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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生
その38
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「君の残像とも言える、この世界に先に着いたもう1人を殺した男は、このクェル・ダ・ベル第2大陸にはいない。いたのなら、あの残忍な性格だ、街の住人達の表情が恐怖で凍りついていた事だろう。まぁ、住人にもよるかも知れないがね」
黒ロングコートの片眼鏡男は眉間にしわを寄せ、重い溜め息を吐き出した。
「その男の持つ夢魔操の器は、細長い軽量鉄箱で、3つの蓋付きのゲージが横並びであるんだが、その中に、あるものを入れる事により、どんな願いも叶えられると言われているのだ」
「どんな願いでも…か」
俺は目を閉じて、どんな願いでもという事に思いを巡らしてみた。この世界では地球では存在しない様な、召喚獣等が存在し、魔法も、そして、オレンジジュースもある。そんな、俺の想像を超えるこの世界で、どんな願いも叶えられるものがあるという事に、想像が追いつかない。…いや、オレンジジュースはあるな。
もしかしたら、神にでもなれるというのか?いや、下々の苦言を聞くだけでも、死にそうになるだろうな。止めておいた方がいいか。
「その夢魔操のそれぞれの蓋は、開ける事はできない。ある魔法を発動し、それを介して、その3つの小さなゲージの中に直接入れるのだ」
この片眼鏡男、あるもの、ある魔法って。先ほどから、もったいぶるなぁ。
醤油にウニを混ぜるとプリンの味がするとかいう話を聞いた事があるけど、そこに牛乳を混ぜたら、ミルクプリンとか。その夢魔操はミキサー、として役立ちました、とか。
「…1つのゲージを満たすだけでも、膨大な魔力を奪う必要があるのだが、その膨大な魔力を持つ者は、この世界には存在しないだろう。そこまで大きくはない魔力を地道に集める事もできるが、何百年かかる事か。だから、大半の場合は、大きな魔力を持つ者の魔力の核ごと、剥ぎ取り、そのゲージに収めるのだ」
片眼鏡が恐く光るな。圧が強いな、この男は…。
「夢魔操と対になる魔法、吸魔晶を受けた対象者は、30分以内に、一定量の魔力を奪われ、魔力の核も奪われ、夢魔操にひとゲージ分、贈り物をする事になる訳だ」
何かとてつもなく難しい話になってきたな。要するに、かなり力を持つ魔法使いを3人、魔法使いじゃなくなるまで魔力を奪うという事かな。でも、そうするためには、そもそも吸魔晶という魔法を使えないと意味がないか。その前に、もう1人の俺を殺した奴から夢魔操を奪わなければいけないし。どれを1つ取っても、激しく困難だ。
「夢魔操を手に入れるには、第7大陸へ行く必要があるが、まずは中央に位置する第1大陸への扉を開かなければならない。今、閉鎖されているが、解放する権限を持つ炎真大将グレンベールに会わなければならないだろう」
また出た、グレンベールという男の話。シュティールにも言われたな。この大陸で力を持つ男で、ギルロの配下の高天魔四大将の一人なんだろう?俺が気軽に会える存在ならいいけどさ、そうはならない気がするんだけど。ああ、そうか。この片眼鏡男がついて来てくれるんなら、そのまま話してくれればいいか。ついでに、ギルロの体と魂が何処にあるのか聞いてくれれば、地球に帰れる可能性がもう少し上がるかな。
片眼鏡男は俺をまじまじと見つめ、片眼鏡を外す。そして、それに向けてはぁーっと息を吐いた。何か片眼鏡にくっついて、見づらくでもなっていたのかな。
吐息で曇らせた片眼鏡をそのまま装着しやがった。でも、そんなに気温低くないから、すぐに片眼鏡のレンズの曇りは晴れたけど。何か意味のある行動でしたか?今の…?
