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第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い
その19
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すごいおいしいよ、これ。
ハハハ。
ありがとう、これ、おいしいよ。
「どうしたの?イクト君」
「え、いや別に。何か、聞こえた様な気がしたからさ」
「特に何も聞こえない様な。ボーグン族が、広場で何か話し合ってるくらいだろうね」
広場…か。外から見たら、切り株だけど、中に入ると、黄色い岩壁に囲まれた大きな街という感じだな。いまいち、何処が広場かはわからないけど。
ボーグン族…。
この大陸修復に貢献した民族の、住む街か。
ゴツゴツしていて、とてもきれいな形の家とは呼べない様な岩の家がたくさんあるな。ボーグン族が住んでるんだろうけど、窓もないし、息苦しそうだ。室内の酸素は足りてるか?家の戸は、石にも見えるけど、多分、鉄だな。完全密閉…。
街の真ん中に、大きな山みたいなものがあるけど、あそこの中から、何かを打ちつけたり、削ったりする音が聞こえてくる。何か作ってんのかな。後で行ってみるか。
岩の家の外に、鉄で作った様な木や花、人がある。家とは違って、芸術品だな。
家よりも、庭が重要なんです派だったりして。
ボーグン族の手先が器用なのは、間違いなさそうだな。
「うおっ…!?」
あー、びっくりした。
強化戦士が街を歩いて警護している。やっぱり、この世界の住人だから、争う事もあるんだろうな。民族が同じでも、関係ないとか。
あー、こんにちは、こんにちは。
って口に出しては言わない。俺は、心で言う派だ。なので、相手に伝わらない。いわゆる、無愛想な奴、という事だな、俺は。
ボーグン族の服装って、あれスカートじゃないよな。
男も女も、下は膝下までのヒラヒラのものを履いてる。上は、皮の鎧みたいなものを着てるな。俺を見てニコニコ笑ってるから、結構友好的な民族なのかも知れないな。
「イクト君、僕の今つけているメガネは、電子バイザーになっていて、この街のある程度の情報はもう入手済みなのさ」
「…何で、そんなもん持ってんだ?お前、この街の常連か?」
「初めてだよぅ…」
そんな訳ないよな。教えても良さそうなところからいきなり隠したり、ごまかしたりしてくるから、より信用がないんだよな。別に、普通に言えばいいだろうが。前にも来た事があって、その時にこの街の情報を入力した犯罪メガネを作ったんだ、すごいだろ、ケケケとか笑えばいいじゃないか。クソ召喚獣君。
「あそこの階段を上って、奥に行くと、武器を預ける場所があるから、まずは君の大剣を預けないとね」
大剣か。確かに、街の中で歩く住人達に武器を持ってる奴はいないな。それは仕方がないな。
「君がこの街に来た事があるなら、そのまま大剣を持っていてもいいのかも知れないけどね」
「いや、ない」
「…君も嘘がうまいね。目が本当の事を言っているみたいだよ」
それは、実際に本当の事を言っているから、俺がそういう目になっているんだろう。
歩くと、何か足首が重く感じるな。
わかったぞ、地面が鉄だからだな。足が痛まない様に、その上に偽物っぽい芝が歩きそうな場所に敷いてある。大陸の修復に貢献したという事だけど、また崩れた場合に、この街ごと飛んで逃げられる様にとか、そんな装置を作ってんだろ。じゃないと、地面を鉄で作ったりしないだろうからな。
「意外と階段まで長いな…」
「階段まで…」
「ふぅ…」
「よう、郁人!フレンクバーガー近くのゲーセン潰れたらしいぞ」
「…え??」
「どうした?何驚いてんだよ」
学校の校門を抜けて、校舎までの一本道の場所に似てる…?青いブレザー姿で通学している同じ学校の奴らが見えるぞ。
確かに、校舎…だよな。
3階建ての校舎…。
俺の、学校だ…。
…どうしたんだ。
何で俺、こんな所にいるんだよ。
