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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その60

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「テテ、名前ないのか?」








「そうだよ。ないんだよ…」









「オデは名前、あるど」







良かったな、名前があって。何の自慢にもならないけどな。








「オデの名前、聞きたいか?」








鼻の穴広げて、興奮気味に聞いてくんなよ。聞きたいか?じゃなくて、言いたいだけだろ?








「オデ、パルンガって名前なんだど!」








わかったから、興奮気味に言ってくんなって。良かったな、名前もらって。ブタウサギ。








平衡感覚が戻ってきた。体を起こすか。








「よし…」








目を大きくして期待の眼差しだな、パルンガ。俺は、お前の飯探しなんか、してやらないからな。








「ベルダイザー、食べると、成獣…」








はぁ。うるせぇブタウサギだな。勝手に探して、何でも食えよ。どうせお前なんか、弱くてすぐに死んじまうよ。成獣になれなくても、問題はない。









「ベルダイザー…」








ベルダイザーに殺されちまえよ、お前なんか。もう、うんざりなんだよ。お前みたいな奴は。








無邪気そうに近寄って、どのタイミングで俺を陥れるつもりなんだよ。もう、この世界の奴らの常套手段には引っかからねぇぞ。お前のその口にある牙で、俺を噛み殺す隙を狙ってんのか?度胸がねぇから、隙を狙ってんだろ…。








俺の大剣…は。









何だ、何処いった?くそっ。











ガサガサ…。











「ベルダイザー、探してるのか?」











虎だろ!?こんな気の抜けた状態で気軽に虎探せる訳ねぇだろうが。まさか、地面の草の中で眠ってる訳じゃねぇだろうな。






あ、あった。草の中に紛れてやがった。









「ベルダイザー…」








この大剣がベルダイザーに見えんのか?じゃあ、食えよ。しっかり噛めよ。口の中、血だらけになるまで。







何だコイツ、両手が少し震えてねぇか?怒りで震えているというより、何かが足りなくて震えてるって感じかな。お腹が空いたのか?








「成獣にならないと、この体は幼獣だから、もうもたない。オデ、死んじゃうんだど」






じゃあ、願ったり、叶ったりだ。俺にとっては都合がいいんだよ。安心して、死んでくれよ。







「オデ…」








悲しんだフリしても、その手にはのらねぇぞ!?その手の震えだって、演技なんだろ?









「…消えろ!目障りなんだよ。醜い姿しやがって…」










「オデの事?」









くそっ。俺の手も震えてんな。大剣の握りが手に馴染めねぇ。《冬枯れの牙》ラグリェとの戦いで、完全に自信なくしちまった。コイツを倒す事も、できねぇんだ。








…やられる前に、やった方がいい。









何とかして殺してやるよ、テメェをよ。










「オデ、醜い?」










当たり前だろう。そんな醜いウサギなんて、見た事ねぇもんな。いや、あったかも知れないけど…。いや、ないな!








「オデ、成獣になったら、カッコいいど。きっと、カッコいいど。ベルダイザー、一緒に探して?」









「うるせぇな!?俺に殺されたくないんなら、親の元でも帰れよ!?目障りなんだよ!!」









フン!俺は、お前より弱くねぇ。だから、俺をかんたんに殺せると思うなよ。みくびるんじゃねぇよ。









「親…?オデはあまり見た事ないど。兄弟はいたけど、もう死んだど」










「何ぃ…?」









そう言えばいいと思ってんのか?じゃあ、次はお前の番だという事だな。お前がベルダイザーを食うって言ってんだ、別の生き物がお前の種類の動物を食うって言って、探していてもおかしくはねぇだろう。何の不思議もない、自然の摂理ってやつだ。






「…ほら、俺から離れろよ。向こう行けよ!」









ボーグン族にでも、頼ったらどうだ?ハハハ、どうせ裏切られて、殺されて、晩ご飯のおかずにでもなるだけだろうけどな。









「オデ…」









オデじゃねぇんだよ!イラつく生き物だぜ。







「恐かったど。弱そうだったけど、魔力あったから。ベルダイザーかも知れなくて、がんばったけど」









あの赤ちゃんもどきの化け物の事か?俺はあの高速這い這いが恐かったけどな。もう二度と出会いたくはない生き物だな。何か偉そうな事言ってたし。実際に、強いんだろうな。







「気づかせてくれた。オデ、あのまま行ってたら、どうなってたかわからないど」








何、目を輝かせてんだよ。俺は、お前を助けようとしたんじゃなくて、あの赤ちゃんもどきを助けようとしてたんだよ。







「わかった、感謝されてやるよ。でも、もう行ってくれ。お前とは関わりたくないんだよ」








ブタウサギ、しゅんとしたフリすんなよ。見苦しい奴だな。







俺も、他人の事言えないか…。命乞いなんて、情けないよな。








ようやく、ブタウサギ、離れてくれたぜ。世の中弱肉強食なんだよ。お前も生き残りたければ、そのベルダイザーって虎を探して、倒して食えよ。








俺も何だか、お腹空いたな。木の実でも探すか…。









お前、成獣になったら何て獣になるのかわからないけど、どうせもっと醜いウサギになるだけなんだろ?そのままでいいんじゃないか?多分、そのままでも死なねぇんだろ。










高速這い這いに出会わない様に、道の方に出ないで、草木の茂った方を突き進むか。出会ったら、気持ち悪いしな。









ザッ、ザッ。









ザッ…。







「アルテリンコ・ブイ…」









あの青い透けた電子枠が出てこないけど、頭の中で言葉を要求されている感じがする。あいつを思い浮かべて、言葉を選べばいいのか?










死ねよ、バーカ。って、送ってやろうか。










あいつ、頭悪そうな奴だよな。











まぁいいや。












ベルダイザー、見つけたら、教えてやるよ、と。









じゃあな、パルンガ。がんばって、生き残れよ。


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