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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その114
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黒眼五人衆メベヘって名乗った奴は、急に黒い家の屋根の上に視線を向けて、様子を窺い、不気味に笑った。
「未だにあの様な者共が、この辺りに現れるとはな。まさか、お前の連れかな?そうであれば、お前は白い砂ではない…」
屋根の上の何かが一瞬動いたのは、俺も感じだけど、俺の連れなんて、パルンガぐらいしかいない。
でも、このメベヘって奴は、屋根の上を妙に警戒してるな。
「またな…。よく休むといい。そうだな、休め。儂は帰るとするよ。明日、そのまた明日。会えると良いな」
このメベヘから感じるものは、殺気か?ただの威圧感か?でも、これ以上、恐くてこいつから何も聞く事はできない。
屋根の上の何かを警戒して、俺との会話から気が逸れた感じだな。
しかし、屋根の上に何がいたんだ?よくわからないな。
メベヘが暗闇に消えた後、パルンガが少し唸った。いなくなったところで、ガルルとか言ったって、負け犬の遠吠えだぞ。だけど、今回はそれでいい。
「テテ、あいつは少し気をつけた方がいいど。死んだ肉の臭いがするんだど」
「え?死んでる…の?」
ブンブン首を振って、否定するパルンガ。結構、大きく何度も首を振ってくれたな。検討ハズレも甚だしいとか、そんな感じかな。少し苛ついちゃったぞ、俺。
「たくさん住人を殺してる。それで、たくさんの住人の体の少し、自分の体についたままでいる、そんな感じの臭いだど」
「へー…」
あまりの恐怖に、頭が働かない。そんな感じの奴に、よく質問なんてしたな。機嫌を損ねていたら、俺は殺されていたかも知れない。
メベヘって奴は、相手に対して、容赦なく、斬り刻む様に殺すのかも知れないって事か?
俺、まさか目をつけられてないよな?だって、何もやってないから。
この街で何かやったか?
パルンガをこの街に連れてきた。
それが、この街にとっては大罪、そうなのかも知れないな。
だから、明日か、そのまた明日会えるといいなとか言ってたのかも。
じゃあ、今日なら、逃げられるって事か。
もしかして、この街を出た方がいいのかな?
でも、この街を出て、どうするんだよ。そうしたら、まず、夢魔操は諦めるしかない。人が持ってるのは間違いないのに、その人との会話を避けて、手に入れられる訳がないんだ。しかも、確か、使うには、魔法が必要だったよな?あの片眼鏡男は吸魔晶とか言ってたか?その魔法の事も知らないのに。
北に行って、第6大陸に渡り、ギルロの根城には行けるかも知れないけど。その中に気軽に入れるとも限らない。
情報がないんだ。
この世界で情報を手に入れるには、逃げてばかりじゃなくて、勇気を持ってイカれた住人どもと接するしかねえんだよ。
「テテ、オデはエズアの事、知りたいど。手伝ってほしいど」
え?お一人で、ご自由にどうぞ。俺は別に、エズアの事なんて、どうでもいいからな。それどころじゃない。
「テテ、優しいから、手伝ってくれるど」
いや、くれないど。ただでさえ、お前と一緒にいて不穏な空気が漂ってるのに、その大元となるゼドケフラーのエズアの情報集めなんか始めちまったら、裸でみんなにナイフを配って、俺を刺し殺して下さいって頼んでる様なもんだろうが。
絶対に、手伝わねえ!
「テテ、エズアは思いやりがあって強いんだど。かんたんに、死んだりなんか、しないはずなんだど」
それは、思いやりがなくて、実は弱かったから、死んだんじゃないのか?
いや、強かったとしても、誰でも、死ぬ時は死ぬんだ。仕方がない。でも、お前はまだ生きてる。お前がやらなきゃいけない事は、それじゃねえだろ?
