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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その141

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宝酷城ほうこくじょうの3階も、2階と同じ様に通路が狭い。いや、でも城の中なんて、そんなもんだよな。家族と観光旅行で行った何処かの城も、大して広くはなかったしな。

父さんの心と同じ。

狭い。

この階は、四角い木の枠に紙を貼って、中の皿に火をつけて周りを照らす行灯あんどんって物が壁にたくさん掛かっている。2階にもあったけど、この階の方が遥かに多い。だから、手で光を遮りたくなるぐらい、強く感じる。

通路の外側にいくつもの大きな窓がついていて、そこから風が行き交う。行灯の中の火が揺らめいて、壁に描かれた虎だか化け物だかわからない絵が、何だか生き物の様に動いて見える気がする。多分、夜だともっとそう感じるだろうな。

一体、何の絵なんだ?

この階は、通路の内側に頑丈な鉄枠木造の扉に、かんぬきがされている場所が何箇所かあるけど、重要なものが保管されていそうだ。この中の1つに、あの東角猫トーニャ族の女が言ってた札もあるのかな?



「夜になると、この階とさらに上の階の灯りが街を照らし、街の動きがわかるのさー。今は、特に夜に動く者なんて少なくはなったけどねー」



包帯ぐるぐる男は、この階に入って、やたら刀の握りの部分に手を掛けてる。恐いな。俺達を斬ろうとしてる?それなら、黒い灯籠を過ぎたあたりから、いつでも斬れただろうし、それはないよな。

この階は何か重要そうだ。



「テテ」



「何だ、パルンガ」



「エズアが呼んでる様な気がしたど」



エズア!?でも、特に何も声がしなかったけどな。



「この街の英雄とも言うべき、ゼドケフラーの事だね?彼はこの城を気に入っていたみたいだから、もしかしたら、霊魂がこの城を彷徨っているのかも知れないねー」



「ところでさ、君の右手に浮かんでいるものは、炎かな?弱い光だったから、あまり気づかなかったよ」



この包帯ぐるぐる男には見えるのか?この紫色の炎が。



「不思議な色をしているね…」



「俺と君が勝負したらさ、どっちが勝つかなー?それもまた、楽しそうだよねー?」



こいつ、やっぱり、ここで俺と戦おうなんて思ってないよな。だから、刀の握りに手を掛けてるって事か?だとしたら、何でこの階でやろうとしてるんだ?



「ゴホッ…!ゴホッ!」



また、この包帯ぐるぐる男の首の包帯に血が滲み出した。



「…大丈夫か?」



「あ…。気に、しなぃで。ゴホッ!」



首の包帯が真っ赤に染まる。

でも、不思議な事に、この男が苦しんだ姿からいきなり何事もなかった様に回復するんだ。それも、包帯に滲んだ血も体内に戻ったかの様に、包帯が真っ白の状態に戻る。



「さて、お待たせしたねー。また進んで行くからねー」



本当に怪しい奴だな、こいつ。でも、警戒しながらも、ここまで来たんだから、進むしかない。

パルンガ、頼りにしてるぜ。
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