とてもおいしいオレンジジュースから紡がれた転生冒険！そして婚約破棄はあるのか(仮)

第二章 熱き炎よギルロに届け、切なる思い

その8

おっ。この街に飲み物の自販機なんて置いてあるな。久しぶりに見たぞ。何か、ほっとする。こういう在り来たりのものも、利用する事もないんだろうと思ってたからさ。




買ってみたいんだけど、お金がない。






「シュ、シュティール。シュティール」







腐ったものを見る様な目を俺に向けるシュティール。何を言われるのかは、想像がついているんだろうな。





「君って、僕にお金をたかる事ばかりしか、頭にないんだね」






別に、たまたまだろ…！いや、ごめんなさい。







「…はい」





シュティールはそう言って、胸ポケットから1枚のお札を取り出し…、地面に投げる。ああ！こいつ、ムカつく！






お釣りは返さないからよろしくな。今ので精神的ダメージを負ったから、その慰謝料分、もらっとくぜ！




自販機のディスプレイに、上から4つの段にわかれて、それぞれ7個ずつ飲み物の缶が表示されている。上の段の飲み物は、左からアイソール、カンパチ、コンプフメント、ヘーイ、タカサワパ、ヒアリーチ、シンゾロ、名前だけ見ても、よくわかんないな。缶のデザイン見る限りでも、何味か書いてもないしな。







「シュティール、これら何味か教えてくれよ」








「全て、雑巾の味がするんだよ」







日本博士、日本のものを使って嫌がらせするの止めてくれよな。日本が汚れる。







「2.3年使い古した雑巾の味がするのさ」







いらねぇ補足入れてくるんじゃねぇよ！







自販機のお札を入れる所は、ここだな。よし。飲み物のディスプレイの下に、プレートがあるけど、ここを押すのかな？






あれ？何の反応もない。お札を入れたら、プレートが赤く点滅しているから、買えそうな気はするんだけどな。






「シュティール、買い方って…」







「そのプレートをタンブルしてごらんよ」






タンブル…。何だそれ？タンブルって、どういう動作なんだ？押してダメだったから、引っ掻く？そんな訳ないな。毎回それやると、プレートは傷だらけになる。なら、横に指をスライドする事か？レの字を書いたりする事か？






「タンブルって…？」







「シンクリングする事だよ」








何だ、シンクリングって？？





タンブルは、シンクリングするって事？そのシンクリングがわからねぇ。タンブルだけでもよくわかってないのに、さらにワケわからない言葉が追加されたな。何かイヤな予感がしてきた…。







「シンクリングって？」






「アーリーをマロイドしてごらん、簡単な事さ」






アーリー？をマロイド…？？







アーリーをマロイドしてごらんって？何だマロイドって？？言葉の配置的に動詞って事？アーリーを何かするのか？アーリーをマロイドする事が、シンクリングで、そのシンクリングする事がタンブル…。自分の頭で言葉を繰り返しても、何言ってんだ俺？というカオス状態に陥っている。もはや、俺の頭の思考がほぼ停止しかかっているのは間違いない。アーリーって何を指してのアーリーだよ…？シュティールめ、さっきから単語、単語だな！？もっと言葉を噛み砕いて説明できないものかね？この性悪野郎は！







「そのプレートに、キスすれば買えるよ」








「嘘つけ！この野郎！！」





人をバカにする事にしか頭を使えない、今世紀一かわいそうな召喚獣君なんだな。ほらほら、周りの住人達の目がこっちに向いてきたぞ。あいつ、自販機で飲み物買えないらしいよ、ってな。ああ、恥ずかしい。






シュティールはすまし顔で自販機に寄り、自販機のプレートの近くで指を鳴らし、息をかけ、目を近づけて、キスをした。ガコン！自販機の受け口に缶ジュースが落ちてきたぞ。絶対に、一連の動作の中で意味がないものが入ってるだろ！？こいつ、本当に性格悪いな！素直に買い方教えてくれればいいだけなのにさ。






おつり返却口に小銭が。それを取って、さて、この小銭は…何処に入れるのかな？







「シュティール、お金は何処に入れるんだ？」






缶ジュースをゴクゴク飲んでるな。おい、話聞いてるか？







「ふぅっ…。君、さっき、お金入れていなかったかい？」






お札だった時はね。今はお前が飲み物買ったから、小銭になってんだよ。その小銭を入れる場所が見当たらないんだよ。







「池にその小銭を落とすんだよ。そうしたらさ、髭生やしたおじいちゃんが出てきて、君が落としたのはどのお金だい？って言われるから、その時にお札を選べばいいよ」







何処かで聞いた様なお話だな、シュティール日本博士さんよ。早く小銭の投入口教えないと、お前の口に小銭ぶち込むぞ！






「あ…、空が暗くなってきたね。今日は、この街に泊まるとしようか」







え？急に話変えたな。確かに、暗くなってきたけどさ。おい、飲み物！







「…君の宿泊代も、出してあげようか？」








「おお！ありがとう！」






ついでに、ジュースも買って手渡ししてくれ！