上 下
88 / 441
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その23

しおりを挟む
岩の家々を抜けて、網のフェンスみたいな門を抜けると、木造の建物が点在する場所に出た。





「…ここか?」






「そうだよ、この建物の中に、イクトの部屋があるんだよ」








あの岩の家が建っていた様な場所から、この場所を指差す必要があったか?距離、結構あったぞ。確かに、岩の家々の隙間から、この場所は見えたのかも知れないけど、普通は案内しねぇ。暗殺者がライフル銃のスコープ越しに、隣りにいる同僚に、あれがお前の部屋だ、ぐらいは言うかも知れないけどな。










いや、言わねぇよ。











しかし、この木造の建物、吹き抜けの窓はついてるな。風通しは良さそうだ。木目がついて、壁が歪んでる感じが、木の表面を貼りつけましたみたいな印象があるけど。大丈夫か?崩れたりしないだろうな。







「ほら、遠慮しないで、入ってよ!」









この正面の入り口そうな場所から入るんだろうな。目の前が木の壁で行き止まりだから、左右の通路を進んで…。






あれ?今、カチッて音がした様な気がしたけど、気のせいかな?俺の足の下、何か踏んでないかな。








「フグイッシュ、俺、今何か踏んでないかな?」








「スイッチを踏んだんだよ」








スイッチ?ああ、あのスイッチ。オン、オフできるスイッチね。ただ、何のスイッチを踏んだのか、気になるところだけどな。







「フグイッシュ、何のスイッチを踏んだのかな?」








「…あれだよぅ」









何だ、あれって?当たり前の事みたいだけど、一応、記憶がないと伝えているんだから、普通は、何のスイッチくらい、教えてくれてもいいんじゃないかな。







「あれって?」









「教えたら、全て思い出すのに、時間がかかっちゃうじゃん!よく考えて、自分で思い出して?」








ああ…、そう。少し足が痺れてきた様な気がするんだけど、じゃあ、考えてみるよ。







考える?








何を?









足を離したら、地雷が作動して足が吹っ飛ぶとか、ないよな。









「足を離してもいい?」











「踏んだ以上、足を離しちゃ、ダメだよ」









え…?そうなの?









家に、設置しているもの。この大陸を修復する大事な役割を果たしているボーグン族、見張りの機械兵はいたる場所にいて、警戒態勢の街か…。











じゃあ、やっぱり地雷だな。











足が…!足がつる…!










「…むっ!フグにゃんに任せるのだ…!」










よし、頼んだ!早くしないと、足がつるんだ!









「どうやったら、この危機を回避できるか、ヒントをあげるよ」










ヒント?ああ、あのヒントね。答えがわかる様に、少し教えてくれる訳だ。オイ!










答えを言えよ!











記憶を取り戻せる様に、俺に積極的に感じろという事を言いたいんだろうけど、その代償に足が吹き飛ぶんじゃ、その考えはサイコというものだよ、トラフグちゃん。









状況を的確に判断して、言ってくれたまえ。








「思い出せないかー。もう、足離していいよ」









ああ、そう?じゃあ、離すよ。










「…?何もないじゃないか」












「それぞれの住居に、いくつかのスイッチがあるんだよ。監視装置マーガーなんだけど、それが働いて、監視塔にいる仲間達が、監視措置が起動した住居に不審者がいないか、遠隔で確認が入るんだ」









「俺は、大丈夫だった訳だな?」









「あいつかよ、何やってんだ、イクト!って思われたよ、きっと」









どうかな?フグイッシュが一緒にいながら、何やってんだよ、トラフグめが、さばいて料理として提供するぞ、とか思われてるんじゃないか?サイ子ちゃんよ。








「さあ、イクトの部屋は何処だ?探そう、探そう!」









確実に、次の監視措置のスイッチ踏むから、よろしく。避けられないなら、探して踏む気で歩くぞ。その方が、ストレスがなくて済む。










あ、言ってる側から、踏んじゃったよ。まぁいいや。監視でも何でもしてくれよ。









「あ、離しちゃったよ…」










え?監視だろ?別にい…











「…ッてぇーーーー!!」










え!?何?すごく痛い何かが、体中を駆け回った様な気がするんだけど!?









「遠隔の電撃だよ。何度も踏むなって事だね」









何ぃ…?遠隔の電撃?いるか、そんなの。クソ監視員めが、俺だって確認できてるんなら、その電撃とやらは必要ないよなぁ?敵じゃないんだし、ただ仕事増やしやがってとかか?仕事を怠けてやってる日頃の心構えがなってない、自分を戒めろよな、カスが!









「大丈夫?イクト」










「大丈夫じゃないよ、結構、痛かったぞ。2回目で遠隔の電撃なら、3回目は何をされるんだよ!?」










「氷漬け…かな?」











…何で、氷漬けにされなきゃなんないんだよ!ボーグン族から見たら、俺は恩人なんだろ?その恩人が、自分の部屋のある家を、何処にあるかもわかりづれー警報装置をいちいち気にしながら歩かなきゃならないんだよ!ああ、ストレス!遠隔で俺を監視して、仕事増やされた逆恨みで氷漬けか!?辞めちまえ、そんな仕事はよ!合ってねぇんだよ、バカ監視員!










