み出た時に、俺にその姿を見られたくなくて、慌てた?
いや、そんな事はないよな…。
包帯を触ったから、解けた。
こいつは平気に人を殺す様な奴だ。だけど、こいつも人の子だし、女だ。顔に傷なんて、気にしない奴はいないよな。
少しずつ傷が治っている様にも思える。あのナグと同じ様に、まるで時間が戻るかの様に、滲み出た血も引いて、赤黒い包帯が、白い包帯に戻っていく。
このシブといい、ナグといい、どうなっているんだ?
本当は、ティデって名前じゃないのか?
そして、俺の名前を聞かれた。
俺は、テテだと答えたら、バカにするんじゃないよと返してきた。
ゼドケフラーの幼獣が、相手の事を呼ぶ時、テテと呼ぶのを知っている様だった。
たまたま同じなだけだと、思ってはくれないよな?
俺の名前は、この世界いる間は、テテでもいい。
矢倉郁人という名前は、この世界に先に来ていたもう1人の俺が実力と共に広めている。
じゃあ、俺は?
矢倉郁人を名乗れば、俺には荷が重い。
名無しでも、テテでも、どちらでもいい。
この街は黒い家が並ぶ。その家の中にオーロフ族がほとんど一日中、閉じこもってるのかな。
朝に奴隷の東角猫族が魔力集めに街を出て、街にはオーロフ族や価値を認められた種族がいる。
でも、あまり外には出ていない。
たまに道で見かけるオーロフ族は、箱を持って宝酷城に向かっている。
中には何が入っているのかな。
税金を納めに行ってる?
俺を白い目で見るのは、どのオーロフ族も同じだな。
剣を持って歩いているから?価値を認められていない街に来たばかりの奴が、外を堂々と歩いているから?その両方か。
俺はハムカンデに魔法をかけられて、この街周辺以上は出られないという事だけど、何処まで行けるのか、試してみたいと思った。
だから、この街に降りた長い階段を上ってみようと思ったんだ。
その階段に近づくにつれ、オーロフ族に声をかけられた。
おい!とか、リョウマ族!とか、そんな感じで。
ハムカンデに力を見せるっていうのが知れ渡ってる?それとも、この街に入った時点で、ここから生きて出られないのが確定しているから、それを強引に出ていこうとしている様に見えて、それを咎めている?
それらを無視して、俺はひたすら歩いて、長い階段の前に来た時に、包帯を巻いた女が後ろから、止まりなよと声をかけてきた。
「明後日にハムカンデ様の前で力試しと、言ってたんよなぁ…?それなら、その階段を上る必要はあるのかなぁ」
黒眼五人衆のシブ。でも、ゲルは側にいない。
「今、私以外の誰かを確認したねぇ?もしかして、私だけなら、どうにかなると思ったんかなぁ…。その考えが過ちだと、教えてあげようか?」
バカにした口調がムカつくな。俺をどうやって引き止める?その腰にある刀を抜くか?空に感情を抜かれるんだろ?止めとけって。
「このすぐ近くにある場所に連れて行く事で、お前との戦いは可能。赤い空に期待しても、無駄なんよさぁ…」
あの猫女の、家に黒い塗料を塗る前に書いた魔法の事を言っているのか?その家の中なら、ある程度は戦える?
「この長い階段を使って、明後日の力試しに向けて鍛錬してもいいよな?他にいい稽古場所なんてないし」
「…いいからさぁ、その階段に掛けた足を下ろしなよねぇ?その足が惜しくないのなら、何も言わないけどねぇ」
「俺は、ハムカンデに魔法をかけられているから、どうせこの街の周辺からは出られないんだよ。その中でなら、自由だろ?」
「キャハハッ!お前に自由なんてないんだよぉ。私達黒眼五人衆は、この街中での住人の見回り役なのさ、下手な事はさせられないんよなぁ」
俺より少し若そうな包帯ぐるぐるちゃんが、何を偉そうに。
赤い空がある限り、俺は言う事を聞くつもりはない。
さぁ、行くぞ。
カツッ!
「階段をさらに上ったねぇ?いい度胸だよ、お前さ…」
ポリポリッ。
こんな時に、何食ってんだ?
ん?こいつ、棒のクッキー食ってんのか?まさかそれは。確か、クリッキーとかいうお菓子。
何か、腹減ったな。
もしかして、本当に俺の知ってるお菓子だったりしないかな。
「それ、クリッキーか…?」
「はぁ?クリッキー??」
「固焼きバニラ風味の棒状クッキーだろ?」
何だ、違うのか。まぎらわしいもの食いやがって。
「これは樹皮を巻いて乾燥させて食う、キスカって物なんよ。別にうまくはないんよなぁ」
「ああ、そう…」
樹皮を巻いて食うだって?ずいぶんとまずそうなもん食ってんな。じゃあ、用はないな。
「クリッキーっていう物、お前は持ってるんかぁ?」
持ってたら、お前なんかに聞く訳ないだろうが。聞いた俺がバカだった。
「クッキーって何…?」
クッキーって、何て言えばいいんだよ。クッキーはクッキーだろうが。それ以上でも、以下でもない。
「小麦粉とか砂糖とか、卵とか…。混ぜて焼くお菓子だよ。サクサクして甘いんだ」
殺人鬼と何話してんだ、俺。
「サクサクして甘いのかぁ。そのお菓子、作ってくれよぉ…」
中学の家庭科の授業をいい加減にやりまくってた俺に、お菓子が作れるはずがないだろう。俺が作れるのは、カップ麺に注ぐお湯だけだ。
「ムリだよ。お前、女だろう?自分で作ればいいじゃん」
「女…?」
「お前、女だろう?」
「…」
何だ、違うのか?いや、声とかちょっとした腰の動きとか、女だよな?まさか、間違えた?
「!?」
包帯越しに血が滲み始めた!あのナグと同じだ。どうして、急に血が滲み始めるんだ。
「あ!…ああっ!」
額から左目にかけて、血が滲んで、胸からも滲み始めている。うぐっ!まともに見てられねえ。
ガシュッ!
「あ!」
シブが慌てて包帯を触ったから、包帯が解けて…。
うっ!?額から鼻と左目の間まで、深い傷口が!そこから血が滴り落ちてきている。
うぅ、気持ち悪い。
「見るな!見るなぁあっ!!」
シブは、震えて一生懸命に顔を隠そうとしていた。
血が滲み出た時に、俺にその姿を見られたくなくて、慌てた?
いや、そんな事はないよな…。
包帯を触ったから、解けた。
こいつは平気に人を殺す様な奴だ。だけど、こいつも人の子だし、女だ。顔に傷なんて、気にしない奴はいないよな。
少しずつ傷が治っている様にも思える。あのナグと同じ様に、まるで時間が戻るかの様に、滲み出た血も引いて、赤黒い包帯が、白い包帯に戻っていく。
このシブといい、ナグといい、どうなっているんだ?
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