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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その54
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「私の事を嫌いにでもなりましたか…?」
「それでも、構いませんよ」
「ところで、貴方の倒れていた場所に、この剣が落ちてましたが、所有者は貴方なんでしょうね。…不思議な事ですが」
剣…。これは、しもべがくれた剣だ。俺がこの世界で戦える様に。そのうち、俺に合った剣に変わるとか言ってた。切り株街の女戦士が、剣の鋼材が特殊とか言ってたけど、重いだけじゃなくて、意外と貴重なものか…。
「幾重もの封印がされている…。私の解析魔法も跳ね返すほどの封印」
封印がされている…?そんなものは、知らない。
「パラグロンタリー鋼の剣が珍しいという事もありますが、私が気になるのは、そこではありません…」
もしかして、しもべは、本当に俺に期待してたのか?俺を殺して、この世界に転生させて、ギルロの体と魂を探してほしいって…、本当に俺が、それができると思っていた?この剣には、何かギミックがある。だから、この剣の形状が後々、俺に合ったものに変わるって、言ったのか?
俺を転生させたのは、ギルロの体と魂を探してほしいだけじゃないって、言ってたよな?
何か秘密がある。しもべは、前に、今は第4大陸にいるって言ってた。なら、この第2大陸には、もういない?旅の支度をしたあのしもべとの部屋は、この第2大陸じゃなくて、別の空間に繋がっていた?だから、一度あの街に戻ってしもべに会おうとしても、会えなかったんだ。
第4大陸まで行ける気がしない…。そこで話をしようって、言ってたよな。そこにたどり着くまで、ギルロの体と魂を探してほしいとも言ってた。
無理だ。
もう、俺に何も期待しないでくれ…。
今、俺は生きてるのだけで、奇跡なんだ。この世界で何かをやれるなんて思えない。
「貴方、もしかして、リョウマ族ですか…?」
リョウマ族?
「…何か違いそうな反応をして見せましたね。まぁ、私にとって、どうでも良い事。答えなくて結構ですよ」
俺…。死にたくなくて。死ぬのが、とても恐くて。俺の人生には、まだずっと、先があると思っていたから。
今は、何も見えない…。
俺の街、近潮町に帰れない。戻りたくても、戻れないんだよ…。この世界で人目につかないところで生きるのが精一杯…。そして、寿命がきて…。
死ぬんだ…。
「そうそう、貴方を救った者の1人は癒しの神フレージアですが、彼女はやはり相当な闇を抱えていた。狂気に満ちた行為をして、その結果、貴方を救ったもう1人の方が、今、この場にいられなくなったのです。だけど、必ずこの場所に戻ってくるので、しばらくその湯に浸かったまま、私とお待ちなさい」
フレージア…?湧き水の欠片を持っているフレージア?神…。
神が、暗殺者の方を持った?ラグリェの様な、心を持たない悪魔の…。
「最後に、一つだけ聞きましょう。…貴方、この辺りで何をしていたのですか?このゴフルオーターは、《冬枯れの牙》などの得体の知れない者共が散見され、今は危険な場所です。腕に自信がないのなら、この場所を通る事は避けるべきだったのに…」
ブル…ッ。
ラグリェ…。
「…《冬枯れの牙》にやられたのですか?何か因縁を持った様ですね。彼らは執念深い…。貴方の今の力量では、恐らく…」
…やられる。
「貴方にも仲間と呼べる者がいるのなら、共に立ち向かうしか手はないでしょうね。貴方が誰の下についているか、私に教える事はないのでしょうけど。せめて、あの方には命を救われたのですから、礼ぐらい言ってから、立ち去って下さいね」
あの方って、誰の事だよ…?また、強い奴と出会って、そして、俺を油断させて、利用して、最後に結局、殺そうとするんだろ?冗談じゃない…!もう、誰とも会いたくねぇんだよ…!
「…傷が癒えたのですか?あの瀕死の状態からもう?確かにフレージアの癒しの効果は絶大な様ですね。まぁ、それは貴方の体の驚異的な回復力があっての事でもありますが。まだ、湯から出ようとしない方が良いでしょう」
「俺の事なんか、ほっといてくれ…!」
ザバァッ!
「ホホホ…。救ってくれた方に礼を言わず、この場から去ろうとするのですか?それもまた、貴方の人生…。私は構いませんよ、それが貴方の宿命なのでしょうから」
ザクッ!
「これは貴方の剣でしょう?さぁ、この剣を地面から抜きなさい」
「俺なんか、気にしないでくれ…!」
「そうですか。では、この剣を抜きなさい…」
剣がないと、身を守れない…。やっぱり、俺は死ぬのを恐れている。剣がないと、生きていけない。
「貴方を救おうと、フレージアの元へ運んだ方は、フレージアが封印したはずの癒しの魔法を使うかわりに、彼女からとても不愉快なものを貰いましてね…」
「憤怒の神フューリーのナイフを刺された彼は、怒りに駆られた魔物共を寄せ続ける。ナイフが満足して解放してれるまで戦い続けなければならなくなったのですよ。だから、この場を離れたのです」
「俺には、か、関係ないだろ…」
「ええ。相変わらず、その様な発言を続けていますね。ただ、あの方が命を懸けて貴方を救ったのに、それを蔑ろにする行為を目の当たりにして、見過ごすほど、私も甘くはありませんよ」
「…え?」
「フホホ!…あの方には、貴方は助からなかった、そう伝えておきましょう。さぁ、剣を地面から抜いて、そして構えなさい」
「…元々あのまま死んでいたはずの存在なのですよ、貴方は」
「私が、引導を渡して差し上げましょう…」
「それでも、構いませんよ」
「ところで、貴方の倒れていた場所に、この剣が落ちてましたが、所有者は貴方なんでしょうね。…不思議な事ですが」
剣…。これは、しもべがくれた剣だ。俺がこの世界で戦える様に。そのうち、俺に合った剣に変わるとか言ってた。切り株街の女戦士が、剣の鋼材が特殊とか言ってたけど、重いだけじゃなくて、意外と貴重なものか…。
「幾重もの封印がされている…。私の解析魔法も跳ね返すほどの封印」
封印がされている…?そんなものは、知らない。
「パラグロンタリー鋼の剣が珍しいという事もありますが、私が気になるのは、そこではありません…」
もしかして、しもべは、本当に俺に期待してたのか?俺を殺して、この世界に転生させて、ギルロの体と魂を探してほしいって…、本当に俺が、それができると思っていた?この剣には、何かギミックがある。だから、この剣の形状が後々、俺に合ったものに変わるって、言ったのか?
