85 / 399
第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その20
しおりを挟む
筋肉剥き出しの石像が左右に並べられた階段を上っているんだけど。
ずっと上っていく先に、黒い鉄の門が見える。それと門番か。
俺、通させてもらえるよな?
フグが上の階にいるとか、気軽に言われたけど。また何かを試されるなんて事はないよな。筋肉の石像をやたら並べてるけど、上腕二頭筋を1秒間に30回隆起させよ、とかならないよな。
「何でフグを釣る事になったんだい?」
はっ!
よし、周りを見渡しても、近くに人はいないな。ひたすら人をバカにし続けると、後でどんな仕打ちがくるかわからないからな。そのフグが素晴らしい人格者で、尊敬されている人物だったら、俺の人格が疑われる。せっかく、この街じゃ、俺、恩人らしいからな。
「武器預ける場所で、フグイッシュが呼んでたから行ってほしいって言われたら、行くしかないだろ?」
「へえ?そうなんだ。じゃあ、先ほどの住人に、今預けてもらった武器を売って利益にしたいんだけど、持ち主の君が邪魔に感じるから、今すぐ死んでほしいと言われたら、君は、死ぬんだね?」
頭悪ぃーな!お前。この初めての街で少しくらいのお願いを聞いてあげれば、友好的な関係が築けるだろうが。誰が死んで?とか言われて、死ぬバカがいるんだよ。あんまりくだらない事言ってると、お前の眉毛剃って、そのふざけたつけ髭に足してやるぞ!
「まぁいいよ。フグが食べられるなら、来た甲斐があるというものだよ、ねぇ??イクト君」
止めろ、同類に思われる。
「…ギルロの場所がわかると、いいけどねぇ?イクト君」
エルヴァ・ガインシュタットがこの街に帰ってきてるならな。上の階層の《祈祷の像》の所にいるフグイッシュに合ったら、何となくを装って聞いてみるか。
別に興味ないんだけど、エルヴァ・ガインシュタットいる?とか。
怪し過ぎるな…。
すごく興味あるんだけど、エルヴァ・ガインシュタットいる?とか。
いや、言い方を変えただけで、怪しさの度合いが変わってないな。
言伝を頼まれているんだけど、エルヴァ・ガインシュタットはいるかな?とか。
誰から頼まれたの?とか聞かれたら、隣りにいる闇からの使者、シュティールが、ギルロ様からに決まってんだろ、とか言いそうだからな。そしたら、俺が石化するから、フグイッシュには、《祈祷の像》の次に、俺に祈ってもらおうか。俺に心の平穏が訪れます様にと。
階段を上っていくと、鉄の柵みたいな門がはっきりと見えてきたぞ。所々にハートマークみたいな装飾が見えるが、気のせいだよな。
門の前に、筋肉質の男2人の門番が立っている。眉間にしわが寄ってる。
「…イクト君が心底憎いのさ。だから、あの門番は、君をあんな目で見ているんだよ。僕は、あんなに憎悪という池に浸かりきった悪魔にも劣る目を、未だ見た事がないよ。よほど憎いんだろうね、イクト君…。君がさぁ」
今、悪魔(=シュティール)に囁かれてるのは、俺だけどな。あの門番、お前が言うほど睨んでないしな。俺達が近づいてるから、少し警戒してるだけだよ。
何と言っても、俺はこの街に住む奴らにとって、恩人様らしいからな。
ははは、いや、俺も偉くなったもんだなぁ。
もう1人の俺のおかげだなぁ、ははは。
門番の1人が眉間にしわ寄せたまま、俺に近づいてきたぞ。
その眉間に寄せたしわというしわを解き放て、安心していいぞ。俺は、恩人の…
矢倉郁人、だからな。
「…貴様、イクトだな!よくも俺の前に顔を出せたものだな…?」
いやぁ、そうでもないさ…。
へ?
い、今、何て言ったの?
「今度は、負けない…。お前になんかな?」
おい、待てよ。俺は何もやった覚えがないぞ。何か、勘違いしてないか?俺は、ボーグン族の恩人なはずだろ?
「…」
「わかってんのか、矢倉!お前がした事は、人間として最低な事なんだよ!謝れ!今すぐ、吉澤に謝れ!」
あ、あれ?
