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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その66

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この森は、中々の樹海だな。






意外と、この森からかんたんに抜け出せない。そこまで草木が生い茂ってる訳じゃないのに。地面に大きく起伏がある訳じゃなく、歩くのに、そんなに苦でもないのに。風もこの森の中をうまく抜けていくから、もうすぐでこの森から抜け出せる、そう思えたけどな。








少しずつ、辺りが暗くなり出してきたぞ。今日は夜がやってくるのか。空に日が昇ってないから、よくわからない。何で暗くなり出してるのかも、仕組みがよくわからない。








今日は、この森で野宿か。シュティールもいないし、不安だな。








シュテイールが一緒だと、また別の不安もあるけど、あいつは俺を飽きさせないから。この世界に転生させられた絶望も、不思議と和らげてくれる。俺をイラつかせてくれるからな。








あいつ、俺を探してたりするのかな。あのボーグン族の腐った街からいなくなったから。





そこまでの存在じゃないか、俺も。それどころか、俺が死ぬところを見られなくて残念だ、とか思ってたりして。






そう言えば、何であいつは俺のために動いてくれるんだ?ただ暇だから、にしては妙に協力的なところがある。








俺が面白おかしく死んでいくところを見たいみたいな事も、最初に出会った時と、その後も言ってたよな。








この世界にいる時間が長くなるほど、その時に言ってたシュテイールの冗談みたいな言葉が、今冷静に考えると、前よりもさらに冗談に捉えられなくなってくる。





最初に、俺の事を異世界の人だとか、俺の住んでいた様な世界を知っているとか言ってたよな。







召喚獣として、俺の世界に呼ばれて、暗躍したとか言ってた様な…。







本当は、地球に愛着が出てきていた、とか。だから協力的なところもある?でも、何か、皮肉な事を言っていた様な気がするな。














素直に信じていいのか?








あいつを。









あいつを?












俺も単純だよな。










そう言えば、あの切り株街に高天魔四大将の、炎真えんま大将グレンベール・アルシオンがいたんだよな。






あの狂ってたうさ耳オヤジのキリングでさえ、正気の頃の記憶が強かったのか、グレンベールは他の奴らとは違って、みんなを裏切らず、うまくまとめられる様な事を言ってたよな。





シュテイールも、グレンベールは自分をあえて悪役にして、街の住人の心を一つにまとめた話とかを俺に言ってたよな。






何処までが本当かわからないけど、さ。









正直、会ってみたかった。








この世界がすげぇイヤになってきてる今だから、なおさらか。








でも、本性はとてつもなく恐い人だったりして。上辺だけの性格がみんなの信頼を集めてしまった、とか。








ギルロを探す手がかりにもなりそうだからな、いずれ会わないといけない人ではあったはず。






あの切り株街に、まだいるのかな?







あそこにいる以上、近寄れないな。まぁ、グレンベール自体に近づこうなんて気力も、今はないけど。









…ボーグン族なんて、俺が出会った種族の中で、最悪のゴミ種族だからな。









いつか、あの街ごと燃やしてやるよ。







俺は、死にかけたんだからな。










俺は忘れねぇよ。










人をはめやがって…。









裏切られるのなんか、別に初めての事じゃないけどさ。










俺、単純だからさ。










何度傷ついても、慣れないよな。









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