「パルンガ、エズアの事よりも、自分の事はどうするんだ?ベルダイザーを倒して、幼獣から抜けないと、死んじまうって、お前、言ってたよな?」
ベルダイザーは、絶滅危惧種って、あのメルシィーニって猫女が言ってたよな。
この街まで歩いて来たけど、ベルダイザーはいなかった。それどころか、獣1匹、見当たらなかっただろう。全て狩られて、絶滅してたら、お前どうすんだよ。
「ベルダイザーの情報集めをやれよ…」
だけど、ベルダイザーの情報集めも難しいかも知れない。
この街の奴らに拒否反応が出てるゼドケフラー、その幼獣を、成獣にする手助けをする様なもんだからな。だったら、こいつは、この街から出して、ベルダイザー探しに時間を使わせた方がいいんじゃないのか?
いつかは、別れがくる。
それはわかってはいても、淋しいもんだよな。
俺は自分の事ばかり考えてる。パルンガがそばにいてくれたら、何だかんだ言っても、心強い。
でも、お前に何の利点があるんだ?
俺の命が危ない時も、助けに来てくれたよな?
俺は、お前にとって、何の役に立っている?
「パルンガ、お前はベルダイザーをさ…」
「オデは、ベルダイザーの情報を集めるど!」
「!?」
お前は、このまま街にい続けると、殺されるかも知れないけどな。でも、俺も同じ様なもんか。お前と一緒にいるのが目撃されているからな。
この街はゼドケフラーに関わりがあるんだ、情報はたくさんありそうだからな。パルンガがもう少しこの街で情報を集めるのも、悪くはないのかも知れないな。
ただ、この街を支配してそうなオーロフ族とか、さっきの不気味な奴じゃダメだ。さっきの奴が言ってた、奴隷として使われてる東角猫族、そいつらから情報を得るんだ。この街で、立場は悪いはず。だったら、何か一石を投じたいと思う奴がいてもおかしくはないよな。
俺は、夢魔操とギルロの情報を集めるから、お前はベルダイザーの情報を集めろ。
気が向いたら、エズアの事、聞いておいてやるよ。
「未だにあの様な者共が、この辺りに現れるとはな。まさか、お前の連れかな?そうであれば、お前は白い砂ではない…」
屋根の上の何かが一瞬動いたのは、俺も感じだけど、俺の連れなんて、パルンガぐらいしかいない。
でも、このメベヘって奴は、屋根の上を妙に警戒してるな。
「またな…。よく休むといい。そうだな、休め。儂は帰るとするよ。明日、そのまた明日。会えると良いな」
このメベヘから感じるものは、殺気か?ただの威圧感か?でも、これ以上、恐くてこいつから何も聞く事はできない。
屋根の上の何かを警戒して、俺との会話から気が逸れた感じだな。
しかし、屋根の上に何がいたんだ?よくわからないな。
メベヘが暗闇に消えた後、パルンガが少し唸った。いなくなったところで、ガルルとか言ったって、負け犬の遠吠えだぞ。だけど、今回はそれでいい。
「テテ、あいつは少し気をつけた方がいいど。死んだ肉の臭いがするんだど」
「え?死んでる…の?」
ブンブン首を振って、否定するパルンガ。結構、大きく何度も首を振ってくれたな。検討ハズレも甚だしいとか、そんな感じかな。少し苛ついちゃったぞ、俺。
「たくさん住人を殺してる。それで、たくさんの住人の体の少し、自分の体についたままでいる、そんな感じの臭いだど」
「へー…」
あまりの恐怖に、頭が働かない。そんな感じの奴に、よく質問なんてしたな。機嫌を損ねていたら、俺は殺されていたかも知れない。
メベヘって奴は、相手に対して、容赦なく、斬り刻む様に殺すのかも知れないって事か?
俺、まさか目をつけられてないよな?だって、何もやってないから。
この街で何かやったか?
