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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その36

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「…ほう。炎を手に宿したは良いが、お前自身が痛がっている様に見えるが…。それもまた、作戦と、捉えるべきか」











ばーか…ッ!マジで火傷やけどした様な痛みなんだよ…!くそっ、炎がどんどん膨れ上がっている様な気がする。今度は、すごい力が手に入るどころか、あまりの火の大きさに全焼して焼け死ぬなんて事は、ないよな?












い…痛ぇ…!火傷で、手の甲の皮膚が持ってかれる様な痛みだ…。こんな、こんな痛みだったか?











は、早く…!














そうだよ、一点の青い炎が出て、赤い炎で燃えている手の甲に何かを描く様に動き回って…。











ふぅ…!少しずつ、火傷の痛みが消えていく…。











ふぅ…!












ふうぅっ…!












「ククク…。その炎を私に向けて放つつもりか?魔法を使える様にもなったという事か?いや、元々、使えていた…。そうなのか?矢倉郁人やぐらいくとよ。何処まで私を小馬鹿にするつもりなのだ…」











赤い炎と青い炎が混ざって、紫色の炎ができ上がる…。そうだ、今まで通りだ。この後、手の甲から、腕に炎が這い上がってくるんだよな…?







よし、手から、腕に紫色の炎が這い上がってきたぞ。もう、炎の火傷の痛みはほとんど感じねぇ…。












腕に吸い込まれていった…。












よし!














また、俺に新たな力を…。












目の前のカラス野郎と森の景色が薄れて、 消えていく。











…。

















…。

















景色が…。
















何処だ、ここは。何だ、何が起こった?





















何処までも真っ白な…空間が続く。











何も…ないのか?誰も、いないのか?











おーい!













誰かー!












何も、ない…?












しばらく待つしかない…のか?













…。












…おい。













本当に、誰もいないのか?














…。













ああ、そうかよ。




















俺に力を貸してくれる奴なんて、いない…。そう言いたいのか?













次元斬を扱う霧蔵きりぞうみたいな力強く俊敏、勇ましい男はいないのか?





















おーい!いい加減、誰か、返事をしてくれよ!













このままじゃ俺、カラス野郎に殺されちまう!











あの炎は、俺に特別な力を与えてくれるんじゃないのかよ。
















じゃあ、何のために、俺の手に炎が現れたんだ。

















なぁ!?














なぁ!















…え?















誰か、俺に何か気持ちを伝えたか?















言葉じゃない…。














心に直接、伝えようとした。













誰か、いる…。












気配は、感じたんだ。
















どうした…?
















…。














!?















何でだよ…。
















何でそう思えるんだよ?













…くそっ!














まだ、何にも見てねぇのに!何でそう思えるんだよ!














…。














…逃げてと、俺に伝えたきたのか?















強そうで、俊敏で飛べる様な暗殺者みたいな奴から、どうやって逃げるんだよ?
















次元斬も、全く当たりはしねぇ、のによ!











せっかく、手に炎が現れたんだぜ?













…期待しちゃ、悪いのかよ。














…。












今の俺じゃ、体得ができない…とか、伝えてきたよな?















逃げろ…か。

















できたら、そうしてるよ…。














…。














声が、聞こえた…?













甲高い声…?でも、落ち着いた声だな。













目の前のカラス野郎を倒すには、そう呼ばれる剣技が必要なんだな?















それ以外は、ダメなのか?













ダメ…じゃないけど、難しい…のか?














そう言えば、このカラス野郎と初めて会った時、そんな事を言ってたな。















神風閃かみかぜひらめきの剣がどうとか。













そうか、こいつはその剣技を持つ奴を恐がってるのか?













その剣技に、未だ対抗できていないんだな?















逃げるための、力は貸せる…って言ったのか?














そうか…。














俺は、失格って事なんだな?














…別に、いいさ。















そんなもんなんだよ、俺は。元々。




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