「最近の生き残ってるゲーセンって、UFOキャッチャーみたいな景品狙いのゲームばっかりしかないからさ、つまんねーよな。女連れの男が女のポイント稼ぎに課金して、プレゼントするためにある様なゲームだぜ?」
「あ…。あ、はは…」
「何だ?まさか、女ができたとかいう訳じゃないよな。その微妙な反応は何だよ」
何だか、懐かしいけど。俺、夢を見てんのかな。でも、意識がはっきりしてる様な気がするな。どういう事だ、これは。
「ワンコイン100円で格闘ゲームやるっていうのも、前ほどいなくなってきたもんな。中学の時は、まだやってる奴、多かったのにな」
「あ、ああ…」
「お前は潔いから、対戦しても、負けてすぐに手を引くしな。戦いの場で、お金節約術なんて、つまらないぞ」
色白で顔立ちの良い、優等生そうなメガネ君の、小池琢磨。俺に夏休みに読めと小説をたくさん貸してくれた友達だ。
懐かしいな…。
俺、高校生…だったのによ。
「単純なスマホゲームで満足してる場合じゃないんだよな、郁人。素晴らしい映像とサウンドが用意されたステージで俺達は競わないといけないんだよ。男としてさ」
懐かしいな、こんなやり取り。
夢だとしても、少し言葉を返してみようか。
「…俺、RPGも好きだからさ。家庭用ゲームでも…」
「いける…んだ…」
「…?」
「小池…?」
小池…。
「どうしたの、イクト君?」
あれ?俺、今ずっとシュティールと話してた?確かに俺は、友達の小池と…。ヤバイな、幻を見る様になったか。
「何が…いけるの?危険な臭いのするイクト君」
どーいう意味だテメー!お前に言われたらおしまいだよ。
「正面に見える白い石造りの建物が、外来の旅人の武器や荷物を預かる場所さ。基本的に、武器は預けて、それ以外の荷物は持っていた方がいいよ」
まぁ、それ以外の荷物ってのがないから、この大剣を預けるだけだけどな。
はぁ。
ここか。
白い石造りの建物に入ると、奥側にたくさんの武器が並んでるな。すげー。赤い布がかかったカウンターの向こう側に、たくましそうな女戦士が笑顔で俺を見てる。
俺を、知ってるんだろうな。
「よう、郁人。久し振りじゃないか。アンタの帰りを待ってたんだぞ?心配させやがって!」
「はは…」
「アンタ、いつから剣を使う様になったんだよ。自慢の拳術は封印か?」
女戦士がそう言って、俺に突きの素振りを見せてきた。速えーな。筋肉すげぇし。
「この大剣を、預かればいいんだな?へぇ?剣身の鋼材、これ、パラグロンタリー鋼じゃないの?何処でこの大剣、手に入れたんだ?」
何だ、そのパンダ黒いタンブラリーって。
「もらったんだよ…」
「もらったー??郁人、アンタそんなに、剣の腕が立つのか?こんな貴重なもの、普通はあげたりはしないんだぞ。アタシだったら、売るねぇ…」
じゃあ、買ってくれよ。
3億円で。
「わかった、これを預かればいいんだな?他には?」
隣りには、主に口から毒を吐く凶悪な武器が存在するんだけど、こいつも一度預けた方がいいのかな。
何をそんなにうれしそうにしてんだ、こいつ。でも、その口についている胡散臭い白い口髭を引き剥がしたら、多分、鬼みたいに怒るんだろうな。こいつ、すぐ怒るから。
「もう、預けるものはないよ」
「じゃあ、フグイッシュの所に行ってくれ。アンタが来たら、来させてくれって、頼まれていたんだよ」
フグイッシュ?フグの一種か?そう聞こえてくると、腹減ってくるな。
「フグイッシュは、今、もう一つ上の階層の《祈祷の像》にいるはずだよ」
祈祷の像…。
「わかった、言ってみるよ」
「…シュティール。口髭あんまり触ってるとさ…」
「ん?何だい?もう行くのかい?」
お前を武器としてここに預けてやろうか?毒舌属性の武器ですってな。
「フグイッシュの所に行くんだよ」
「何だい?フグのどんな種類かわからなかったのかい?」
フグ一種…。フグ探しの果てしない旅の始まりになるだろうが。上の階層の、祈祷の像の近くにいるとか言ってたかな。
「フグ刺しかい?」
おいおい、そろそろ止めろ。怪しまれるじゃないか。というか、フグってこの世界にもいるのか?こいつは、日本の事、不思議なくらい詳しいから、こいつは知ってるんだろうけど、いるのかな、フグ。
「フグ刺しかい?」
しつけーな、こいつ!
