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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その32

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「…ただ、この森に迷い込んでしまった、それとも、この森を目指して来たと、思っているのでしょう?」









「え…?だ、誰だ?」










何言ってんだ?適当言えば当たると思って、何か言ってきてるな。俺の興味を引いたところで、何もあげるものなんて、ないぞ。










しかし、何処で俺に声かけてんだ?見回しても、それらしい奴なんて、何処にもいないぞ?










「貴方は答えを出さなければならないのね。悲しいけれど、仕方がない事なのよ…」










「何が…。答えだって?」












何か問題でも出されるのか?算数なら、何とかいけるかも知れないな。国語も、多分、日本人だし、いけるだろ?日本史はダメだ。みなもとの何とかとか、たくさん続いた様な奴らは、ほとんど覚えてねぇからな。











悲しい…って言ったか?











憐れんでくれるなんて、優しいな。













そうだよ、俺はこの世界で一番、かわいそうなんだよ。ギルロの体と魂探してほしいとかで、飲んでたオレンジジュースに殺人微生物入れられて、俺は殺されて、転生させられて、こんな暑っ苦しい鎧着せられて、無理矢理、旅に出させるんだもんな!選ぶんなら、もっとスピリチュアルに長けた奴でも選べってんだよ!俺はハズレなんだよ、ハズレ!!












「この道沿いに、さらに進んでいくと、やがて道を挟む様に岩が2つ、置かれているわ。それを通り過ぎたら、また同じ様に、2つの岩があるのよ」











その岩に、迷子にならない様に、何か刻めとでもいう事か?だったら、さっきから、ブサイクシュティールって、書き続けているから、安心しろよ。










「その岩を通り過ぎて、また次の岩に辿り着いたら、左側を見て。そうしたら、きっとお話ができるわ」














「え?誰と…話ができるんだ?」












「…貴方の思っている事を伝えるといいわ。それから、決断されると思うの」












ふぅん…。思ってる事…ねぇ。それはスッキリするだろうな。その話し相手が、非常に物わかりがよければいいけどな。










あ!わかった。













そいつが、湧き水の欠片かけらをくれる、フレージアなんだろ?










そこで、湧き水の欠片をくれって、言えばいいだけなんだな。ははは…。簡単な事だったな。何か、あの切り株街にすぐ戻れる様な気がしてきたぞ。湧き水の欠片を持ち帰って、カフクマに、さらに感謝されて、また何か作ってくれんのかな?じゃあ、久々にPCゲームでもやりたいから、それを作ってもらおうか!いや、もらおうか、だな!










「…また、ここまで戻ってきたなら、その時は、今度は私が、貴方にお話があります。まずは、この道の先にいる住人と、お話をしてみてね」











「ああ!そうさせてもらうよ」


  








しかし、何処から話しかけてんだ?やっぱり、近くから話し声が聞こえるんだよな。まさか、この温泉の中の女の像が話しかけてる訳でもないだろうしな。












この道の続きを歩くとするか。











…。












あの女の声を聞くと、安らぎを感じて、つい信じてしまいたくなるけど。












罠だったりして。












気のせい?












しかし、姿が見えなかったな。












よく考えると、実に不気味だ。












かと言って、他に誰かが俺にヒントをくれる訳もないしな。












ん?












フレージアの居場所を聞けばよかったかな?この先にいるのがフレージアじゃなければ、いく必要もないだろうしな。











戻る…か。













…。












姿は見えないけど、この温泉に向かって話しかけるか。













「あのー。もしもーし!」













「…」












「聞きたい事があるんだけどさ、いいかな?」











「…?」















チッ!何処行きやがった…?くそ…。まぁ、あんまりあてにしても仕方がないか。











…。












待っても、ムダか。















とりあえず、進むかな。行けば、誰かいそうだし、そいつがフレージアじゃなければ、そいつにフレージアの居場所を聞けばいいだけだからな。












わずかに上り坂になってんのかな。少し、歩きづらいか?まぁ、このくらいなら、いいや。












…。













…。












あ、岩が2つ見えてきたぞ。










あれか。












…。












これだよな、あの女の声が言ってた岩2つって。











何も不思議な事はない、ただの岩だな。俺の身長くらいの高さがある岩だ。











ブサイクシュティール、と。












よし、刻んでおいたぞ。










…。













バサバサ…。













うっ!?














何か嫌な音がしたな。














ただの鳥か?羽ばたく音がしなかったか?












鳥にしては、羽ばたく音が大きかった様な。












大きな鳥でも通ったかな?













そう思いたいけど。















くそ…。嫌な予感がしてきやがる。











気のせい、気のせい。















少しだけ、早歩きしようかな。













ほっ、ほっ!















ほっ、ほっ!















はぁ…、はぁ…。















普通に歩くか。













ふぅ…。












あ、次の岩2つが見えてきたぞ。

















…。
















これもまた、何の不思議もない、ただの岩だよな。












…。












次の岩の場所を、左に向いて、話をしろとか言ってたかな?














…。













バサバサッ…!















くっ…。












カフクマ、お前は俺の事、恩人だと思ってるんだよな?










俺は、矢倉郁人やぐらいくと、わかってんだろうな。恩を仇で返すなよ?もう1人の俺も、俺自身も、元は同じ。裏切ったりは、するんじゃないぞ?










フグイッシュも、俺が東の方に行って、フレージアから湧き水の欠片かけらをもらいに行ってほしいと言われてた時、止めはしなかったよな?









フグイッシュ、お前は優しい女だよな?










裏切ったり、陥れたり、しないよな?











フグイッシュ…!













…。













ほら、あったぞ?















岩2つだ。













少しの上り坂ぎが、平坦な道に変わっていくぞ。










歩きやすくなってきたかな。













岩2つの左…。














左に、黒塗りの柵があるな。











隙間がないから、中がよく見えないぞ。













ドクン…。















ドクン…。















ドクン…。















誰だ?誰がいる?













答えを出さなければならない?














思ってる事を言って、何を決断されるって?













あの温泉女の声、何を言いたかったんだ?












俺は…。













俺は、何を…。
















岩だ。













岩…2つ…。
















この左側に、何が。
















何が…あ…

















あ…。
















あ?

















う…。















うう…。















ウソ…
















ウソだ…。
















ううう…。

















「ウソ…だ」
















ううう………。













「想定したよりも早い運命の再会となった様だな。そうだろう?ククク…」




















「な、何でだ?どうして…?」

















「ボーグン族はお前に疑念を抱き、そして我々に審判を託したのだよ、矢倉郁人やぐらいくと…」
















そんな!?










ううう…。









何でだよ…!?











どうして!?













「お前が本物の矢倉郁人だとしたら、答えを出すのは簡単だろう?」













「何…?」















「以前、私を退けたお前だ。その腕を披露し、再び私を退けたなら、お前を本物の矢倉郁人だと認め、それをボーグン族に伝えてやってもいい」












「お、俺はッ!矢倉郁人だ!」 
















 「ククク…。いいぞ」













「この細身剣のガルトデフブリンガーが奏でる惨殺剣術コルト・カラングラシェ、お前なら、いとも簡単にかわし、反撃する事もできよう…」











「ククク…」













「ククク…!」












うう…。最悪の相手だ。どうして…!?




















「ククク…。カァッ!カァッ!この《冬枯れの牙》ラグリェに、証明して見せろ!今度こそ、真の力をだ!」
















「矢倉…郁人オォォ!!」




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