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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その122
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「ただ、エズアの話は、これ以上続けても、そう心地良いものは何もない。ハムカンデ様に歯向かって、そして、殺された。それだけの話さ…」
やっぱり、エズアは死んでるのか。パルンガは悲しむだろうな。少し英雄扱いしてた様な言い方だったもんな。
でも、神の血が入ってるほどのゼドケフラーが、オーロフ族にやられるんだな。パルンガは、相当強いみたいな事を言ってたけど。ハムカンデが強過ぎるのか?
「最後は、どうやって死んだんだ?」
「…あの時の宝酷城の天守層には、ハムカンデ様と太鼓六変人の6人、そして黒眼五人衆の内の2人、シブとナグがいてね…。太鼓六変人は、ハムカンデ様のご機嫌取りの太鼓叩きだけど、実際は、ハムカンデ様の指示一つで暗器を使って相手を殺す、暗殺者。シブとナグは、ハムカンデ様の護衛さ。エズアは、偽物の宝物をハムカンデ様に投げ、その勢いのまま、ハムカンデ様の喉元に手を掛けた。エズアの周囲には、敵しかいないのにも関わらず…」
「ハムカンデ様の魔力は、魔獣エグゼラス級で、重力を操る魔法は得意だったけど、それでも、エズアの突進は止められなかった様だった。黒眼五人衆シブの変幻稲妻斬りをまともに受け、太鼓六変人の毒針を打ち込まれた。それを意にも介さず、ハムカンデ様を殺そうとしたのは、よほど騙されたのが悔しかったんだろうね。クェタルドもいつ死んでもおかしくない状態だったみたいだから」
エズアは他人のために、自分の意思を曲げて戦ったのかも知れないな。その結果がこれだ。ただ、オーロフ族の発展のために力を貸しただけに終わった。
クェタルドが知ったら、どう思うだろうな。オーロフ族は、支配下に置いた東角猫族も引っ張ってきて、戦いに参加させた。エズアは、クェタルドのために戦った。でも、それが戦いを長引かせ、より死人を多く出す結果となっていたら…。
余計な事をしてくれた、そう思われる可能性もなくはないだろうな。
いや、俺も意地が悪いな。
俺は、クェタルドを知らない…。
エズアも知らないんだ、あまり憶測で判断しない方がいいのかもな。
「エズアは、さらに襲いかかる黒眼五人衆ナグの腐乱天元斬りをかわして、ナグの胸元に血飛沫が部屋中に飛び散るくらい、致命傷となる爪の攻撃を食らわし、そして、地面に落ちたナグの刀を奪い、それを間髪入れず、シブに投げ、それが見事シブの胸元を貫通させて、シブを仕留めたんだ。あの戦闘能力の高い黒眼五人衆を、こうもあっさりと倒した。でも、ハムカンデ様に、その時に致命的な隙を与えてしまったんだよ…」
「エズアの首元に麻酔針が刺さり、少し身を仰反らせた時に、魔闘石の出番さ。エズアの膨大な魔力は、大量にハムカンデ様の魔闘石に流れ込み、立場は逆転、猛攻を受けたエズアは堪らず、天守層の窓から飛び降りたんだ。動きの鈍ったエズアに、ハムカンデ様が追いつく事は容易な事だった。でもね、ハムカンデ様は自分で留めを刺さず、エズアは信じられない裏切り者だと、街中で声を上げて、ゆっくりとエズアの後ろをついて回ったんだ」
「…最悪な奴だな」
「約束と違う偽物の宝物を渡そうとしたなんて、他には知られたくないだろうしね。ただでさえ、オーロフ族は、盗人しかできない姑息な種族って見られていたんだから、尚更だよ。ハムカンデ様は、エズアに首を強く掴まれていたせいで、爪が首に食い込んでいたから、その傷痕で血を流していた。重傷ではなさそうだったけどね。その血が流れる自分の首を押さえて、エズアを指差して、裏切り者、仲間を殺した、と被害者を演じ、叫び続けた。家から出てきた者達も、ハムカンデ様の姿を見て、エズアが敵なんだと思い込み、攻撃に出てね、それは、オーロフ族、黒眼五人衆の3人もそうだけど、クェタルドと共に守った事も多かった、東角猫族もエズアを攻撃し始めたんだ。反撃する余力も無くなっていたエズアは、心中穏やかではなかっただろうね。でも、エズアが反目に回ったら、皆殺しに遭うと恐れての事だから、仕方がないのさ」
そうか。エズアを信じてくれる奴なんて、いなかったのか。
淋しい終わり方だったな。
この場所に街が建つまで守り続けたのに、最後は、街に殺された。
利用されっぱなしで終わった。
誰かのために、何かをするっていう事が、バカバカしく思える。
力を借りたければ、相手を支配しろ、それが一番いい方法なのか?