ハハハ。
ありがとう、これ、おいしいよ。
「どうしたの?イクト君」
「え、いや別に。何か、聞こえた様な気がしたからさ」
「特に何も聞こえない様な。ボーグン族が、広場で何か話し合ってるくらいだろうね」
広場…か。外から見たら、切り株だけど、中に入ると、黄色い岩壁に囲まれた大きな街という感じだな。いまいち、何処が広場かはわからないけど。
ボーグン族…。
この大陸修復に貢献した民族の、住む街か。
ゴツゴツしていて、とてもきれいな形の家とは呼べない様な岩の家がたくさんあるな。ボーグン族が住んでるんだろうけど、窓もないし、息苦しそうだ。室内の酸素は足りてるか?家の戸は、石にも見えるけど、多分、鉄だな。完全密閉…。
街の真ん中に、大きな山みたいなものがあるけど、あそこの中から、何かを打ちつけたり、削ったりする音が聞こえてくる。何か作ってんのかな。後で行ってみるか。
岩の家の外に、鉄で作った様な木や花、人がある。家とは違って、芸術品だな。
家よりも、庭が重要なんです派だったりして。
ボーグン族の手先が器用なのは、間違いなさそうだな。
「うおっ…!?」
あー、びっくりした。
強化戦士が街を歩いて警護している。やっぱり、この世界の住人だから、争う事もあるんだろうな。民族が同じでも、関係ないとか。
あー、こんにちは、こんにちは。
って口に出しては言わない。俺は、心で言う派だ。なので、相手に伝わらない。いわゆる、無愛想な奴、という事だな、俺は。
ボーグン族の服装って、あれスカートじゃないよな。
男も女も、下は膝下までのヒラヒラのものを履いてる。上は、皮の鎧みたいなものを着てるな。俺を見てニコニコ笑ってるから、結構友好的な民族なのかも知れないな。
「イクト君、僕の今つけているメガネは、電子バイザーになっていて、この街のある程度の情報はもう入手済みなのさ」
「…何で、そんなもん持ってんだ?お前、この街の常連か?」
「初めてだよぅ…」
そんな訳ないよな。教えても良さそうなところからいきなり隠したり、ごまかしたりしてくるから、より信用がないんだよな。別に、普通に言えばいいだろうが。前にも来た事があって、その時にこの街の情報を入力した犯罪メガネを作ったんだ、すごいだろ、ケケケとか笑えばいいじゃないか。クソ召喚獣君。
「あそこの階段を上って、奥に行くと、武器を預ける場所があるから、まずは君の大剣を預けないとね」
大剣か。確かに、街の中で歩く住人達に武器を持ってる奴はいないな。それは仕方がないな。
「君がこの街に来た事があるなら、そのまま大剣を持っていてもいいのかも知れないけどね」
「いや、ない」
「…君も嘘がうまいね。目が本当の事を言っているみたいだよ」
それは、実際に本当の事を言っているから、俺がそういう目になっているんだろう。
歩くと、何か足首が重く感じるな。
わかったぞ、地面が鉄だからだな。足が痛まない様に、その上に偽物っぽい芝が歩きそうな場所に敷いてある。大陸の修復に貢献したという事だけど、また崩れた場合に、この街ごと飛んで逃げられる様にとか、そんな装置を作ってんだろ。じゃないと、地面を鉄で作ったりしないだろうからな。
「意外と階段まで長いな…」
「階段まで…」
「ふぅ…」
「よう、郁人!フレンクバーガー近くのゲーセン潰れたらしいぞ」
「…え??」
「どうした?何驚いてんだよ」
学校の校門を抜けて、校舎までの一本道の場所に似てる…?青いブレザー姿で通学している同じ学校の奴らが見えるぞ。
確かに、校舎…だよな。
3階建ての校舎…。
俺の、学校だ…。
…どうしたんだ。
何で俺、こんな所にいるんだよ。
「最近の生き残ってるゲーセンって、UFOキャッチャーみたいな景品狙いのゲームばっかりしかないからさ、つまんねーよな。女連れの男が女のポイント稼ぎに課金して、プレゼントするためにある様なゲームだぜ?」
「あ…。あ、はは…」
「何だ?まさか、女ができたとかいう訳じゃないよな。その微妙な反応は何だよ」