何だよ、またか。
頭ついていかねーな。こう何度も、見える世界が変わると、さ。
何か眩暈がしてきた…。
はぁ。
ええっ…と。
ここは、何処だ?
…そうか。
間違いない。
俺の学校の廊下だ。地面のタイルに文化祭で使って、そのまま剥がされてない色テープが残ってる。ここ、俺の中学の時の学校だな。
床が汚ねぇな。
でも、懐かしい…。
「おい、聞いてんのか!?」
こいつ、顔が真四角で無精髭の、桜井って先生だな。
クソ以下のゴミ野郎だ。
「吉澤に謝れ!吉澤が、泣いているだろうが!」
…?
ああ、思い出してきたぞ。
そのしゃがんで顔を両手で隠してる女生徒、実は今、笑ってるの、知ってました?ねぇ、先生。
放課後に、他人の机の、入れっぱなしの教科書に、全員からの嫌われ者とか、落書きしてたんだぜ、こいつ。
誰に対しても優しくて、少し抜けてるけど、いつもニコニコしてる中山って女に、嫉妬してさ。
放課後に、俺が忘れ物を取りに教室に戻った時にそれを見かけて、落書きを注意したら、自分の教科書に誹謗中傷の言葉を書いて、それを単細胞の体育教師の桜井に伝えやがった。
そうだ、思い出したぞ。
俺、このクソ桜井に殴られたんだった。
女だから?
よく確認もしないで、男の俺を悪者扱いしたか?
そうだよな、大人のお前らだって、何もわかってないんだよ。
悪い奴を庇って、悪くない奴を、悪く言って。
お前みたいなのが先生やってるのが、おかしいんだよ。
こいつ、俺がイジメをやってるって、親に報告するって、言いやがったんだよな。
今、謝れば、事を大きくしないって。
お前の目は、何のためについている?
先生の目は、ただ、物を見るためだけについてんのか?
学校の中にいる物事に目を光らせておけ、よ。
生徒が嘘言ってんのか、真実を言ってんのか、見抜く目を持っておけよ。
「吉澤…」
中学の、当時の気持ちになってきた。
また、俺は言うんだろうな。
言わないと、大変な事になる…。
「吉澤…」
母さんを、違う事で悲しませる訳にはいかない。
今は、タイミングとして、最悪だ。
今、一番傷ついているのは、母さんだから。
俺の、こんなくだらない事で、悲しませる訳には、いかないから。
「吉澤…、ごめん…な」
これで満足か?吉澤…。
エゴを通して、満足かよ?
過ちを正さないで、過ちを隠して、そのまま生きていくんだよな。
決して。
決して、変わるな。
変わらないで、大人になって。
地獄を見ろ。
バキッ!!
「…痛ぇ…なぁぁ!!」
「…イクト君!」
あ、また戻ってきた。けど、筋肉質の番人にいきなり殴られた。
どうなってんだよ。
過去の記憶の中に、何で行っちゃうんだよ。
走馬灯とか?そんな訳ないよな。
まさか、俺、死ぬ間際じゃないよな。
あれ?どうしてか、その番人が倒れてるな。
痛ぇ…。
段々と痛みが膨らんできたな。
頬が痺れてる気がする。
心当たりがないのに、殴られるのは納得いかないな。
「…イクト君。剣なしでも、戦えそうだね?」
剣なしでも?今、足掻きでもして、偶然か何かでこの番人倒したのか、俺。
「さすがですね、イクトさんは。コブロムを二度もあしらうとは。その拳術、感服致します」
もう1人の番人が、俺に気遣って近寄ってきた。
拳術?そう見えたのか、俺は。偶然とはいえ、そう見えたのなら、仕方がない。
イクト拳とでも、言っておこうか。
「フグイッシュ?《祈祷の像》の前にいましたが、カイインの祈りは終わってるはずですが、まだいるのかどうか…」
何だ、いないかも知れないのか。トラフグ君は
「伝えないといけない事があるとか、言ってた様な…」
何だ、門番にも、俺が来たら呼べとか、言ってたのか?伝えないといけない事って、何だよ?すごい気になってきたな。
「さぁ、この門を通って下さい、イクトさん」
はぁ。
最初から、スッと通らせてくれよな。スッとさ。
「行こう、イクイク!」
誰がイクイクだ!!
