上 下
150 / 441
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その83

しおりを挟む
俺の手から運が全て逃げていったかの様に、何も当たらなくなった。



まぐれパンチも、かすりもしねぇ。女の動きも、まるで読めなくなった。相手が動き回る速さを上げた?そうも思えない。ただ、俺の感覚が鈍った、それだけ。



また、女の余裕の笑い声が出てきた。人をバカにするのが好きな女だな。




黒い煙は、最初の時より、薄れてる様な気がする。多分、その煙の元がなくなってきてるのか、それとも、女の魔力とやらが減ってきてるからなのか、わからないけど。




変に冷静になってる俺に、死角から、突きや蹴りが飛んできやがる。俺は鎧を着てるけど、体の急所を突かれてるからなのか、妙に体に衝撃が重く残る。




これじゃ、鎧を着てる利点がないよな。外したら外したで、もっとダメージは大きいものなのか?




「急に弱くなったねぇ。どうした?やっぱり、首を折って、君の魔力をお金に替えようかにゃ。どうしよう…」





人の人生どん底に追い込んで、得た金でキャットフードでもたらふく食べんのかよ?クソ猫女が。





「…人を殺す事が、そんなにいいもんなのかよ。気狂い女…!」




星の明かりだけじゃ、やっぱり次元斬の境界線は見えない…。





大剣の大振りをしても、一向に当たる気がしない。





でも、何も攻撃をしないと、攻撃をただ躊躇うだけの俺がいるだけ。これじゃ、勝てる可能性は0%だ。ダメージも、攻撃をくらい過ぎて、たまってきてる。





俺にも、もう1人の俺みたいに、拳術があったなら、こいつに勝てる可能性はあったのかな?





あの《冬枯れの牙》ラグリェを、あそこまで復讐に駆り立てさせたんだから、相当な腕だったんだろうな。






でも、この世界に転生してから、すぐにその拳術が使えてたのかな?





俺みたいに何かのきっかけで拳術に出会って、少しずつ腕を上げていった?





俺との違いが、剣術か、拳術かの違いなだけだったら、単純に、俺に根気がないだけなのかもな。





この女、攻撃を死角から出すだけじゃなくて、攻撃を上下に打ち分けてる。少しの警戒は、俺にしてるんだろうな。運が向いている時に、倒し切るべきだった。






もう1人の俺に出会ってる奴で、俺の敵とならない奴に、もっと聞いておけば良かった。どうやって、もう1人の俺は、その強さを手に入れたのかを。片眼鏡の男が、もう1人の俺を知っていたんだから。






攻撃をもらい過ぎたか、膝が笑い始めた。立ってるのも、辛くなってきた。







この女は、《冬枯れの牙》ラグリェよりは強くない。それでも、俺よりは強いのは間違いない。特に、夜での戦いは、俺はまるでど素人だ。勝てる見込みなんて、最初からなかったのかも知れない。







「フフフ…!今日はあがりは、なしにゃあ!」






語気を強めて、攻撃してきた。俺を殺すと決めたんだな。体中に回っていたアドレナリンも、体に受けた傷の痛みの方が上回ってきやがった。もう、耐えられそうにない。






そんな時、俺に幸運が舞い降りてきた。






バキャッ!!







それは、遠くから高速で一直線、女に突っ込んできた。女は意表を衝かれ、横顔にまともに食らった。






女は吹っ飛ばされ、二転三転と転がり、痛みに顔を歪め、その箇所を手で押さえながら、ぶつかってきた対象を睨みつけてる。ざまぁみろ。バチが当たったんだ。
















「あぐ…っ!よ、よ、よくもぉぉ…っ!」








まだ生きていたんだな!










良かった…。









「テテ、まだ戦いは終わってないど!一緒に、こいつを倒すど!」








「パルンガ…!」







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~

ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。 そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。 30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。 カクヨムで先行投稿中 タイトル名が少し違います。 魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~ https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと
ファンタジー
アラサー社会人、時田時夫は会社からアパートに帰る途中、女子高生が聖女として召喚されるのに巻き込まれて異世界に来てしまった。 そして、女神の更なるミスで、聖女の力は時夫の方に付与された。 そんな事とは知らずに時夫を不要なものと追い出す王室と神殿。 そんな時夫を匿ってくれたのは女神の依代となる美人女神官ルミィであった。 帰りたいと願う時夫に女神がチート能力を授けてくれるというので、色々有耶無耶になりつつ時夫は異世界に残留することに。 活躍したいけど、目立ち過ぎるのは危険だし、でもカリスマとして持て囃されたいし、のんびりと過ごしたいけど、ゆくゆくは日本に帰らないといけない。でも、この世界の人たちと別れたく無い。そんな時夫の冒険譚。 ハッピーエンドの予定。 なろう、カクヨムでも掲載

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

逃げるが価値

maruko
恋愛
侯爵家の次女として生まれたが、両親の愛は全て姉に向いていた。 姉に来た最悪の縁談の生贄にされた私は前世を思い出し家出を決行。 逃げる事に価値を見い出した私は無事に逃げ切りたい! 自分の人生のために! ★長編に変更しました★ ※作者の妄想の産物です

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

処理中です...