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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その107

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ボルティアって宿は、他の家と同じ様に瓦屋根のついた平家に見えたけど、変わってるのは、地下2階まであるところだ。事実上、3階建てか。外装内装共に、ほぼ黒一色。見栄えがしないけど、この選択は単純にセンスの問題か?

パルンガは、どんぐりみたいなものを口に放り込んで音を立てて食べてる。少し、俺を見る目が冷たいのが気になるな。

この世界の奴らは、いい顔して、裏で腹黒い事考えてるからな。でも、パルンガが、俺の事、今そういう奴らと同類じゃないかって、疑った目で見てるなら、それはイヤだな。

お前は、心はきれいだよな。この世界じゃ、珍しいくらい。俺の事、助けに来てくれたもんな。

俺は、お前の事、信用してるよ。

もし、お前が俺の後ろから襲ってきた時は、きっと何か事情があるって、勝手にお前の弁解を考えるとか、そのくらい、信用してるかも知れない。

この世界で、今まで油断ならない奴らしかいなかったからな。

お前みたいに純粋な奴、久し振りなんだよ。

でも、本当にそれでいいのかな、とも思う。

この世界は特殊だからな。

俺は、こんな所で死ねないし。

必ず、家族の所へ帰ってやる…。

この世界は、俺の生きるべき場所じゃないからな。

さっき、あのじじいがいた時、パルンガは俺の事、信じるって言ってたよな。

そうだよ。

そうだったよな…?

お互いに信じ合ってる、って事かな。

大丈夫…か。

な。



「料金は1泊1人2クラウンだからね。後払いだよ」



「ああ、わかった」



茶色の垂れた獣耳を頭に生やした中年男。さっきのオーロフ族のじじいと同じ耳だな。

よそ者は嫌いって表情してるけど、同じこの街に住む奴らで、この宿使う奴なんていないだろうが。お前の金になる客は、よそから来るんだって、自覚しろよ。

でも、今の俺に金はない。後払いで助かったぜ…(クズ確定)。

手渡された部屋の鍵は、カードキーか。建物の印象と合わねえな。透明だけど、少し虹色がかってる。

魔法とか、かかってたりして。

105の部屋か。



「テテ、エズアの事、気になるど」



「いや、今は自分の事だけ気にしろよ。な?」



部屋に入る前に、NGワードを口にするんじゃねぇよ。宿の奴らがより警戒するだろうが!

えーと、105は地下2階だな。面倒臭いな。階段だよ。しかも、螺旋階段。

建物内にある壁の照明が、剥き出しの電球か。暗いな。

黒い壁という事もあって、実に不気味だ。

あれ?壁に結構大きな亀裂が入ってるじゃないか。

あ、あそこも。

亀裂の中がはっきり見える場所もあるぞ。

大地震でもあったのかな?



「ん?」



何だ?

声かこれは?

それとも、音?



「テテ、どうした?」



「いや、何か音が聞こえなかったか?」



「聞こえないど!」



だろうな。お前の頭の中心部にまで耳クソが詰まってるだろうから、一生を懸けて取り除く事をお勧めするぞ。



「テテ、何を考えているんだど?」



「フッ…。何も考えてないど」



さっきのどんぐりでも食べて、頭から花でも咲かせといてくれ。今、俺は忙しいんだよ。

しかし、何の音なんだ?

地中奥深くから、轟く様な音…。または、声。発してる元は、大きな何かな気がする。

この大陸が浮かんでるから、何処か隙間から風が吹いていて、その音がここまで聞こえているだけか?

あまり深く考えていると、より不安になってくる。

考え過ぎも良くないか…。

考えなさ過ぎも、良くないけどな。
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