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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その64

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はぁ、はぁ…。




長く走ったな…。少し木の影で休むか。





はぁ…。








人が死んでるから、この場合は、誰に言ったらいいんだ?






誰に…。







そうだよな。








自分の身は、自分で守る様な世界だからな。俺は命を狙われて、自分を守るために戦った事もあったけど、その時、守り切れなければ、俺もああなるって事だよな。








でも、人間の死体は、見ていて、ちょっと…。









…人間。











お話しライオンも、うさ耳オヤジのキリングも、あと、カラスのマスクを被った《冬枯れの牙》ラグリェも、獣みたいな姿でいたけど、実際にいかにも人間って姿でいたとしたら、その姿した相手に、俺は戦えてたのかな。







化け物を倒すのと、人間を倒すのとじゃ、違う…。









でも、例え戦う事になっても、日本にいた時の俺の心とは少し違う様な気がするのは、この今の体が、この世界で生まれたものだからっていうのも関係していると思う。







獣が生まれながら獣の遺伝を引き継ぎ、自然と血肉を求める様に、俺の今のこの体も、この世界の遺伝を受けて、心血を注いで戦って相手を倒し、生き抜く様になっている気がする。






うさ耳オヤジのキリングは、半人半獣みたいになる前の人間の状態を、見てる訳だし、それでも戦えてたからな。








でも、キリングが半人半獣になってからは、人間とは思えてなかったのは事実だけど。






もし、仮にもし、日本に戻れたとしても、戦って生死を決める戦いは、味わいたくないな…。








どうせ、帰れはしない。そんな事を考える必要もないか…。







それに、今は、単純に逃げる事しか頭にないけどさ。







俺は、この世界に転生してきたとは言え、心はまだまだ日本人だから、武器を持ち歩く様な社会で育ってないし、それでいいんだ。








…。










俺は、矢倉郁人やぐらいくとという名前は名乗れなくても、日本人という事まで捨てるつもりはない。








日本人の誇り…?








大和魂か?そんな大層なもの、俺になんかないけどな。








じゃあ、なんだろうな。









自分の人種までも否定したくない?








きっと、そんなところなんだろうな。それは俺だけじゃない、どの人種も、そうなんだろうけど。











はぁ…。









ピロリン!










「わあ!!?」











ピロリン!じゃねぇんだよ、パルンガ君よぉ…。お前、メッセージ多過ぎだぜ。








どうせ、バナナの次は、パイナップルでも見つけて食べたとかいう話だろ?









…!?










「え…?」


















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