上 下
46 / 441
第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その46

しおりを挟む
右手が…熱いッ!!



あああー!!!



熱いッ!!!



痛ぇ!!



右手が真っ赤に燃える…!そして、燃えている右手の甲に青白い炎が一点、現れ、何かを描く…!



前回とまた同じなんだけど…。



あああ、熱いッ!!



痛い!痛い!痛い!



「…ひでぇ痛がってるみたいだけどよ。確認だけど、お前が作り出した炎じゃないよな」



「いや、俺だよ、俺。俺が…
ぁあ熱ぃ…!!俺だよ、俺、俺!」



「…こりゃ、絶対に違うだろうな。お前、まさか魔力…いや、関係ねぇ。少しでも足しになれば、それでいいぜ」



少し足しにじゃねーよ、バカ。あれぇ?こんなに熱かったか??とても青白い炎が手の甲の上でお絵描きし終わるのを待ってられないんだけど。





え?






じょ…冗談だろう?







赤い炎に包まれた俺の右手の甲の上に青白い炎がお絵描き。それが終わると、赤い炎と青い炎が混ざり、紫色の炎となり、腕に上っていく。




ここまでは順調に進んでくれた。でも、それと同時に、この炎は俺にとってとても受け入れ難いものだってわかったんだ。




待て!





その紫色の炎は、俺の腕の中に入らせないぜ!?







その力は、いらないんだ。








気のせいか、正露丸汁の中に入っていた痺れ薬の効果が急激になくなっていく。








「目に、力が戻ったな…?」






うさ耳オヤジはそう言って、気に入らないと言わんばかりに唾を吐いた。そして、腰を低くして両手の爪を5cmほど伸ばし、咆哮する。






痺れは大分取れたけど、このままかかって来られたら、やられるのは、変わらな…、いや、違う。







霧蔵が俺に教えてくれた技を、やってやる。







身体能力は霧蔵が体の中にいた時より、ずっと、ずっと、落ちているのは、わかっているんだ。





あの研ぎ澄まされた感覚がないのに、霧蔵の次元斬をやるなんて、遥かに難しいのなんて、わかってんだよ。






でも、このまま死ぬのなんて、冗談じゃない!








俺は腰を低くして、大剣を構えた。くそっ、やっぱり大剣が重てーな…。






あのうさ耳オヤジの赤い目が、どうも恐いな。怒っている?それとも、あれが普通?あまりじっと目を合わせない様にしないと。少し恐がると、体が金縛りに合ったみたいに硬直する。





うさ耳オヤジは、準備体操のつもりか、軽快に足踏みをした後、目つきが獲物を捉える目に変わり、左右に跳ねながら俺に近づいてきた。





俺は迫るうさ耳オヤジの動きを見て、タイミングを合わせて、その瞬間がきたと感じた時、腰を軸にして、大剣を振った。







そのつもりだった。








俺の攻撃範囲に入る一歩手前で、うさ耳オヤジの動きが急加速して、そして、見えなくなった。






何処に行った?






冗談じゃねぇ…。






お、お話しライオンより速い…じゃないか。







「お前の背後に回った事すら気づかないなんて…」






冷や汗が背中に一気に滝の様に流れた気がした。信じられないほどの速さ。



嘘だろ…?



目で追えないほどの奴相手に、どうやってこんな重い大剣を当てるんだよ…?






俺の中で、苛立ちとか、恐怖とか、焦りとか、色々なものが混ざってよくわからない。混乱して、冷静になんて、なれなかった。力一杯、手に持っている大剣を振り回した。そうすれば、何とかならないかなんて、甘い期待を寄せて。






「遅いな。その武器の扱い方もまるでなっていないじゃねぇか。どうやって、この俺を捉えるつもりなんだ?ぁあ?そんな、動きでよ!?遅過ぎるんだよ、お前!!」





ぴょんぴょん跳ね回るうさ耳オヤジは、俺が振り回す大剣の上にも、一度飛び乗り、離れていった。バカにしやがって!






まだ俺の右腕に紫色の炎が俺の受け入れを待って、燃えている。紫色の炎は、大して熱くはない。








お前が誰なのか、わかったんだよ。










俺は、お前を受け入れたくはない。









俺は、お前が嫌いだ。









自分が選ばれたかったからって。











私利私欲のため、お前は大切な仲間を、殺したんだからな。









何故、殺した。











何故、霧蔵を殺したんだ…?







