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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その90

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この大陸に大して野獣なんかに出くわしてはいないけど、第2大陸のお話しライオンはかなり強かった。皮膚は異常に分厚くて衝撃をかんたんに吸収しちゃうし、俊敏さと力強さでガンガン圧してくる。

あれは、野獣じゃなくて、魔物とか言ってたから、またちょっと違うかも知れないけど。

瞬きするごとに目の色が変わって、恐かったよな。

パルンガは、目だけを見ると、獣の目をしているから、少しは警戒したくなるけど、全体的に見ると、長い耳がピンと上に立って、ぬいぐるみみたいにふさふさして、背もそんなに高くなく、歩き方が
不器用そうに見えて、愛嬌がある。

こいつを売って、金儲けをしよう。

そういう悪い考えの奴も、この世界にはいるんだろうな。

決して、俺が考えてる訳じゃあない。



「パルンガ、お前の住処って、この近くにあったりするのか?」



「住んでた場所の事なら、もうないど」



「あ、そう。捨てたのか?」



獣に住処なんてないのか?気の向くままに行動して、疲れたら、近くの木陰で休むとか。

ところで、こいつ、何か食ってんな。



「負けたら、何も残らないど。ただ、オデは命を守った。だから、今、テテと一緒にいるんだど」



誰かとの戦いに負けたのか。だから、住処を奪われたって事だろうな。そうだよな、別世界から来た俺に対してだけじゃなくて、元々この世界に住んでいた奴らで戦いはあったんだ。



「テテ、オデはもう一度、あの場所に戻りたいとは思わないんだど。オデの新しい場所は、オデが成獣になった時に、探せばいいんだど」



へぇ。意気込んで言ってやがるな。パルンガ。目に少しだけ狂気が宿った様に見えるのは、住処を奪った奴に対しての殺意からか?



やっぱり、愛嬌ある動物に見えても、本質は、獰猛な獣なのかもな。



「パルンガ、この大陸についてなんだけど、お前は、今の俺とみたいに、人と話したり、一緒に行動したりする事もあったのか?」



「オデは、この大陸の住人と話したり、してたど」



胸を叩いて誇らしげだが、その意味がわからない。まぁ、俺に話しかけてるくらいだ、もちろん慣れているよな。



「ゼドケフラーは、カッコよくて、強いんだど。手助けしてほしいって、お願いしてくるんだど」



お前にか?ウサギに似てるから、ニンジンをおいしそうに食べて下さいとかじゃないのか?

そうか、誇らしく胸を叩いた意味がわかった。

お前らゼドケフラーは、人より立場が上の状況で会話する事が多かったんだな?少なくとも、一緒にいた成獣したゼドケフラーは、人と話す時の上下関係は、そうだったんだな。

成獣したゼドケフラーは、強いって事か。

しかし、まるで自分の事の様に話しているが、ブタウサギ君よ、お前にベルダイザーを倒せるのかな?



「もぐもぐ…」



「お前、さっきから、何食べてるんだ?」



「木の皮だど。一緒に食べるど!」



「絶対に、いらねー!」



「ところで、村は?見つかったんだろ?」



「何もなかったど!」




「え!?何だ、勘違いか?」




まぁ、いいか。村があっても、敵意しか持ってない奴らばかりだったら、危険しかなくて、意味がないからな。



いや。でもあの猫女、確か、俺にもっと魔力があったら、あの方の持つ夢魔操エイジアで吸い取ってもらうとか、言ってたな。今、夢魔操を持ってるのは、どう考えても悪人だよな?だとしたら、悪い奴のいる場所へ行かないと見つからないって事だよな。



リスクばかり避けていても、夢魔操からは遠のくばかりだ。



第6大陸で、ギルロの体と魂を探すという作業よりは、夢魔操の方が、探すという意味では、現実的の様な気がする。


いや、そうでもないかな?



でも、この大陸で夢魔操が見つかれば、隣りの大陸まで行かなくてもいいし。



村が見つからなかったと、安心してる場合じゃねぇ。
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