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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その62

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芝生みたいに短く刈ってる場所が続くな。

ここ、ゴルフ場じゃないのか?

歩きやすいけど、何か歩いてはいけない様な気がするんだけど。

周りに誰もいないな。

じゃあ、大丈夫か。



はっ!?


これは…



バンカーか?



砂の大きな窪み、ハマれば、ここからのボールの飛距離は飛ばせないぞ!




…。



いや、違うな。ただ芝がハゲてるだけだ。





…ゴルフか。



ゲームでよく、遊んだな。

『集まれゴルフ野郎』とかいうタイトルだったかな。



上下にバーが動くけど、一番上にバーが伸びた時にボタンをタイミングよく押すと、パワーショットになるんだよな。



懐かしいな。



あ、あれ?



う…っ!





え、え?






重い、体が重いな。





地面から誰かが、手足、腹、頭、胸を引っ張ってる様な。



歩けないほどじゃないけど、何だ、急に。






くぅ…。




はぁ…。




何だ、何ともなくなったな。





ふう。







右側は林になってるから、あまり入りたくなかったんだ。だから、真っ直ぐに歩いていたんだよな。この先、林がカーブして正面を塞ぎにかかってるから、少し左側に行きながら進もうとしたら。



あまり左側に行き過ぎると、霧がかってるから、そこも迷う原因だしな。



ん?



お、お…。





ズズ…ン!







地震か?




震度3って感じだな。





テレビつけると、大体当たるんだよ、俺勘がいいからさ。



うっ…!





また、ぉぉ…重いぃ…!



あ、霧が何か近くなってないか??





よくわからないけど、嫌な予感がする。霧から離れよう。



ズン…!!




ズン…!





ズ…!





ズス…。




ふう…。






また、体が軽くなった。







霧から離れたら、体が楽になるな。







あの霧は危険の様だな。





…離れよう。






結局、林に入らないといけないのか。迷わないだろうな。俺、結構方向音痴だからな。




カチャン…!






あ、鎧の何処かのパーツが外れたな。ボロッボロだからな。何処が外れたのかわかんないけど、拾った所で、直せないからな、俺。





胸のパーツも、うさ耳オヤジに散々蹴られたから、ボコボコだよ。少し呼吸しづらいのは、この凹みで胸が圧迫されてるからだろ。



何処かで捨てるか、替えるかしないとな。



この鎧、いくらするんだろうな。値段を気にした所で、俺は1円も持ってはいないけどな。

お財布君として期待した、殺人鬼シュティールはもう会いたくはないしな。



…見損なった。



いや、元々嫌な奴だったんだから、別に意外でもないだろ?



この世界、俺部外者だからな…。


淋しいな。



オレンジジュース飲まなければ、良かったのかなぁ?



そういう問題じゃないだろうな…。




林の中は、涼しいな。幹の太い木がたくさんある。地面はそんなにボコボコしてないから歩きやすいぞ。20m行けば、向こう側に抜けられそうだな。




ヒュン…!






え?





あれ…?何かが飛んだ?小さな虫とか、そんなレベルのものじゃない。人くらいの大きさのものじゃないか?








ヒュン…!








「わわ…っ!」









急接近し過ぎだぞ!危ねぇなー。










ヒュン…!











ヒュン…!








やっぱり、これは。









人だ!








「だ、誰だ…?」








あれ?












ヒュン…!











「うわっ…!」





目で追えないほどの速さ、まさか…。






うさ耳オヤジ、生きていた…??




いや、そんなはずはない。




確実に心臓を捕らえたんだ。そして、心臓はいくつも持っている感じもしなかった。




別の誰かだ。





…。







…。











「ククク…。カァ!カァ!」





え?カラス??





「な、何だよ…。カラスみたいに…?」













「…ライアマイアンの街での戦いは見事だったぞ」







!?






「シンガリ族のキリングを倒したその力、認めてやる」






いきなりしゃべり始めたぞ。







ライア…マイ、アン?うさ耳オヤジと戦った、あの街…の名前だった様な。

見てたのか?あの戦いを。







「お前の剣技、もしやと思ったが…」








少し声が低く、肝の座った落ち着いた話し方。でも、冷徹さが伝わる。こいつは、悪人に違いない。





「だ、誰だ…?」





声のする方に目を向けても、姿が見えない。木の幹に隠れて話してるのか?






「そのセリフ、私からお前に言おうとしたものだ。答えろ、お前は誰だ?」







俺から聞いてんのに、何で俺から答えるんだよ!?…適当言ってやるか。






「あ、赤牛虎吉あかうしとらきちって名前だよ、悪いか?」







どうだ!







…静寂の洗礼ありがとう。思いつきでも、中々いい名前だったかな?








「カァ!カァ!カァ!聞いた事もない名だが、まともに答えようとはしていないのなら、私がお前に命名してやろう」








何?じゃあカッコいい名前を頂戴しようじゃないか。さあ、くれ。









「腐乱死体」









「ククク、カァ!カァ!カァ!格好良い名だろう?どうせ私の牙にかかれば、その様になるのだ」









くっ…!嘘だろ?戦う気だ。

連戦なんて、とても耐えられない。うさ耳オヤジで限界なんだよ。



こいつの速さ、うさ耳オヤジと互角だ。いや、それ以上かも。でも、それよりも、こいつの声…。うさ耳オヤジより恐ろしく悪い気がする。何か、殺しをする事が、まるで呼吸する事と同じかの様な、そんな悪い意味での落ち着きがある。





「ま、待て…!わかった、言う…言うから。名前を言ったら、見逃してくれるのか?」








ここで、こいつと戦って、生きていられるとは思えない。お互いに恨みなんてないだろ?無益な戦いは止めようじゃないか。







「命乞いをするのか?ククク、あの戦いを見ていたのだぞ?どうした、私を相手にして、あの剣技を披露する気はないのか?少しばかり、体力を回復する機会を与えてやったのだぞ。カァ!カァ!」






このカラス野郎は、ずっと俺の後をついて来ていたのか。気配を完全に消していた?全くわからなかったぞ。





今も気配を消してるのか?







このカラス野郎がしゃべるのを止めると、この辺りに人がいないみたいに、静かだ。













「お前…、神風かみかぜひらめきの剣を知っているか?」








「はぁ…?何、ソレ…」








かみかぜ…ひらめき…の剣?









「カァ!カァ!カァ!本当に知らなそうだな。お前のその大剣での戦い方、まるで刀を振るう様な戦い方に見えたのだが、その名を全く耳に入れた事がないのであれば、まだその程度の力という事。ならば、私も雑魚に時間を使う気もない。ククク、命拾いしたなぁ?」







全くもって、その通りでございます。さぁ、消えて下さい。もう、全てに置いて、面倒臭い、ストレスMAXで死にそうでございます。




もう、無駄に少しでも戦いたくない気分でございます。






「…次に私達の計画を邪魔した場合、2度のチャンスはない。死を覚悟する事だな。カァ!カァ!」







計画?別に、邪魔をしてない…だろ?









「私の名は、《冬枯れの牙》ラグリェ。覚えておくと良い、小僧…」








「何…だと?」






テメェか!?





うさ耳オヤジに余計な事吹き込んだのは!?
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