みんなで心をなくす様に仕向けている、そんな世界だ。
勝手にやってろよ。
俺は、この世界にはいたくない。
すぐにでも、元の世界に戻ってやる…。
「エズアはその時に殺された。しばらくして、噂で聞いたよ。クェタルドも、時を同じくして、死んだらしい」
「…そうか。死んだのか」
全てがムダに終わったのか。エズア。せめて、クェタルドが死ぬまで、側にいたかったんじゃないのか?その時間を、クェタルドを救えると信じて、北のこの場所で戦い続けた。
お前は、バカだよ…。
この世界じゃ、人に尽くしても報われないのは、俺なんかより、この世界の住人のお前なら、知ってるはずだよな?
それとも、俺がこの世界を知らないだけか?
クェタルドは、エズアにとって、そこまでの大きな存在か?
「エズアの話はしてあげたよ。あとは、お前が私に札を持って来た時にでも、この街の出方のついでに、他の話もしてあげるよ…」
ギルロの事とか、夢魔操の事が聞けてないな。他の住人から話が聞けるかな?正直、無理そうな気がする。閉鎖的な街だからな…。
今聞いた話、そのままパルンガに話す訳にはいかない。話を変えないと。あいつの気がおかしくなっちまう。
そうだ、ベルダイザーの話も聞けてないじゃねぇか。
何やってんだ、俺…。
ガチャ。
ガチャ、ガチャ。
鉄靴と脛当てなんかの脱着、だいぶ慣れてきたな。でも、魔法でもっとかんたんに脱着したいところだ。
「もう行くのかい?」
「ああ…」
茶菓子も出してくれなかったからな。
「では、早めに頼むよ?お札をさ…」
「ああ、わかったよ」
できるかどうかわからないけどな。あまり期待しないでくれよ。俺は、この世界で最弱なのかも知れないしな。
「ああ、そう言えばさ…」
「ぐぎゃ…ッ!」
ん!?家の外で変な声がした!?
普通の声じゃない、何か危険な感じがする!誰の声だ?わからない…!わからないけど、家の前で立たせているのは、パルンガだ!
ちくしょうっ!
ダダッ!!
「外は大丈夫だって、言ってなかったか!?」
「…」
お前はここで死ぬんじゃない!
ベルダイザーのエズアが、この街でかわいそうな死に方をした!
お前は、絶対にここで死ぬな!
「パルンガッ!!」
やっぱり、エズアは死んでるのか。パルンガは悲しむだろうな。少し英雄扱いしてた様な言い方だったもんな。
でも、神の血が入ってるほどのゼドケフラーが、オーロフ族にやられるんだな。パルンガは、相当強いみたいな事を言ってたけど。ハムカンデが強過ぎるのか?
「最後は、どうやって死んだんだ?」
「…あの時の宝酷城の天守層には、ハムカンデ様と太鼓六変人の6人、そして黒眼五人衆の内の2人、シブとナグがいてね…。太鼓六変人は、ハムカンデ様のご機嫌取りの太鼓叩きだけど、実際は、ハムカンデ様の指示一つで暗器を使って相手を殺す、暗殺者。シブとナグは、ハムカンデ様の護衛さ。エズアは、偽物の宝物をハムカンデ様に投げ、その勢いのまま、ハムカンデ様の喉元に手を掛けた。エズアの周囲には、敵しかいないのにも関わらず…」
「ハムカンデ様の魔力は、魔獣エグゼラス級で、重力を操る魔法は得意だったけど、それでも、エズアの突進は止められなかった様だった。黒眼五人衆シブの変幻稲妻斬りをまともに受け、太鼓六変人の毒針を打ち込まれた。それを意にも介さず、ハムカンデ様を殺そうとしたのは、よほど騙されたのが悔しかったんだろうね。クェタルドもいつ死んでもおかしくない状態だったみたいだから」
エズアは他人のために、自分の意思を曲げて戦ったのかも知れないな。その結果がこれだ。ただ、オーロフ族の発展のために力を貸しただけに終わった。
クェタルドが知ったら、どう思うだろうな。オーロフ族は、支配下に置いた東角猫族も引っ張ってきて、戦いに参加させた。エズアは、クェタルドのために戦った。でも、それが戦いを長引かせ、より死人を多く出す結果となっていたら…。
余計な事をしてくれた、そう思われる可能性もなくはないだろうな。
いや、俺も意地が悪いな。
俺は、クェタルドを知らない…。
エズアも知らないんだ、あまり憶測で判断しない方がいいのかもな。
「エズアは、さらに襲いかかる黒眼五人衆ナグの腐乱天元斬りをかわして、ナグの胸元に血飛沫が部屋中に飛び散るくらい、致命傷となる爪の攻撃を食らわし、そして、地面に落ちたナグの刀を奪い、それを間髪入れず、シブに投げ、それが見事シブの胸元を貫通させて、シブを仕留めたんだ。あの戦闘能力の高い黒眼五人衆を、こうもあっさりと倒した。でも、ハムカンデ様に、その時に致命的な隙を与えてしまったんだよ…」
