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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その72

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恩人の俺が窮地の状態だ、パルンガ、は、早く来てくれよ。



メッセージは、何で書いてある?宙に浮いている電子枠は夜でも読めるくらいに、十分に光が灯っている。これ、相手にも見えてんのか…?だとしたら、マズイ…のか?ギギ…。





『ベルダイザー、探してくれてるのか?テテ、信用していいのか?』







何ぃ?パルンガの野郎、今はそれどころじゃねぇんだよ、バカ!く、苦しくて死にそうだっていうのによ…!お前の用件なんて、後回しだっ!!








「にゃははっ!おもしろいな、コレ。ベルダイザー探してるのかなぁ?」








…あ、やっぱり見えてんのか?他の奴に見えたら、あまり意味がない…んじゃないのか?





このメッセージに気を取られて、この女の首を折ろうとしてる動きが止まった。頭や首はガッチリ掴んでやがるから、逃れられそうにもないけど、でも、どうにか逃げられないものか…?






「君はこいつと仲がいいのか?ほらほら、返事してあげなよ。信用なんて、そんな言葉はもうこの世界にはないんだよって、教えてあげなよ…!」







女はうれしそうに少しはしゃいでいる様な感じで体を跳ねながら、声を弾ませる。俺は魔力を奪われた後、仕返しが恐いから殺されるんだろ?仲間が俺を助けに来るとか思わないのか?何がそんなに楽しいのかわからないけど、少しでも時間を延ばすためには、いいのかも知れない。幸い、俺からのメッセージは、俺の頭の中で思い浮かべる事で相手に送られる。この女には見られない。






「アルテリンコ・ブイ」






ベルダイザーらしい獣を見つけたと思ったら、黒い空気に邪魔された、残念ながら逃してしまったよ、今、その黒い空気に殺されそうだ、助けてくれ、と!






よし、これで完璧だ。すぐ俺の元へ来て、お前の発達した犬歯でこの俺の後ろにいるイカれ女を噛み殺してくれよ。






「送ったのか?相手にさぁ?」







「お、送った…」







「ふぅん?私は見れないのかなぁ。何て、送ったのかなぁ?」







俺の首元に女の息がかかる。首越しに睨まれてる様な気がするのは気のせいか?何がしたいんだ、この女は。





何て言った方が無難か?助けを求めたと言ったら、すぐに首を折って魔力を奪おうとするかも知れない。かと言って、全く見当違いの事を言っても、ウソだと見抜かれるだろうな。なんて言えばいいんだ?






ピロリン!







そうこうしてるうちに、パルンガから返答がきたぞ。さぁ、パルンガ、俺の臭いでも嗅ぎつけて、この場所まで助けに来い!






えーと。








…!?











『テテ、ベルダイザーを探してない。オデ、わかったど。テテは、オデの事、どうでもいいんだど』









このクソパルンガ!てめぇなんか、死んじまえ!お前は今、死にそうじゃねぇだろうが!俺は今、死にそうなんだよ!あの三つ目這い這いから、お前を助けてやった(?)だろうが!恩を仇で返しやがって!








「ニャハハハ!おもしろいよ、さすがだにゃ!よくわかってるよ、この世界の事をさぁ!」







性悪女め、楽しそうに笑ってやがる。くそっ。パルンガめ。何で、俺がベルダイザーを探してないって事がわかったんだ?確かに探してますってメッセージは一度も送ってないけど、密かに探してたとか思わないのか?本当に疑り深い奴だ。






「ベルダイザーは、人里離れたこの森のずっと北の奥側に行かないと、いないのにさぁ?捕えて、ご飯にでもするのかなぁ?獣臭が凄いから、おいしくはないかも知れないよぉ?フフフ…」







「ベルダイザーの方が、魔力が凄いんじゃないのか?何で、俺なんかを。ベルダイザーから魔力を取れよ…」









「ニャハハハ!あんな絶滅危惧種を探しても、採算が悪いんだよぅ。至る所にいる住人から取る方が、効率が良いんだよねぇ?残念でした…」







ベルダイザーは、絶滅危惧種…か。パルンガ、あいつ幼獣のままだと、もう体がもたないって言ってたかな…。あいつはあいつで、ベルダイザーを探すのに、必死だったんだな。







俺、自分の事ばかり、考えてたか…。











あいつも命がかかってる…。










「俺には、魔力があるのか…?」








「…多少はねぇ。この世界に生まれておいて、何でないと思ったんだにゃ?君は何か変わってるよ。くんくん…」










臭いを嗅ぐな。汗臭いだけだし、そんな臭いを女に嗅がれたくない。











「アルテリンコ・ブイ」












「にゃ?何かまた送るのかなぁ?何かまた嘘臭い言葉を送るんだねぇ。おもしろいな、君はいいよ。凄く、素敵だにゃぁ…」







パルンガ、ベルダイザーは、森のもっと北側だ、住人がいない様な場所だ…。








俺はお前と出会った。俺は少しお前に情が移ったんだ。ベルダイザーは絶滅危惧種だから、俺はそんなものを手にかけたくはない…。後は、この世界の食物連鎖なんかに従って、結果が出るだろうよ。






潔い最後って、俺の場合、どんなだろうな。






このまま、この女に黙って殺されて、それでいいのか?








でも、いいよな。








俺はこの世界で、自分の力で味方を作れなかった。与えられるものが、当たり前になっていたのかもな。






自分でたくさんの味方が作れるのが、この世界で会った奴らが認めた、高天魔こうてんま四大将の1人、炎真えんま大将、グレンベール・アルシオンなんだろ…?やっぱり、一度は会ってみたかったか…。








味方の誰にも看取られずに、死んでいくなんて。淋しいな…。








「返事がこないみたいだねぇ。じゃあ、もういいかなぁ?君の首を折って、手足を折って、魔力を抽出する場所まで連れて行くからねぇ?」








グギギ…。








「がぁっ…!はぁっ!」









「足掻くなと言ったのにぃ!より苦しむだけだにゃ!」









「がっ…。は…ぁ…」









ピロリン!









「はにやぁ?返事がきたのかにやぁ…」









…パルンガ!














『テテ、見つけたど。今、助けるど』






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