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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その64

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「どうしたんだい?銅像になりたい心境を体現しているみたいだけど、この場所に君を銅像にして飾っても、誰も通らないと思うよ?」

お前が通ったじゃないか!?

最初に出発した街に戻り、しもべに会うはずが、こいつに…、殺人鬼シュティールに出会すとは。

あまりの不運に愕然として、動けませんでした。



「急にあの場所から飛び出して消えちゃうんだから、びっくりしたよ。地球人君。僕が手を貸してあげてるのに、姿を消すなんて、有り得ないよ。次やったら、本当に、その姿を消し去るからね?」



…恐い発言をどうもありがとう。ただ、俺をはめて殺そうとしたのは、そっちじゃないのか?



「目が逆三角形になっているから、丁度三角定規を失くしていたから、その目ごともら…」




「ギャー!!」



「ギャー?何だ、僕と召喚獣ごっこでもやりたいのかい?いいよ。やろうか?負けたら…死だけどね」


「お、お前、召喚獣って言葉嫌いだろうが!?積極的に使うじゃねぇか!」



「え?今、何て言ったの?最弱地球人ごときが、何だい?」



俺が召喚獣って言葉を口から出すと、すぐに殺気立つシュティール。お前が教えたんだぞ?召喚獣として呼ばれるって。



「…俺を殺そうとしたじゃないか…!」



「何の話をしてるんだい?」



「あのフルワットって街で、あのババアを使って…!」



「ババアって、口が悪いね。あのお婆ちゃんが、どうしたんだい?」



「俺の事、地球人って、知ってた」



「知っていても、おかしくはないだろう?僕らは、人間から召喚獣として地球に呼ばれたりもするんだから。人間と接した事のある住人は、君を見ればわかる事もあるだろう」


ごまかそうとしてるのか?シュティール、胡散臭さナンバーワンだからな。



「お前すら、信用すべきじゃないだろうって言ったら、わかってきたみたいだね、とか言ってたじゃないか?」



「…僕は、この世界の住人すら信用してないと言ったら、君はどう解釈するんだい?君は、僕を裏切らないって、確信なんてない、それは君側に例えても、同じ事なんじゃないかな。事実を言ったまでさ」



「…」



「あのお婆ちゃんに殺されそうになったんだろう?君が無警戒な赤ちゃんだから、そういう目に遭うのさ」


無神経なコメント、ありがとう。久々のその種のイラつき具合、半端ないです。今、しもべにより、この16才の姿にはしてもらったけど、死んで転生して2才児からスタートっていう事実は変わらないからな。赤ちゃんと呼ばれても結構。お好きに呼んでくれ。



「…赤ちゃん…」



やっぱりムカつくわ。そこだけ切り抜いて言ってきやがる。お前、俺の心読んでないよな?タイミング良すぎだぞ!?



「イクト赤ちゃんは、何処に行こうとしてたんですかぁ?」



答えたくないです。バブバブ。



「君と初めて出会ったあの街に戻るのは、止めておいた方がいい。君と、君と一緒にいた住人の2人を、探している者達がいる。厄介な相手だから、行かない方がいいよ」


「…厄介な、相手?」



「そうさ。君に伝言をして欲しいという住人がいてね。ちなみに、その住人はすでにあの街を去っているよ。君があの街に行っても意味がないどころか、君自身の命が危ないという感じだね」


「へえ…?」



「忠告も聞かずに行きたいというのなら、僕は止めないさ。君が命乞いしながら、許しを乞う姿を見に行くとしようか。特等席で見させてもらうよ」


ヘラヘラ笑いながら言いやがって。ムカつくな、こいつ。



「伝言はどうした?」



「特等席で見させてもらうよ」



「伝言が、特等席で見させてもらうよなワケねぇだろうが!伝言を伝えに待ち伏せたんだろ?早く、伝言を教えろ!」



「オレンジジュースが好きらしいじゃない?」



「お前に、最初に伝えただろうが!オレンジジュースは好きじゃないの!わかった!?あと、伝言が、俺がオレンジジュース好き、なワケねぇだろう!早く、教えやがれ!」





「…ライアマイアンの街だけは行くな、だって」







「随分手遅れな情報ありがとな!もう行ってきて、十分、災難に遭ってきたからもう大丈夫だ!さらに、《冬枯れの牙》ってものにも、これから狙われていく予定だからな、災難カーニバルって感じだぜ!」






「まぁ、まぁ、落ち着きなよ、イクト君。無料のオレンジジュースでも飲みに、僕らの出会った街まで戻るかい?」







「お前もしつこいな!オレンジジュース、嫌いだってお前の耳に何回届かせなきゃならないんだよ!?しかも、お前、その街に戻るなって言ってたのに、オレンジジュースの話になると、そこは変わるのかよ!?お前がオレンジジュース好きなのは知ってんだよ!?ふざけんな!」






「…《冬枯れの牙》とは、また厄介な組織に狙われたね。彼らはこのクェル・ダ・ベル第2大陸にのみいる住人じゃないよ」






「え…?」







「何処だったかな?彼らの巣があった大陸は…」








「うーん、別にいいよ。シュティール、あまり会いたくはないからな」









「まぁ、いいさ。僕は少しだけど、責任感はあるつもりさ。君にギルロの体と魂を探すのは、この世界に慣れていないその状態じゃあ、無理だろう。僕が退屈しのぎに、手伝ってあげよう!」







満面の笑みで、そう言ってくるシュティール君。信用できないんだよな、こいつ。でもさ…。







この世界だと、こいつくらいなんだよな、少しだけど、気楽に話せる奴。もちろん、油断ならないけどさ!







「絶対、俺を殺そうとするなよ??」







「君を殺すくらい、頭を掻くより、容易い事なのに、君は今、生きてるじゃないか」






「…ムカつくな。わかったよ、よろしく頼む!」







「ゴミ屑君、よろしくね。ああっ!間違えた、イクト君、よろしくね?」








何でこいつ、こんなムカつく生き物なんだろうな。でも、《冬枯れの牙》の事を知ってるのに、俺について来てくれるんだって。お話しライオン と戦った時も、妙に余裕があったし(戦いを手伝う事はなかったが)、矛先がこっちに向かなければ、こいつはとても頼もしい奴なんだ。




こいつは、実は俺にとって、ありがたい存在なのかも知れないな。





「イクト君、オレンジジュース飲みに、やっぱりあの街に戻ろうか?」






何なんだ、こいつ…!!
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