俺を転生させたのは、ギルロの体と魂を探してほしいだけじゃないって、言ってたよな?
何か秘密がある。しもべは、前に、今は第4大陸にいるって言ってた。なら、この第2大陸には、もういない?旅の支度をしたあのしもべとの部屋は、この第2大陸じゃなくて、別の空間に繋がっていた?だから、一度あの街に戻ってしもべに会おうとしても、会えなかったんだ。
第4大陸まで行ける気がしない…。そこで話をしようって、言ってたよな。そこにたどり着くまで、ギルロの体と魂を探してほしいとも言ってた。
無理だ。
もう、俺に何も期待しないでくれ…。
今、俺は生きてるのだけで、奇跡なんだ。この世界で何かをやれるなんて思えない。
「貴方、もしかして、リョウマ族ですか…?」
リョウマ族?
「…何か違いそうな反応をして見せましたね。まぁ、私にとって、どうでも良い事。答えなくて結構ですよ」
俺…。死にたくなくて。死ぬのが、とても恐くて。俺の人生には、まだずっと、先があると思っていたから。
今は、何も見えない…。
俺の街、近潮町に帰れない。戻りたくても、戻れないんだよ…。この世界で人目につかないところで生きるのが精一杯…。そして、寿命がきて…。
死ぬんだ…。
「そうそう、貴方を救った者の1人は癒しの神フレージアですが、彼女はやはり相当な闇を抱えていた。狂気に満ちた行為をして、その結果、貴方を救ったもう1人の方が、今、この場にいられなくなったのです。だけど、必ずこの場所に戻ってくるので、しばらくその湯に浸かったまま、私とお待ちなさい」
フレージア…?湧き水の欠片を持っているフレージア?神…。
神が、暗殺者の方を持った?ラグリェの様な、心を持たない悪魔の…。
「最後に、一つだけ聞きましょう。…貴方、この辺りで何をしていたのですか?このゴフルオーターは、《冬枯れの牙》などの得体の知れない者共が散見され、今は危険な場所です。腕に自信がないのなら、この場所を通る事は避けるべきだったのに…」
ブル…ッ。
ラグリェ…。
「…《冬枯れの牙》にやられたのですか?何か因縁を持った様ですね。彼らは執念深い…。貴方の今の力量では、恐らく…」
…やられる。
「貴方にも仲間と呼べる者がいるのなら、共に立ち向かうしか手はないでしょうね。貴方が誰の下についているか、私に教える事はないのでしょうけど。せめて、あの方には命を救われたのですから、礼ぐらい言ってから、立ち去って下さいね」
あの方って、誰の事だよ…?また、強い奴と出会って、そして、俺を油断させて、利用して、最後に結局、殺そうとするんだろ?冗談じゃない…!もう、誰とも会いたくねぇんだよ…!
「…傷が癒えたのですか?あの瀕死の状態からもう?確かにフレージアの癒しの効果は絶大な様ですね。まぁ、それは貴方の体の驚異的な回復力があっての事でもありますが。まだ、湯から出ようとしない方が良いでしょう」
「俺の事なんか、ほっといてくれ…!」
ザバァッ!
「ホホホ…。救ってくれた方に礼を言わず、この場から去ろうとするのですか?それもまた、貴方の人生…。私は構いませんよ、それが貴方の宿命なのでしょうから」
ザクッ!
「これは貴方の剣でしょう?さぁ、この剣を地面から抜きなさい」
「俺なんか、気にしないでくれ…!」
「そうですか。では、この剣を抜きなさい…」
剣がないと、身を守れない…。やっぱり、俺は死ぬのを恐れている。剣がないと、生きていけない。
「貴方を救おうと、フレージアの元へ運んだ方は、フレージアが封印したはずの癒しの魔法を使うかわりに、彼女からとても不愉快なものを貰いましてね…」
「憤怒の神フューリーのナイフを刺された彼は、怒りに駆られた魔物共を寄せ続ける。ナイフが満足して解放してれるまで戦い続けなければならなくなったのですよ。だから、この場を離れたのです」
「俺には、か、関係ないだろ…」
「ええ。相変わらず、その様な発言を続けていますね。ただ、あの方が命を懸けて貴方を救ったのに、それを蔑ろにする行為を目の当たりにして、見過ごすほど、私も甘くはありませんよ」
「…え?」
「フホホ!…あの方には、貴方は助からなかった、そう伝えておきましょう。さぁ、剣を地面から抜いて、そして構えなさい」
「…元々あのまま死んでいたはずの存在なのですよ、貴方は」
「私が、引導を渡して差し上げましょう…」
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