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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その104

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20代半ばくらいの細目の男は、魔力の買取人?そんな言い方で合ってるのか、わからないけど、俺とパルンガは、その男について歩いている。

パルンガは、少し不満そうな表情をしているけど、俺はあの時、そうしないと不審に思われて、この街の奴らにやられちまうって思ったんだよ。

お前の魔力を買い取ってもらう様な雰囲気を出しているけど、実際にそうする訳じゃない。まあ、そういう振りだから、な。

…。

ずっと長く立ち並ぶ黒い家は、明かりがついている家と、そうでない家がある。でも、その2つの違いだけで、違和感を強く感じるんだ。

明かりがついている家は、その中に人の住む空間があって、そこに生活する人がいる、本当に家なんだと感じるけど…。

明かりのない家は、少し威圧感があるというか、家の中に人の住める場所なんてない、そう感じてくる。

窓枠はついているし、戸もある。屋根もあるんだ。普通の家と思ってもいいのに。

俺がおかしいのかもな…。



「テテ、何か見つけたのか?」



「いや、別に。何も」



何か見つけたってほどじゃないけど、歩いていると、人の気配くらいは感じるよ。実際に何人か立ってるしな。しかし、男も女も、きれいな顔をしてるよな。目が少しつり上がってる気もするけど。

そうだな、まるで猫みたいだ。

この街の奴らの頭に猫の耳なんてないけど、何となく、そんな印象だ。きれいだけど、お高く止まっていて、素っ気ない顔を見せる。

不釣り合いな茶色の地味そうな服を着てるのが残念だけどな。

服のセンスだけはない、か。残念な奴らだ。

ま、俺も人の事言えないか。俺もそんなに服のセンスなんて、ある方じゃないけどさ。でも、学生服さえ着れば、何とでもごまかせる自信はある。

着るものが頭でうまくまとまらない時には、最高のアイテムだ。



「!?」



視界の入らない場所に人の気配を感じて、振り向くと、そこには誰もいない。

一瞬、足音も聞こえるんだけどな。

気味悪い街だな、ホント。ここに長居は無用だな。



「もう少しで、私の店だからね…」



目に見えるだけでも、5軒の黒い家に看板がある。

看板がある家が、店って事なのかな。

このすぐ目の前に看板のある黒い家は、ペンキの臭いが強いぞ。

その臭いに混じって、少しだけ血の臭いがするんだよな。

まさか、な。

このペンキ自体に、血が混じってるとか?

そんな事をする必要なんかないだろう。

普通はそう思うけど、でも、この世界は異常だからな。

一応、パルンガにも聞いておくか。



「パルンガ、何か臭いがしないか?例えば…」



「しないど!」



しないど、か。少しは嗅いでみたりして、確認してから、俺に言わないのかな?しかも、今、俺は話途中だったよな?

お前の今の無神経な即答が、俺の神経を一瞬、うなぎに変えたぞ。うねうねしながら、頭の中を這い回ったからな。

まあいいや。

パルンガは、所詮、パルンガだからな。



「テテ、何を考えてる?」



頭の中でパルンガの事を少しでもバカにすると、すぐに気づく。そこだけは敏感だよな。そこだけは。

さすが獣だぜ。

そこだけは、敏感だ。

魔力の買取人の店は、ペンキの臭いの強いこの黒い家じゃなかったみたいだ。

通り過ぎていく。

少し、ホッとしたな。



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