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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その161

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ボルティアの宿に、かんたんに辿り着いたぞ。

この街に来て2日目なのに、意外と覚えてくるもんだな。似た様な家が続く割には。

黒眼こくがん五人衆のシブやメベヘが言ってた感じだと、剣を剥き出しで持って歩くのは、周りを挑発してる様なもんなのかな。

大剣でも、鞘に収納して持ち歩く方がいいのか?確かゲームのキャラだと、大剣は剥き出しで持っていた様な気もしたけど、実際はどうなんだ?この長さで、鞘から抜き差しできるのか?

でも、この剣を置いたままで手ぶらで歩く訳にもいかない。黒眼五人衆に出くわしたら、やられるだろ。特に、感情なく剣を振れるナグにでも出くわしたら終わりだ。

とりあえず、ボルティアに着いたんだし、一度宿の中に入るかな?



「…」



まただよ。この街に来てから、たまに視線を感じるんだよな。

その黒い家と家の間からかな。

俺に用があるなら、言いにくればいい。この街での俺の立ち位置なんて、大した事ないんだから。

いい加減、今度は見てやろうかな。

コソコソしやがって。



ザッ、ザッ、ザッ…!



ここから視線が…。

感じたんだ、けど。





「がっ!」



グキキッ!



「い、いい痛ぇえっ!!」



しまった!家の間の隙間にいきなり顔を入れた俺がバカだった…!誰かに首を押さえつけられたぞ。遠目に眺めて確認すれば良かった…。

油断した。



「い、痛ぇよ!離せ!」



「君、わかってないねぇ…」



「な、何?」



「次に会ったら、君の首をへし折るって、言わなかったかにゃ?」



その言葉、何処かで聞いた事があるな。

声にも聞き覚えがある。



…。



わかったぞ!



「確か、東角猫トーニャ族のメルシィーニ…!?」



顔を下に向けられて首を絞められてるから相手の顔が見えないけど、会話の内容からすると、間違いなくここに来る道中に夜襲してきたメルシィーニって奴だ。



「お、俺…っ。出くわしてない…だろ」



「いや、お前からこの場所に顔を突っ込んで、出くわしに来たにゃ!」



じゃあ、隠れながら俺を見んじゃねえよ!変な視線ばっかり送ってるから怪しまれるんだろうが!

くっ…!何とか息はできるみたいだ。



「この…街がお前の、東角猫族の住処だって、知らなかったんだよ…!」



「こんな気分悪い場所が誰の住処だって?ここにいる他の東角猫族のバカと一緒にしないでほしいなぁあっ!」



グキキ…!



「わ、わかったよ!じゃあ、何しに来たんだよ。い、い痛ぇな!この…!」



「そうだ。君に命令するねぇ?良いよねぇ…。命を助けたんだから、言う事聞くよねぇ?」



その助かった命も燃え尽きそうですが…。このバカ猫が!離せって!



「クラファミースって東角猫族を探すにゃ!」



何だ、こいつ…!人探しか?

ここじゃ、東角猫族もオーロフ族の奴隷だから、誰かに力借りないと成り立たないよな。ぃてぇな…!首絞めながら頼む奴なんて、聞いた事ねえぞ。



「わ、かった…よ!」




パッ!



「じゃあ、行けにゃ。君の動向は常に確認しておくから。わかったよねぇ…?」



とんでもねえ猫野郎だぜ。だけど、この街じゃ堂々と歩く事もできねえだろう?

俺とあまり立場は変わらなそうだもんな。

でも、こいつは強いからな。何かの役に立つかも知れない。

少しは恩を売っておくのも、悪くはないな。



「ところで、クラファミースって誰なんだ?」



「君が探す東角猫族にゃ」



だろうな。アホか、それはさっき聞いたよ。お前とそいつの関係を聞いてんだよ。でもまぁ、どうでもいいよな。

特に興味もないし。



「ちゃんと調べないと、後で酷いにゃ」



うるせぇ猫だな!お前も獣化でもして猫耳出して、ニャンニャン言いながら仲間に情報聞き出そうとしたのかよ!?

あー、いい事思いついだぞ。

あの裏切り者の東角猫族のティデだっけ?あいつの所に行って、裏切られた事は伏せて、クラファミースって奴の事を聞くか。

あの猫女だったら、情報通だから何か知ってるだろうな。
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