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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その94
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《冬枯れの牙》が俺を見逃すって言ってるんだ、これはついているんじゃないのか?
そうだ、このまま北へ向かおう。元々、俺とパルンガは目的を持って北に向かっていたんだから。強制で行かされる訳じゃない。
だけど。
何だろうな、この違和感。
俺が《冬枯れの牙》に狙われてるのがわかったなら、なおさら見逃すのは、おかしい…。
最初は、俺達を殺す気で降りてきた様な気もするのに。
俺達がこのままさらに北に向かっているとわかって、絞首台に向かう様でおもしろくなって、様子を見ようという事になったのか?
俺達が死ぬって決まった訳でもないのにさ。
でも、理由なんて、どうでもいいな。
見逃してくれると言うのなら。
もう《冬枯れの牙》には関わりたくない。
もうあんな惨めな思いはしたくない。
…。
でも、本当に、ここから北に行くという事は、自殺行為に近いんだろうな。
「テテ?」
こいつは巻き添えにしちゃダメだ。《冬枯れの牙》は、多分、あのラグリェが俺に差し向けた泥人形の腐食レターとかのおかげで、矛先が俺に向いてる。あの猫女との戦いも、このパルンガには関係なかったのに、俺のために駆けつけさせて、危うく死ぬところだったんだ。《冬枯れの牙》なんて、なおさら勝てる訳がねえ。
「パルンガ、行こう…」
「賢明な判断だ。僅かながら、お前達の寿命は伸びたのだ。喜びを噛み締め、再び北へ向かうといい…」
「ガルルル…ッ!!」
パルンガ!?止めておけって!お前の負けん気だけは認めるけど、お前自体、大して強くはないだろ?《冬枯れの牙》相手に勝てる訳がないだろうが。
「…《冬枯れの牙》赤祭傀士の、このガラリスを相手に、対等に渡り合えると思うのか?お前達ゼドケフラーの幼獣が果たすべき血戦の相手は、ベルダイザーだろう。妖気を含む魔力を持った獣を食い続け、進化を遂げるゴロクベータ種らしく、な」
こいつはガラリスっていう名前か。《冬枯れの牙》の中でどのくらいの位置づけなのかわからないけど、強いのは間違い…。
「こいつみたいなのは、油断できないど!」
パルンガ、挑発するなって。
「俺達は、北に行く。ただそれだけだよ。それを邪魔しないんだろ?じゃあ、もう行くよ」
「テテ!」
「パルンガ、お前は早く成獣になれ!お前が望んでるのはそれだろ?目の前にいる相手は、ベルダイザーじゃないだろうが」
頼むよ、パルンガ。《冬枯れの牙》に目をつけられたら、お前だってこの先、長生きはできないぞ?俺は元の世界に戻ったら、こいつらとは関わらなくなるけど、お前は違うだろ?
「死を望むのなら、俺は一切の手加減などせず、お前達を瞬殺する事を約束しよう」
くそっ!こいつのスイッチも入っちまうじゃねぇか!?パルンガ、頼むから止めてくれよ!
俺の顔をじっと見つめても、俺の考えは変わらないぞ…。
「わかったど。テテ、オデ達は北へ向かうど」
俺の心が通じたのか?ようやく、わかってくれたか。よかった…。
「…ああ。そうだな、パルンガ。立派なゼドケフラーの成獣になるんだよな」
よし、早くこの場所から離れよう。《冬枯れの牙》の近くにいるだけで、生きた心地がしない。
「最後に、一つ質問をさせてもらおう。それに答えたら、北へ進むと良い…」
まだ何か用かよ!何の質問だ?答えられない質問なんか、たくさん持ってるぞ。
「その鎧に受けた刺突の穴の箇所は、正確無比で実に見事なのものだ。だが、お前はこの様に、俺の目の前にいて、息をしている」
「!?」
この鎧の穴が気になるのか?
「お前と対峙したその相手は、どうした…?」
何で、そんな事気にするんだ?あいつは、ラグリェは、生きて、何処かでまた殺しでもやってるんだろうよ。あんな奴の事、考えたくもねえ!
…。
そうか。
お前に感じた違和感は、これか?
この鎧の刺された穴を見て、これがどういう攻撃なのか、お前達《冬枯れの牙》にはわかるんだな?
もし、これがあのラグリェが言ってた剣術のコルト・カラングラシェ特有のものだとしたら?
もし、あのラグリェが目の前にいるガラリスよりも、実力が上だとしたら。
腐食レターの差し出された相手は、《冬枯れの牙》の誰もが殺さないといけない相手だとしても…。
命が惜しい…って事か?
この、今出された質問の答え次第じゃ、ガラリスはこの場で俺達を殺そうとするかも知れない。
何だ、みじめに命乞いして助かったのかと。名前も捨てて、助かった恥知らずな奴なのかと。恐るに足りないってさ。
そうだよ。俺は親につけてもらった名前、生きている証でもある名前を、生きたいから、生き続けたかったから、名前を否定して助かった、最低の弱虫野郎だよ。
でも。
俺も、パルンガも、やらなきゃいけない事がある。この場で終わる訳にはいかないんだ。
もしかしたら、俺に対する脅威ってのは、今後、増えるかも知れないけど、だけど、ここで死ぬ訳にはいかない。
今は進むしかないんだ。
「何言ってやがる…」
「答えは一つだろ?」
下がれ、ガラリス。今、お前に出番はねえ!
