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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その111裏

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「ゼドケフラーの幼獣がまだこの辺りを彷徨いているとはな。なあ、小鈴ショウレイ、驚きだよな?」



「だはは、浮浪殲滅部隊も大した事がなぁい、だなぁ?」



「よう!」



ポン!



「やあ!」



ポン!



「そのゼドケフラーの幼獣の扱いですが、私にお任せ頂けませんでしょうか?」



「ペニン?そうだよな、お前はペニンだ。そうだよなぁ?」



「はい…。私でございます」



「フフン!やはりそうか。お前はペニンであったか。その確認は必要だったのだ」



「…はい?」



「私の記憶が間違いなければ、お前は、確か第4大陸のグラージ族だったはずだ。そのお前が、醜く悍ましい大陸を逃げ出すために、険しい獣道を通り抜け、起伏の多い山道を抜け、何とかこの第5大陸に渡り、そこからさらに北西を進み、この弁帝街べんていがいに辿り着き、この街の居住権を手に入れた、そうだな?」



「え?ええ…」



「この街の生い立ちは、あるゼドケフラーなしでは語れはしない。だが、時には犠牲はつきものだ。それは代償と取れるのかも知れないが。私の街は、私が守らねばないのだよ。だから、この街の平穏を脅かす存在のゼドケフラーを根絶やしにしなければならなかった。実際にそうなったはずだった。しかし、それは私の浮浪殲滅部隊を過信した、私への罰なのかも知れない。なあ?小鈴…」



「だははっ!また、犠牲が出てしまうのは、つらい、でなあ!?」



「ヒィッ!な、何を!何をするおつもりで!?」



「おお、ペニン…。何を恐れている?ゼドケフラーの全てを根絶やしにしたと思い違いをした私に、当てつけるかの様に報告してきたのだろう?まだ、ゼドケフラーの生き残りがいると。この街に無断で侵入させ、その上でゼドケフラーを好きにさせて欲しいと伝えてきたな?次の機会には、そのゼドケフラーと私を対面させるつもりだろう?お前は、大した奴だよ。ペニン。お前は、大物だ」



「そんな!?そんな事は…!」



「かつてのオーロフ族の様に、劣等民族だと、私に向かって伝えようとしているのか?オーロフ族は、盗人を生業とした、劣悪民族か?それしか取り柄のない、クズの集まりだと?なあ?ペニン。ペニンよ。東角猫トーニャ族との立場は逆転した。殺戮と窃盗を繰り返しているのは、東角猫族だ。その東角猫族を抑止しているのは、オーロフ族なのだよ」



「わ、わかっています!オーロフ族は、この一帯を支配する民族だと、承知しています!」



「よお!」



ポン!



「やあ!」



ポン!



「だが、東角猫族との因縁も終わり、オーロフ族への貢献度により、この小鈴の様に、この街において、地位を上げる事もできるのだ。それは、他所からこの街に来た者達にも、同じ事が言える。ゼドケフラーを連れて来た者達は別だがね」



「わ、私は、決して…!」



「ペニン?今のは、お前の事じゃない。お前は…」



「ええ、私はこの街にゼドケフラーなんて…」



「もっと、悪い子なんだろう?」



「え?」



「この街に魔力を献上してきたお前の貢献も忘れてはいない。だから、チャンスをくれてやろう…」



「はい!ゼドケフラーを始末してきます!」



「それができるかどうかを試す意味でも、この小鈴と戦い、勝つ事ができたなら、それも良いだろう」



「だははっ!小せえ赤ちゃんみたいなペニンが、私と戦う、おもしれえ、だなあ?」



「そ、そんな!こんな大柄な怪力女と戦えって?ゼドケフラーの幼獣なんて、すぐに捻り殺してやりますから、お願いですから、ご勘弁を!」



「大柄な怪力女…?まさか美麗の象徴たる元貴族階級の東角猫族に対して、そんな言葉を使うとは。小鈴、お前は大柄な怪力女、そんな言葉で表現される女なのか?」



「…おめぇ、何だ!?私は、東角猫族じゃねえ、だと!?」



「ち、違う!ただ、強過ぎると言いたかっただけなんだ!」



「じゃあ、強過ぎる、そう言葉を伝えれば良かったのではないのかな?何事も、過信は良くない、そうだな?ペニン…」



「ま、待て!私は何もやっていないだろう!」



「このハムカンデに対して暴言とは、やはりお前は大した奴だよ、ペニン」



「ちょっ…!ギャアアッ!!」



ボギッ!ボギボギッ!!



「この宝酷城ほうこくじょうで果てる事を、喜びと捉えるが良いぞ」



「ギャアアアアアッ!!!」



ボギボギッ!ゴキンッ…!




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