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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その31

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森の中は涼しいな。









果物かな?独特な匂いがするな。果物を焦がした様な。食べれそうなら、食べてみたいな。見回しても、それらしいものは見当たらないんだけど。でも、近くにありそうな気もする。








今のところ、森の中で猛獣とか、目に入ってこないし、怪しげな物音とかも聞こえてこないから、とりあえず、すぐに襲われる危険はなさそうかな。大丈夫だよな。森の中、地面に起伏が激しくないから、歩くのは楽だから、そこは救われたかな。折れた枝とか、枯れ葉が至るところに散らばってるのが少し歩きづらくしてるけど、まぁ、仕方がないか。森の中、掃除する人もいないだろうからな。









迷子にならない様に、目の前の岩に剣で傷をつけておこう。











ブサイクシュティール…と。











よし、特にキレイに書かなくてもいいだろう。











奴の心と同じでいいだろ。











何か、この森、何か人の行き来がある様な気がするな。地面を見渡すと、何度も踏まれて、草がハゲて、土が剥き出しになってる場所があるな。…地面が平らで、固くなってる。動物だと、地面を蹴ったりして、こうは平らにならない様な気がするしな。人だろ、やっぱり。








何となく、道みたいになってる。









あ、木の枝の切った後が、刃物で切られた様な跡がある。人が行き来してる証拠だな。










この森で生活してる奴がいたら、迷っても安心かな。









いや、この世界の奴らは、心が壊れてる奴が多いからな。逆にいない方がマシな気もする。湧き水の欠片かけらをくれるとかいうフレージアは、いて欲しいけどな。もし本当にいてくれたら、大事な物をくれるんだから、普通で考えてもいい奴だよな。









いや、普通が、普通じゃないから、わからないか。










でも、切り株街にいたボーグン族は、いい奴が多かったよな。何か、普通に会話ができた様な気がする。







この世界も、いい奴はいるんだよ。多分。









あまり失望する事もないのかも知れないな。










何となく、フレージアもこの森にいて、湧き水の欠片も笑顔でくれるんじゃないのか?









カフクマって奴も、俺との久しぶりの再会で、内気になってたから、機械兵を遠隔操作して、俺に会いにきた可能性もあるよな。心の中じゃ、ひ、久しぶりだね、とか、緊張していたりして。








…いや、それはそれで、気持ち悪いか。俺に惚れ…。いや、考えるのは止めよう。












風が心地いいな。変に木や草が密集し過ぎてないから、外からの風がほとんどそのまま吹いてくるから、気持ちいいんだ。









ここ、ゴフルオーターなのかな。何か確信がほしいよな。ゴフルオーターが森だなんて、カフクマは言ってないから、不安だな。もしかしたら、違うのかも知れないよな。










この森が違ったら、もっと東に行かなきゃなんなくなるのかな。やだなー、それ。面倒臭いな。









俺、別に湧き水の欠片なんて、必要でもなんでもないしな。ギルロの体か、魂なら、探しているものだし、行けと言われても、悪くはないけどさ。










今後、あの切り株街が、俺の活動する拠点みたいになるかも知れないしな。少しは信じて、進んでみるしかないよな。フレージアが湧き水の欠片くれるのが本当であってほしいよ。









俺を追い出すための、適当な理由だとしたら、もちろん、もう二度とあの切り株街に行く事はないけどな。











でも。









 
フグイッシュは、優しかったな。かわいいし。ああいう奴が、もっとたくさんいれば、この世界も、悪くはないよな。









あ、道が二手に分かれている。間に大きな丸い石があるから、この石に印をつけておくか。










迷わない様に。












ブサイクシュティール、と。












ザッ…!











うっ!












誰だ!?













誰かが、俺を見ていたな。右の道の、あの少し離れた木の影辺りから。










服装が黒かった様な気がしたけど、どうだろうな。木の影、少し薄暗い場所だから、勝手にそう思っているだけなのかも。一瞬の事だったから、本当は何色なのかもわからないな。







まぁ、何色だろうと、知った事じゃないけどな。俺が、お前は黒を着ろ、そしてお前は、白だ、とか言う権限ないからな。









大剣を少し意識して持っておくべきか。俺に襲いかかってきたら、迷わず振ってやる。まだ完全じゃないけど、次元斬も使えなくはない。もう、しもべの所から出発したばかりの、戦い未経験の俺じゃないんだ。少しは戦える…と思っている。











じゃあ、二手に分かれた道の…。












左に行くか?












右は、怪しい奴がいたからな。回避だ。










…。











少し、走るか。












はぁはぁ…。













はぁはぁ…。












…。












よし、もういいだろう。これは完全に巻いたな。いや、道なりにまっすぐ走ってきただけだ。巻ける訳がない。でも、後ろに誰も俺を追ってきてる姿はないからな。距離は離したか。









でも、あんまり奥行くのも恐いな。早く、普通そうな奴が出てきてくれないかな。ここはゴフルオーターなのか、聞きたい。












あ!












何か、今、この先の道の脇に、白い煙が見えた様な気がしたぞ。











何か生活感のあるゆるっとした煙が見えた。










特にいい匂いがする訳でもないから、料理してるんじゃないのかも知れないけど。










何か、少し暑いな。











あ、水の音…。











岩に囲まれてるけど、これは。











温泉かな?












温泉の真ん中に、長い髪の女が壺を両手に、右肩に乗せている石像がある。










その壺から、温泉が出てるんだ。









人が20人は浸かれるくらいの広さがあるな。誰も入ってないや。











あ、丁度いい温かさだ。入りたいな。汗掻いてるし。でも、近くに猛獣とかいて、襲われたら死ぬだろうな。









ここは我慢しないといけないか。











近くに家もないから、この辺りに誰か住んでる訳でもないのかな。もったいないな、この温泉。










じゃあ、飲むだけならいいかな?喉が渇いてるし。透き通った温泉だ、いけるだろう。










いや、ムダに死にたくはないから、止めておいた方がいいのかも。










でも、少しだけなら…。












いいか。











…。












ゴクッ。












おお!













うまい!










少しだけ、甘い気がするぞ。













しかし、暑いな。 












温泉飲んだからっていうのも、あるのかもな。












いや、大前提、温泉が目の前にあるせいでもあるな。











暑い…。











ここから離れよう。










この温泉の近くにい過ぎると、暑くて、余計に汗を掻く。この着ている鎧、通気性はよくないから、一旦、中に熱がたまると、中々抜けてくれないんだよな。










…。










何だ?














誰か何か言ったか?











気のせいか…?












まさか、さっきの黒い奴か?











うーん。













…。













女の声だ。














俺に何か言ってる様な気がするな。











…。


















声の感じ、悪い気はしないな…。
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