「もちろん、その相手は倒したよ」
そうだ、このまま北へ向かおう。元々、俺とパルンガは目的を持って北に向かっていたんだから。強制で行かされる訳じゃない。
だけど。
何だろうな、この違和感。
俺が《冬枯れの牙》に狙われてるのがわかったなら、なおさら見逃すのは、おかしい…。
最初は、俺達を殺す気で降りてきた様な気もするのに。
俺達がこのままさらに北に向かっているとわかって、絞首台に向かう様でおもしろくなって、様子を見ようという事になったのか?
俺達が死ぬって決まった訳でもないのにさ。
でも、理由なんて、どうでもいいな。
見逃してくれると言うのなら。
もう《冬枯れの牙》には関わりたくない。
もうあんな惨めな思いはしたくない。
…。
でも、本当に、ここから北に行くという事は、自殺行為に近いんだろうな。
「テテ?」
こいつは巻き添えにしちゃダメだ。《冬枯れの牙》は、多分、あのラグリェが俺に差し向けた泥人形の腐食レターとかのおかげで、矛先が俺に向いてる。あの猫女との戦いも、このパルンガには関係なかったのに、俺のために駆けつけさせて、危うく死ぬところだったんだ。《冬枯れの牙》なんて、なおさら勝てる訳がねえ。
「パルンガ、行こう…」
「賢明な判断だ。僅かながら、お前達の寿命は伸びたのだ。喜びを噛み締め、再び北へ向かうといい…」
「ガルルル…ッ!!」
パルンガ!?止めておけって!お前の負けん気だけは認めるけど、お前自体、大して強くはないだろ?《冬枯れの牙》相手に勝てる訳がないだろうが。
「…《冬枯れの牙》赤祭傀士の、このガラリスを相手に、対等に渡り合えると思うのか?お前達ゼドケフラーの幼獣が果たすべき血戦の相手は、ベルダイザーだろう。妖気を含む魔力を持った獣を食い続け、進化を遂げるゴロクベータ種らしく、な」
こいつはガラリスっていう名前か。《冬枯れの牙》の中でどのくらいの位置づけなのかわからないけど、強いのは間違い…。
「こいつみたいなのは、油断できないど!」
パルンガ、挑発するなって。
「俺達は、北に行く。ただそれだけだよ。それを邪魔しないんだろ?じゃあ、もう行くよ」
「テテ!」
「パルンガ、お前は早く成獣になれ!お前が望んでるのはそれだろ?目の前にいる相手は、ベルダイザーじゃないだろうが」
頼むよ、パルンガ。《冬枯れの牙》に目をつけられたら、お前だってこの先、長生きはできないぞ?俺は元の世界に戻ったら、こいつらとは関わらなくなるけど、お前は違うだろ?
「死を望むのなら、俺は一切の手加減などせず、お前達を瞬殺する事を約束しよう」
くそっ!こいつのスイッチも入っちまうじゃねぇか!?パルンガ、頼むから止めてくれよ!
俺の顔をじっと見つめても、俺の考えは変わらないぞ…。
「わかったど。テテ、オデ達は北へ向かうど」
俺の心が通じたのか?ようやく、わかってくれたか。よかった…。
「…ああ。そうだな、パルンガ。立派なゼドケフラーの成獣になるんだよな」
よし、早くこの場所から離れよう。《冬枯れの牙》の近くにいるだけで、生きた心地がしない。
「最後に、一つ質問をさせてもらおう。それに答えたら、北へ進むと良い…」
まだ何か用かよ!何の質問だ?答えられない質問なんか、たくさん持ってるぞ。
「その鎧に受けた刺突の穴の箇所は、正確無比で実に見事なのものだ。だが、お前はこの様に、俺の目の前にいて、息をしている」
「!?」
この鎧の穴が気になるのか?
「お前と対峙したその相手は、どうした…?」
何で、そんな事気にするんだ?あいつは、ラグリェは、生きて、何処かでまた殺しでもやってるんだろうよ。あんな奴の事、考えたくもねえ!
…。
そうか。
お前に感じた違和感は、これか?
この鎧の刺された穴を見て、これがどういう攻撃なのか、お前達《冬枯れの牙》にはわかるんだな?
もし、これがあのラグリェが言ってた剣術のコルト・カラングラシェ特有のものだとしたら?
もし、あのラグリェが目の前にいるガラリスよりも、実力が上だとしたら。
腐食レターの差し出された相手は、《冬枯れの牙》の誰もが殺さないといけない相手だとしても…。
命が惜しい…って事か?
この、今出された質問の答え次第じゃ、ガラリスはこの場で俺達を殺そうとするかも知れない。
何だ、みじめに命乞いして助かったのかと。名前も捨てて、助かった恥知らずな奴なのかと。恐るに足りないってさ。
そうだよ。俺は親につけてもらった名前、生きている証でもある名前を、生きたいから、生き続けたかったから、名前を否定して助かった、最低の弱虫野郎だよ。
でも。
俺も、パルンガも、やらなきゃいけない事がある。この場で終わる訳にはいかないんだ。
もしかしたら、俺に対する脅威ってのは、今後、増えるかも知れないけど、だけど、ここで死ぬ訳にはいかない。
今は進むしかないんだ。
「何言ってやがる…」
「答えは一つだろ?」
下がれ、ガラリス。今、お前に出番はねえ!
「もちろん、その相手は倒したよ」
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