パルンガをこの街に連れてきた。
それが、この街にとっては大罪、そうなのかも知れないな。
だから、明日か、そのまた明日会えるといいなとか言ってたのかも。
じゃあ、今日なら、逃げられるって事か。
もしかして、この街を出た方がいいのかな?
でも、この街を出て、どうするんだよ。そうしたら、まず、夢魔操は諦めるしかない。人が持ってるのは間違いないのに、その人との会話を避けて、手に入れられる訳がないんだ。しかも、確か、使うには、魔法が必要だったよな?あの片眼鏡男は吸魔晶とか言ってたか?その魔法の事も知らないのに。
北に行って、第6大陸に渡り、ギルロの根城には行けるかも知れないけど。その中に気軽に入れるとも限らない。
情報がないんだ。
この世界で情報を手に入れるには、逃げてばかりじゃなくて、勇気を持ってイカれた住人どもと接するしかねえんだよ。
「テテ、オデはエズアの事、知りたいど。手伝ってほしいど」
え?お一人で、ご自由にどうぞ。俺は別に、エズアの事なんて、どうでもいいからな。それどころじゃない。
「テテ、優しいから、手伝ってくれるど」
いや、くれないど。ただでさえ、お前と一緒にいて不穏な空気が漂ってるのに、その大元となるゼドケフラーのエズアの情報集めなんか始めちまったら、裸でみんなにナイフを配って、俺を刺し殺して下さいって頼んでる様なもんだろうが。
絶対に、手伝わねえ!
「テテ、エズアは思いやりがあって強いんだど。かんたんに、死んだりなんか、しないはずなんだど」
それは、思いやりがなくて、実は弱かったから、死んだんじゃないのか?
いや、強かったとしても、誰でも、死ぬ時は死ぬんだ。仕方がない。でも、お前はまだ生きてる。お前がやらなきゃいけない事は、それじゃねえだろ?
「パルンガ、エズアの事よりも、自分の事はどうするんだ?ベルダイザーを倒して、幼獣から抜けないと、死んじまうって、お前、言ってたよな?」
ベルダイザーは、絶滅危惧種って、あのメルシィーニって猫女が言ってたよな。
この街まで歩いて来たけど、ベルダイザーはいなかった。それどころか、獣1匹、見当たらなかっただろう。全て狩られて、絶滅してたら、お前どうすんだよ。
「ベルダイザーの情報集めをやれよ…」
だけど、ベルダイザーの情報集めも難しいかも知れない。
この街の奴らに拒否反応が出てるゼドケフラー、その幼獣を、成獣にする手助けをする様なもんだからな。だったら、こいつは、この街から出して、ベルダイザー探しに時間を使わせた方がいいんじゃないのか?
いつかは、別れがくる。
それはわかってはいても、淋しいもんだよな。
俺は自分の事ばかり考えてる。パルンガがそばにいてくれたら、何だかんだ言っても、心強い。
でも、お前に何の利点があるんだ?
俺の命が危ない時も、助けに来てくれたよな?
俺は、お前にとって、何の役に立っている?
「パルンガ、お前はベルダイザーをさ…」
「オデは、ベルダイザーの情報を集めるど!」
「!?」
お前は、このまま街にい続けると、殺されるかも知れないけどな。でも、俺も同じ様なもんか。お前と一緒にいるのが目撃されているからな。
この街はゼドケフラーに関わりがあるんだ、情報はたくさんありそうだからな。パルンガがもう少しこの街で情報を集めるのも、悪くはないのかも知れないな。
ただ、この街を支配してそうなオーロフ族とか、さっきの不気味な奴じゃダメだ。さっきの奴が言ってた、奴隷として使われてる東角猫族、そいつらから情報を得るんだ。この街で、立場は悪いはず。だったら、何か一石を投じたいと思う奴がいてもおかしくはないよな。
俺は、夢魔操とギルロの情報を集めるから、お前はベルダイザーの情報を集めろ。
気が向いたら、エズアの事、聞いておいてやるよ。
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