何だか、懐かしいけど。俺、夢を見てんのかな。でも、意識がはっきりしてる様な気がするな。どういう事だ、これは。
「ワンコイン100円で格闘ゲームやるっていうのも、前ほどいなくなってきたもんな。中学の時は、まだやってる奴、多かったのにな」
「あ、ああ…」
「お前は潔いから、対戦しても、負けてすぐに手を引くしな。戦いの場で、お金節約術なんて、つまらないぞ」
色白で顔立ちの良い、優等生そうなメガネ君の、小池琢磨。俺に夏休みに読めと小説をたくさん貸してくれた友達だ。
懐かしいな…。
俺、高校生…だったのによ。
「単純なスマホゲームで満足してる場合じゃないんだよな、郁人。素晴らしい映像とサウンドが用意されたステージで俺達は競わないといけないんだよ。男としてさ」
懐かしいな、こんなやり取り。
夢だとしても、少し言葉を返してみようか。
「…俺、RPGも好きだからさ。家庭用ゲームでも…」
「いける…んだ…」
「…?」
「小池…?」
小池…。
「どうしたの、イクト君?」
あれ?俺、今ずっとシュティールと話してた?確かに俺は、友達の小池と…。ヤバイな、幻を見る様になったか。
「何が…いけるの?危険な臭いのするイクト君」
どーいう意味だテメー!お前に言われたらおしまいだよ。
「正面に見える白い石造りの建物が、外来の旅人の武器や荷物を預かる場所さ。基本的に、武器は預けて、それ以外の荷物は持っていた方がいいよ」
まぁ、それ以外の荷物ってのがないから、この大剣を預けるだけだけどな。
はぁ。
ここか。
白い石造りの建物に入ると、奥側にたくさんの武器が並んでるな。すげー。赤い布がかかったカウンターの向こう側に、たくましそうな女戦士が笑顔で俺を見てる。
俺を、知ってるんだろうな。
「よう、郁人。久し振りじゃないか。アンタの帰りを待ってたんだぞ?心配させやがって!」
「はは…」
「アンタ、いつから剣を使う様になったんだよ。自慢の拳術は封印か?」
女戦士がそう言って、俺に突きの素振りを見せてきた。速えーな。筋肉すげぇし。
「この大剣を、預かればいいんだな?へぇ?剣身の鋼材、これ、パラグロンタリー鋼じゃないの?何処でこの大剣、手に入れたんだ?」
何だ、そのパンダ黒いタンブラリーって。
「もらったんだよ…」
「もらったー??郁人、アンタそんなに、剣の腕が立つのか?こんな貴重なもの、普通はあげたりはしないんだぞ。アタシだったら、売るねぇ…」
じゃあ、買ってくれよ。
3億円で。
「わかった、これを預かればいいんだな?他には?」
隣りには、主に口から毒を吐く凶悪な武器が存在するんだけど、こいつも一度預けた方がいいのかな。
何をそんなにうれしそうにしてんだ、こいつ。でも、その口についている胡散臭い白い口髭を引き剥がしたら、多分、鬼みたいに怒るんだろうな。こいつ、すぐ怒るから。
「もう、預けるものはないよ」
「じゃあ、フグイッシュの所に行ってくれ。アンタが来たら、来させてくれって、頼まれていたんだよ」
フグイッシュ?フグの一種か?そう聞こえてくると、腹減ってくるな。
「フグイッシュは、今、もう一つ上の階層の《祈祷の像》にいるはずだよ」
祈祷の像…。
「わかった、言ってみるよ」
「…シュティール。口髭あんまり触ってるとさ…」
「ん?何だい?もう行くのかい?」
お前を武器としてここに預けてやろうか?毒舌属性の武器ですってな。
「フグイッシュの所に行くんだよ」
「何だい?フグのどんな種類かわからなかったのかい?」
フグ一種…。フグ探しの果てしない旅の始まりになるだろうが。上の階層の、祈祷の像の近くにいるとか言ってたかな。
「フグ刺しかい?」
おいおい、そろそろ止めろ。怪しまれるじゃないか。というか、フグってこの世界にもいるのか?こいつは、日本の事、不思議なくらい詳しいから、こいつは知ってるんだろうけど、いるのかな、フグ。
「フグ刺しかい?」
しつけーな、こいつ!
応援ありがとうございます!
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