ずっと上っていく先に、黒い鉄の門が見える。それと門番か。
俺、通させてもらえるよな?
フグが上の階にいるとか、気軽に言われたけど。また何かを試されるなんて事はないよな。筋肉の石像をやたら並べてるけど、上腕二頭筋を1秒間に30回隆起させよ、とかならないよな。
「何でフグを釣る事になったんだい?」
はっ!
よし、周りを見渡しても、近くに人はいないな。ひたすら人をバカにし続けると、後でどんな仕打ちがくるかわからないからな。そのフグが素晴らしい人格者で、尊敬されている人物だったら、俺の人格が疑われる。せっかく、この街じゃ、俺、恩人らしいからな。
「武器預ける場所で、フグイッシュが呼んでたから行ってほしいって言われたら、行くしかないだろ?」
「へえ?そうなんだ。じゃあ、先ほどの住人に、今預けてもらった武器を売って利益にしたいんだけど、持ち主の君が邪魔に感じるから、今すぐ死んでほしいと言われたら、君は、死ぬんだね?」
頭悪ぃーな!お前。この初めての街で少しくらいのお願いを聞いてあげれば、友好的な関係が築けるだろうが。誰が死んで?とか言われて、死ぬバカがいるんだよ。あんまりくだらない事言ってると、お前の眉毛剃って、そのふざけたつけ髭に足してやるぞ!
「まぁいいよ。フグが食べられるなら、来た甲斐があるというものだよ、ねぇ??イクト君」
止めろ、同類に思われる。
「…ギルロの場所がわかると、いいけどねぇ?イクト君」
エルヴァ・ガインシュタットがこの街に帰ってきてるならな。上の階層の《祈祷の像》の所にいるフグイッシュに合ったら、何となくを装って聞いてみるか。
別に興味ないんだけど、エルヴァ・ガインシュタットいる?とか。
怪し過ぎるな…。
すごく興味あるんだけど、エルヴァ・ガインシュタットいる?とか。
いや、言い方を変えただけで、怪しさの度合いが変わってないな。
言伝を頼まれているんだけど、エルヴァ・ガインシュタットはいるかな?とか。
誰から頼まれたの?とか聞かれたら、隣りにいる闇からの使者、シュティールが、ギルロ様からに決まってんだろ、とか言いそうだからな。そしたら、俺が石化するから、フグイッシュには、《祈祷の像》の次に、俺に祈ってもらおうか。俺に心の平穏が訪れます様にと。
階段を上っていくと、鉄の柵みたいな門がはっきりと見えてきたぞ。所々にハートマークみたいな装飾が見えるが、気のせいだよな。
門の前に、筋肉質の男2人の門番が立っている。眉間にしわが寄ってる。
「…イクト君が心底憎いのさ。だから、あの門番は、君をあんな目で見ているんだよ。僕は、あんなに憎悪という池に浸かりきった悪魔にも劣る目を、未だ見た事がないよ。よほど憎いんだろうね、イクト君…。君がさぁ」
今、悪魔(=シュティール)に囁かれてるのは、俺だけどな。あの門番、お前が言うほど睨んでないしな。俺達が近づいてるから、少し警戒してるだけだよ。
何と言っても、俺はこの街に住む奴らにとって、恩人様らしいからな。
ははは、いや、俺も偉くなったもんだなぁ。
もう1人の俺のおかげだなぁ、ははは。
門番の1人が眉間にしわ寄せたまま、俺に近づいてきたぞ。
その眉間に寄せたしわというしわを解き放て、安心していいぞ。俺は、恩人の…
矢倉郁人、だからな。
「…貴様、イクトだな!よくも俺の前に顔を出せたものだな…?」
いやぁ、そうでもないさ…。
へ?
い、今、何て言ったの?
「今度は、負けない…。お前になんかな?」
おい、待てよ。俺は何もやった覚えがないぞ。何か、勘違いしてないか?俺は、ボーグン族の恩人なはずだろ?
「…」
「わかってんのか、矢倉!お前がした事は、人間として最低な事なんだよ!謝れ!今すぐ、吉澤に謝れ!」
あ、あれ?