互いに励まして、助け合って修業してたじゃないか。







お前が濁流に飲まれた時も、霧蔵が命を懸けて助け出してくれたじゃないか。








何で、その霧蔵を殺した!?












右京!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana
恋愛
私の目の前でブルブルと震えている、愛らく庇護欲をそそる令嬢の名前を呼んだ瞬間、頭の中でパチパチと火花が散ったかと思えば、突然前世の記憶が流れ込んできた。 前世で読んだ小説の登場人物に転生しちゃっていることに気付いたメイジェーン。 やばい!やばい!やばい! 確かに私の婚約者である王太子と親しすぎる男爵令嬢に物申したところで問題にはならないだろう。 だが!小説の中で悪役令嬢である私はここのままで行くと断罪されてしまう。 前世の記憶を思い出したことで冷静になると、私の努力も認めない、見向きもしない、笑顔も見せない、そして不貞を犯す⋯⋯そんな婚約者なら要らないよね! うんうん! 要らない!要らない! さっさと婚約解消して2人を応援するよ! だから私に遠慮なく愛を貫いてくださいね。 ※気を付けているのですが誤字脱字が多いです。長い目で見守ってください。

聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな
ファンタジー
 ティアラ・クリムゾンは伯爵家の令嬢であり、シンクレア王国の筆頭聖女である。  そして、王太子殿下の婚約者でもあった。  だが王太子は公爵令嬢と浮気をした挙句、ティアラのことを偽聖女と冤罪を突きつけ、婚約破棄を宣言する。 「聖女の地位も婚約者も全て差し上げます。ごきげんよう」  父親にも蔑ろにされていたティアラは、そのまま王宮から飛び出して家にも帰らず冒険者を目指すことにする。  

異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。

山いい奈
ファンタジー
このお話は、異世界に転移してしまった料理人の青年と、錬金術師仔カピバラのほのぼのスローライフです。 主人公浅葱のお料理で村人を喜ばせ、優しく癒します。 職場の人間関係に悩み、社にお参りに行った料理人の天田浅葱。 パワーをもらおうと御神木に触れた途端、ブラックアウトする。 気付いたら見知らぬ部屋で寝かされていた。 そこは異世界だったのだ。 その家に住まうのは、錬金術師の女性師匠と仔カピバラ弟子。 弟子は独立しようとしており、とある事情で浅葱と一緒に暮らす事になる。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました

猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
ファンタジー
【書籍化決定しました!】 11月中旬刊行予定です。 これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです ありがとうございます。 【あらすじ】 精霊の加護なくして魔法は使えない。 私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。 加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。 王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。 まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。

捨てられた第四王女は母国には戻らない

風見ゆうみ
恋愛
フラル王国には一人の王子と四人の王女がいた。第四王女は王家にとって災厄か幸運のどちらかだと古くから伝えられていた。 災厄とみなされた第四王女のミーリルは、七歳の時に国境近くの森の中で置き去りにされてしまう。 何とか隣国にたどり着き、警備兵によって保護されたミーリルは、彼女の境遇を気の毒に思ったジャルヌ辺境伯家に、ミリルとして迎え入れられる。 そんな中、ミーリルを捨てた王家には不幸なことばかり起こるようになる。ミーリルが幸運をもたらす娘だったと気づいた王家は、秘密裏にミーリルを捜し始めるが見つけることはできなかった。 それから八年後、フラル王国の第三王女がジャルヌ辺境伯家の嫡男のリディアスに、ミーリルの婚約者である公爵令息が第三王女に恋をする。 リディアスに大事にされているミーリルを憎く思った第三王女は、実の妹とは知らずにミーリルに接触しようとするのだが……。

さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~

みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。 生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。 夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。 なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。 きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。 お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。 やっと、私は『私』をやり直せる。 死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

タジリユウ
ファンタジー
【1〜3巻発売中!】  とある街から歩いて2時間。そこはキャンプ場と呼ばれる不思議な場所で、種族や身分の差を気にせずに、釣りや読書や温泉を楽しみながら、見たこともない美味しい酒や料理を味わえる場所だという。  早期退職をして自分のキャンプ場を作るという夢を叶える直前に、神様の手違いで死んでしまった東村祐介。  お詫びに異世界に転生させてもらい、キャンプ場を作るためのチート能力を授かった。冒険者のダークエルフと出会い、キャンプ場を作ってスローライフを目指す予定なのだが…… 旧題:異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!  ※カクヨム様でも投稿しております。

処理中です...