「あ!そこ、警報装置!」










「ぁにぃ!?」











ズルッ!









あ…滑っ…









グキッ!!









「ぐぁあ!足が!?」










ドガァンッ!!












ぐぁぁあ!!壁に激しく頭打った!!痛え!痛えよ!









「あ、それも、警報装置だよ!」










「へ?」











「…」











「イクト…?」











「…」










「それが、遠隔の氷漬けだよ」










し、心臓が止まるっ!さ、寒い!ささ、寒…い!!







さ、ささ…









「お湯かけて溶かしてあげるから、待っててよ!」










え…!?魔法あるんじゃないの!?魔法でしょ??電とか、氷とか、攻撃だけなの?治せないの??








待ってられない!さ…、ささ…寒…!










ばしゃぁぁ…ぁ。











「さ、寒いぃぃ。あ、あれ?氷が、水になった…??」










フグイッシュは、人差し指を振って、あれだあれだ、と言葉が喉に詰まってるのを、何とか吐き出そうとしてる。








「大目にみてもらったんだよ!」









へえ…?あっそ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません) ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。 苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。 錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。 グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。 上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。 広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。

異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。

山いい奈
ファンタジー
このお話は、異世界に転移してしまった料理人の青年と、錬金術師仔カピバラのほのぼのスローライフです。 主人公浅葱のお料理で村人を喜ばせ、優しく癒します。 職場の人間関係に悩み、社にお参りに行った料理人の天田浅葱。 パワーをもらおうと御神木に触れた途端、ブラックアウトする。 気付いたら見知らぬ部屋で寝かされていた。 そこは異世界だったのだ。 その家に住まうのは、錬金術師の女性師匠と仔カピバラ弟子。 弟子は独立しようとしており、とある事情で浅葱と一緒に暮らす事になる。

復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸
ファンタジー
強さが求められる一族に産まれた主人公は、その源となる魔力が無いがゆえに過酷な扱いを受けてきた。 12才になる直前、主人公は実の父によってある人間に身柄を受け渡される。 その者は、主人公の魔力無しという特殊なところに興味を持った、ある施設の人間だった。 連れて行かれた先は、人を人として扱うことのないマッドサイエンティストが集まる研究施設で、あらゆる生物を使った実験を行っていた。 主人公も度重なる人体実験によって、人としての原型がなくなるまで使い潰された。 実験によって、とうとう肉体に限界が来た主人公は、使い物にならなくなったと理由でゴミを捨てるように処理場へと放られる。 醜い姿で動くこともままならない主人公は、このような姿にされたことに憤怒し、何としても生き残ることを誓う。 全ては研究所や、一族への復讐を行うために……。 ※カクヨム、ノベルバ、小説家になろうにも投稿しています。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました

猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
【書籍化決定しました!】 11月中旬刊行予定です。 これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです ありがとうございます。 【あらすじ】 精霊の加護なくして魔法は使えない。 私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。 加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。 王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。 まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。

捨てられた第四王女は母国には戻らない

風見ゆうみ
恋愛
フラル王国には一人の王子と四人の王女がいた。第四王女は王家にとって災厄か幸運のどちらかだと古くから伝えられていた。 災厄とみなされた第四王女のミーリルは、七歳の時に国境近くの森の中で置き去りにされてしまう。 何とか隣国にたどり着き、警備兵によって保護されたミーリルは、彼女の境遇を気の毒に思ったジャルヌ辺境伯家に、ミリルとして迎え入れられる。 そんな中、ミーリルを捨てた王家には不幸なことばかり起こるようになる。ミーリルが幸運をもたらす娘だったと気づいた王家は、秘密裏にミーリルを捜し始めるが見つけることはできなかった。 それから八年後、フラル王国の第三王女がジャルヌ辺境伯家の嫡男のリディアスに、ミーリルの婚約者である公爵令息が第三王女に恋をする。 リディアスに大事にされているミーリルを憎く思った第三王女は、実の妹とは知らずにミーリルに接触しようとするのだが……。

★★★★★★六つ星ユニークスキル【ダウジング】は伝説級~雑魚だと追放されたので、もふもふ白虎と自由気ままなスローライフ~

いぬがみとうま
ファンタジー
■あらすじ 主人公ライカは、この国始まって以来、史上初の六つ星ユニークスキル『ダウジング』を授かる。しかし、使い方がわからずに、西の地を治める大貴族である、ホワイトス公爵家を追放されてしまう。 森で魔獣に襲われている猫を助けた主人公。実は、この猫はこの地を守護する伝説の四聖獣『白虎』であった。 この白虎にダウジングの使い方を教わり、自由気ままなスローライフを求めてる。しかし、待ち構えていたのは、度重なり降りかかる災難。それは、ライカがダウジングで無双していく日々の始まりであった。

処理中です...