何だよ、またか。
頭ついていかねーな。こう何度も、見える世界が変わると、さ。
何か眩暈がしてきた…。
はぁ。
ええっ…と。
ここは、何処だ?
…そうか。
間違いない。
俺の学校の廊下だ。地面のタイルに文化祭で使って、そのまま剥がされてない色テープが残ってる。ここ、俺の中学の時の学校だな。
床が汚ねぇな。
でも、懐かしい…。
「おい、聞いてんのか!?」
こいつ、顔が真四角で無精髭の、桜井って先生だな。
クソ以下のゴミ野郎だ。
「吉澤に謝れ!吉澤が、泣いているだろうが!」
…?
ああ、思い出してきたぞ。
そのしゃがんで顔を両手で隠してる女生徒、実は今、笑ってるの、知ってました?ねぇ、先生。
放課後に、他人の机の、入れっぱなしの教科書に、全員からの嫌われ者とか、落書きしてたんだぜ、こいつ。
誰に対しても優しくて、少し抜けてるけど、いつもニコニコしてる中山って女に、嫉妬してさ。
放課後に、俺が忘れ物を取りに教室に戻った時にそれを見かけて、落書きを注意したら、自分の教科書に誹謗中傷の言葉を書いて、それを単細胞の体育教師の桜井に伝えやがった。
そうだ、思い出したぞ。
俺、このクソ桜井に殴られたんだった。
女だから?
よく確認もしないで、男の俺を悪者扱いしたか?
そうだよな、大人のお前らだって、何もわかってないんだよ。
悪い奴を庇って、悪くない奴を、悪く言って。
お前みたいなのが先生やってるのが、おかしいんだよ。
こいつ、俺がイジメをやってるって、親に報告するって、言いやがったんだよな。
今、謝れば、事を大きくしないって。
お前の目は、何のためについている?
先生の目は、ただ、物を見るためだけについてんのか?
学校の中にいる物事に目を光らせておけ、よ。
生徒が嘘言ってんのか、真実を言ってんのか、見抜く目を持っておけよ。
「吉澤…」
中学の、当時の気持ちになってきた。
また、俺は言うんだろうな。
言わないと、大変な事になる…。
「吉澤…」
母さんを、違う事で悲しませる訳にはいかない。
今は、タイミングとして、最悪だ。
今、一番傷ついているのは、母さんだから。
俺の、こんなくだらない事で、悲しませる訳には、いかないから。
「吉澤…、ごめん…な」
これで満足か?吉澤…。
エゴを通して、満足かよ?
過ちを正さないで、過ちを隠して、そのまま生きていくんだよな。
決して。
決して、変わるな。
変わらないで、大人になって。
地獄を見ろ。
バキッ!!
「…痛ぇ…なぁぁ!!」
「…イクト君!」
あ、また戻ってきた。けど、筋肉質の番人にいきなり殴られた。
どうなってんだよ。
過去の記憶の中に、何で行っちゃうんだよ。
走馬灯とか?そんな訳ないよな。
まさか、俺、死ぬ間際じゃないよな。
あれ?どうしてか、その番人が倒れてるな。
痛ぇ…。
段々と痛みが膨らんできたな。
頬が痺れてる気がする。
心当たりがないのに、殴られるのは納得いかないな。
「…イクト君。剣なしでも、戦えそうだね?」
剣なしでも?今、足掻きでもして、偶然か何かでこの番人倒したのか、俺。
「さすがですね、イクトさんは。コブロムを二度もあしらうとは。その拳術、感服致します」
もう1人の番人が、俺に気遣って近寄ってきた。
拳術?そう見えたのか、俺は。偶然とはいえ、そう見えたのなら、仕方がない。
イクト拳とでも、言っておこうか。
「フグイッシュ?《祈祷の像》の前にいましたが、カイインの祈りは終わってるはずですが、まだいるのかどうか…」
何だ、いないかも知れないのか。トラフグ君は
「伝えないといけない事があるとか、言ってた様な…」
何だ、門番にも、俺が来たら呼べとか、言ってたのか?伝えないといけない事って、何だよ?すごい気になってきたな。
「さぁ、この門を通って下さい、イクトさん」
はぁ。
最初から、スッと通らせてくれよな。スッとさ。
「行こう、イクイク!」
誰がイクイクだ!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる