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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その63

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このまま、開けた道側に出るのも恐いな。また三つ目の高速這い這いに出会いたくはないしな。どれだけの得体の知れない生き物どもを、この世界が隠し持ってるのか、わからないからな。







そうだ。足元に落ちてる小石を、あのぐったりしてる奴に投げて、生存を確かめよう。







まさか、この小石の当たりどころが悪くて、止めを刺す事はないだろう。的に石を当てるのは得意だから、やってみるか。









ザクッ。











剣を地面に突き刺して、と。周りに誰もいないよな。よし、いなさそうだ。






さて、よく狙って…。







山なりに、頭を狙って投げよう。少し距離が離れてる気もするけど、でも当てられる自信は、ある。








それっ!







ヒュン…。











…。










コツッ。









命中したぞ。やっぱり、腕はなまっていなかった様だな。俺、野球選手にでもなった方が良かったか?でも、あんなストイックな練習ばかりして、頭は寺の坊さん並みに髪を剃ってまでやりたくはないよな。俺の中学だけか?いや、絶対に違う。Mっ気がある奴らがやるスポーツなんだよ、あれは。ま、それは高校までだろうけどな。プロ野球選手のみんなが髪剃ってないのは、明らかだし。







…しかし、動かないな。あの木にもたれてる人は。








あ!倒れた!










首に全く力が入っていないで、倒れたな。やっぱり、死んでるのか?でも、そう見せてるだけで、誰かが近寄るのを待っているのかも。







うーん。この森の中でそれをやる必要があるのかな。この近くに街があるのかも知れないから、全て否定はできないけど。







道に人が見えないなら、一気に向こう側の草木の茂ってる場所へ駆け抜けてから、背後からあの人の近くに寄って、確かめてみるか。









…。










よし、誰もいないな。









ザシュッ。










よーい。










どん。












ダダダダダダッ!!











ザッ、ザッ!










はぁ…。









はぁ…。












この鉄靴、走ると足にくるからな。今度、しもべに足だけスニーカーか何か、走りやすいものに替えてもらおうかな。








見た目のファッション性は、最悪だけどな。別に誰も足元なんて見てないだろうから、関係ないよな。








ザッ、ザッ。









さて、と。やっぱり、この人は生きていないかもな。倒れている姿勢を見ても、首の角度がおかしい。








「!?」









上着のシャツ、所々、白い部分が見える。頭から赤いペンキを被ったみたいに、液体が飛び散った様な模様になってる。






血の匂いだ…。







は、離れよう。こんな場所にいたら、俺まで死んじまう…!









…!











また遠くの場所で、誰かの悲鳴が聞こえた様な気がする。

 





この森で今、誰かが人を襲ってるのか?殺人鬼がいる!?








まさか…!?《冬枯れの牙》ラグリェか?あいつがいるのか!?








ダメだ、早く逃げないと!あんな奴、相手にしちゃいけない!命がいくつあっても足りないじゃないか!








俺は、名前を捨てたんだ。もう、俺は関係ない。もう、関わらないでくれ!俺は、もう誰でもないんだから。








はぁ…!








はぁ…!









ピロリン!










「わぁ!!」









パルンガの電子メッセージ!?あのブタウサギ!!いらねぇタイミングで送ってきやがって!









何だよ、一体!








『オデ、高い木の上側に、曲がった実がたくさんくっついてるもの見つけた!おいしかったど!』









グルメだな、お前。成獣になるために、ベルダイザー狩って、食うんだろ?バナナ食ってる場合じゃないだろうが。







どちらかと言うと、バナナは俺が食べたいな。








「アルテリンコ・ブイ」










えと、その実は何処にあるのか、教えてくれ。俺も、食べてみたい、と。










バナナは久しぶりだ。多分、バナナだよな?いや、久しぶりだな。1房全て平らげてやるよ。








ピロリン!







お、きたきた!











『高い木の上だど』









だから、その高い木とやらは何処にあるんだよ、って聞きたいんだよ!高木はこの辺、ほとんどなんだよ!バナナの木を教えてくれって言ってんのに!








くそっ!それどころじゃなかった!早くこの場所を離れないと!







ザッ、ザッ!









はぁ…、はぁ…!



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