「エズアの首元に麻酔針が刺さり、少し身を仰反らせた時に、魔闘石の出番さ。エズアの膨大な魔力は、大量にハムカンデ様の魔闘石に流れ込み、立場は逆転、猛攻を受けたエズアは堪らず、天守層の窓から飛び降りたんだ。動きの鈍ったエズアに、ハムカンデ様が追いつく事は容易な事だった。でもね、ハムカンデ様は自分で留めを刺さず、エズアは信じられない裏切り者だと、街中で声を上げて、ゆっくりとエズアの後ろをついて回ったんだ」
「…最悪な奴だな」
「約束と違う偽物の宝物を渡そうとしたなんて、他には知られたくないだろうしね。ただでさえ、オーロフ族は、盗人しかできない姑息な種族って見られていたんだから、尚更だよ。ハムカンデ様は、エズアに首を強く掴まれていたせいで、爪が首に食い込んでいたから、その傷痕で血を流していた。重傷ではなさそうだったけどね。その血が流れる自分の首を押さえて、エズアを指差して、裏切り者、仲間を殺した、と被害者を演じ、叫び続けた。家から出てきた者達も、ハムカンデ様の姿を見て、エズアが敵なんだと思い込み、攻撃に出てね、それは、オーロフ族、黒眼五人衆の3人もそうだけど、クェタルドと共に守った事も多かった、東角猫族もエズアを攻撃し始めたんだ。反撃する余力も無くなっていたエズアは、心中穏やかではなかっただろうね。でも、エズアが反目に回ったら、皆殺しに遭うと恐れての事だから、仕方がないのさ」
そうか。エズアを信じてくれる奴なんて、いなかったのか。
淋しい終わり方だったな。
この場所に街が建つまで守り続けたのに、最後は、街に殺された。
利用されっぱなしで終わった。
誰かのために、何かをするっていう事が、バカバカしく思える。
力を借りたければ、相手を支配しろ、それが一番いい方法なのか?
みんなで心をなくす様に仕向けている、そんな世界だ。
勝手にやってろよ。
俺は、この世界にはいたくない。
すぐにでも、元の世界に戻ってやる…。
「エズアはその時に殺された。しばらくして、噂で聞いたよ。クェタルドも、時を同じくして、死んだらしい」
「…そうか。死んだのか」
全てがムダに終わったのか。エズア。せめて、クェタルドが死ぬまで、側にいたかったんじゃないのか?その時間を、クェタルドを救えると信じて、北のこの場所で戦い続けた。
お前は、バカだよ…。
この世界じゃ、人に尽くしても報われないのは、俺なんかより、この世界の住人のお前なら、知ってるはずだよな?
それとも、俺がこの世界を知らないだけか?
クェタルドは、エズアにとって、そこまでの大きな存在か?
「エズアの話はしてあげたよ。あとは、お前が私に札を持って来た時にでも、この街の出方のついでに、他の話もしてあげるよ…」
ギルロの事とか、夢魔操の事が聞けてないな。他の住人から話が聞けるかな?正直、無理そうな気がする。閉鎖的な街だからな…。
今聞いた話、そのままパルンガに話す訳にはいかない。話を変えないと。あいつの気がおかしくなっちまう。
そうだ、ベルダイザーの話も聞けてないじゃねぇか。
何やってんだ、俺…。
ガチャ。
ガチャ、ガチャ。
鉄靴と脛当てなんかの脱着、だいぶ慣れてきたな。でも、魔法でもっとかんたんに脱着したいところだ。
「もう行くのかい?」
「ああ…」
茶菓子も出してくれなかったからな。
「では、早めに頼むよ?お札をさ…」
「ああ、わかったよ」
できるかどうかわからないけどな。あまり期待しないでくれよ。俺は、この世界で最弱なのかも知れないしな。
「ああ、そう言えばさ…」
「ぐぎゃ…ッ!」
ん!?家の外で変な声がした!?
普通の声じゃない、何か危険な感じがする!誰の声だ?わからない…!わからないけど、家の前で立たせているのは、パルンガだ!
ちくしょうっ!
ダダッ!!
「外は大丈夫だって、言ってなかったか!?」
「…」
お前はここで死ぬんじゃない!
ベルダイザーのエズアが、この街でかわいそうな死に方をした!
お前は、絶対にここで死ぬな!
「パルンガッ!!」
応援ありがとうございます!
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