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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その106

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「この街の生い立ちを教えてあげてはどうかな?ペニンよ。知りたがってるんだよ、このゼドケフラーの幼獣は。導かれたんだからなぁ?クフォフォフォ…」



この茶色垂れ耳じじいはうるせぇな。これ以上、俺がパルンガの気をなだめる様な事ばかりすると、主従関係を疑われて、魔力の買取人に、パルンガの魔力を売るフリすらできなくなる。

かと言って、このじじいと向き合って、まともに話し始めても、魔力の買取人は去るだろうな。この2人を比べた場合、明らかに嫌な感じがするのは、この垂れ耳じじいの方だ。今は、魔力の買取人の方について行った方がいいだろう。



「…ここまで来るのに苦労したのに、何なんだ、あのじじいは。あんたにとっても、俺との交渉は、最高の機会だろうが!?」



意味わからないくらい強気な俺。これがただの焦りだとバレませんように。こっちだって、必死だ。



「最高の機会なのか、最大の危機なのかはわからないけど。もしかしたら、魔力よりも、ゼドケフラー自体を買い取らせてもらった方がありがたい気もするけどね」



パルンガ自体を?まさか、食べる気か?



「オーロフ族の長、カムハンデ様がお喜びになるかも知れない」



オーロフ族の?じじいもオーロフ族だよな?何だ、この街はオーロフ族が支配してんのか?



「でも、もしかしたら、カムハンデ様は逆の意向をお持ちかも知れない。その時は、この街にゼドケフラーを手引きしたと勘違いされて、処罰される可能性もある。悩ましいな。魔力だけを買い取って終わりにした方がいいのかも知れないな…」



この街にいただろうゼドケフラーのエズアについて、知りたい気がするけど、この場でその話に食いついても、いい方向には行かない。まずはこの魔力の買取人の店に行ってから聞いた方がいいよな。



「あんな不吉な奴が何でこの街に入れたの…?」



「せっかく、生き延びたのに…」



道に人が増えてきたな。頭にピンと三角形の白い耳が立った女達が話してる。不吉な奴とか、生き延びたのにとか…。不吉な奴って、多分、パルンガを見て言ってるな。生き延びたのに…ってのは、どういう意味だ?ゼドケフラーは、この街で悪さをしてたって事か?いや、どうだろうな。



「…このまま、私の店に連れて行って、問題になるかも知れないな。一度、ボルティアで宿取ってもらってもらいたいけど、いいかい?カムハンデ様に知らせてから、魔力買い取りの話を進めさせてもらいたい」



宿?宿代なんて、ないぞ。まあでも、その方が俺達には好都合か?いきなりパルンガの魔力を売るとか、パルンガ自体を売るとか、そんな話をしなくて済む。



「ボルティアか?クフォフォフォ!魔力売りの旅人は、この街には泊まりたがらないものなのに、勇気があるなぁ?いいぞ…」



泊まりたがらない…。この街はよそ者を受け入れない傾向があるって事なのか?この街の一番上にいるカムハンデって奴が、このパルンガをどう思うかもわからねえ。魔力の買取人がカムハンデって奴のところに聞きに行っている間に、この街で情報収集できるところまでして、早めに立ち去るのが無難なのかもな。



「そうだな、そのボルティアって場所で待つとするよ」



「初めに声をかけたのは私だからね。貴方との交渉権は、私にあるんだから、勝手に他の住人とやってはいけないよ」


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