「さぁ、会ってくるといい…!」
清々しい表情で言っているところ、悪いんだけど、まさかグレンベールの所に俺1人で行けって事じゃないよね?別にグレンベールと知り合いじゃないんだけどさ、俺。一緒に行く気ないのかな。
「俺と一緒にさ…」
俺がそう言い出したら、片眼鏡男は笑顔で手を振って、
「行ってらっしゃい…!」
そう言いやがった。あれ、俺が困った時に助けてくれるんじゃなかったの?まぁ、もう1人の俺との約束なのかも知れないけどさ。
「君が、女神アンメイレンによる転生を受けていない事が、何を意味するのか、私はそれを確認する事にしよう。今、実はグレンベールは消息不明なんだ。そう簡単に見つからないはずだ。街の住人達から話を集め、行動に移してくれ」
片眼鏡男はそう言うと、笑いながら平手打ちを食らわしてきた。
痛えな!まだ、これやられないといけないの。凄く悪い癖なので、すぐ様直した方がいいぞ。あー、今ので、首やられた…。
「私の知っている君なら、その位はやれる男だった。困った事のうちに入らないんじゃないのか?しかし、君が次の大陸に移るまでには、夢魔操の入手方法を考えておこう。また死なれては、私も困るからね」
片眼鏡男はそう言うと、笑いながら踵を返して、去っていった。
うーん、片眼鏡男とは、あまりうまくコミニュケーションを取れなかった様な気がするんだけど、もう1人の俺は、うまくやったんだろうな。
俺の不思議な力が何なのかも知りたいから、またあの街に戻って、しもべに聞くべきなのかも知れないな。
黒ロングコートの片眼鏡男は眉間にしわを寄せ、重い溜め息を吐き出した。
「その男の持つ夢魔操の器は、細長い軽量鉄箱で、3つの蓋付きのゲージが横並びであるんだが、その中に、あるものを入れる事により、どんな願いも叶えられると言われているのだ」
「どんな願いでも…か」
俺は目を閉じて、どんな願いでもという事に思いを巡らしてみた。この世界では地球では存在しない様な、召喚獣等が存在し、魔法も、そして、オレンジジュースもある。そんな、俺の想像を超えるこの世界で、どんな願いも叶えられるものがあるという事に、想像が追いつかない。…いや、オレンジジュースはあるな。
もしかしたら、神にでもなれるというのか?いや、下々の苦言を聞くだけでも、死にそうになるだろうな。止めておいた方がいいか。
「その夢魔操のそれぞれの蓋は、開ける事はできない。ある魔法を発動し、それを介して、その3つの小さなゲージの中に直接入れるのだ」
この片眼鏡男、あるもの、ある魔法って。先ほどから、もったいぶるなぁ。
醤油にウニを混ぜるとプリンの味がするとかいう話を聞いた事があるけど、そこに牛乳を混ぜたら、ミルクプリンとか。その夢魔操はミキサー、として役立ちました、とか。
「…1つのゲージを満たすだけでも、膨大な魔力を奪う必要があるのだが、その膨大な魔力を持つ者は、この世界には存在しないだろう。そこまで大きくはない魔力を地道に集める事もできるが、何百年かかる事か。だから、大半の場合は、大きな魔力を持つ者の魔力の核ごと、剥ぎ取り、そのゲージに収めるのだ」
片眼鏡が恐く光るな。圧が強いな、この男は…。
「夢魔操と対になる魔法、吸魔晶を受けた対象者は、30分以内に、一定量の魔力を奪われ、魔力の核も奪われ、夢魔操にひとゲージ分、贈り物をする事になる訳だ」
何かとてつもなく難しい話になってきたな。要するに、かなり力を持つ魔法使いを3人、魔法使いじゃなくなるまで魔力を奪うという事かな。でも、そうするためには、そもそも吸魔晶という魔法を使えないと意味がないか。その前に、もう1人の俺を殺した奴から夢魔操を奪わなければいけないし。どれを1つ取っても、激しく困難だ。
「夢魔操を手に入れるには、第7大陸へ行く必要があるが、まずは中央に位置する第1大陸への扉を開かなければならない。今、閉鎖されているが、解放する権限を持つ炎真大将グレンベールに会わなければならないだろう」
また出た、グレンベールという男の話。シュティールにも言われたな。この大陸で力を持つ男で、ギルロの配下の高天魔四大将の一人なんだろう?俺が気軽に会える存在ならいいけどさ、そうはならない気がするんだけど。ああ、そうか。この片眼鏡男がついて来てくれるんなら、そのまま話してくれればいいか。ついでに、ギルロの体と魂が何処にあるのか聞いてくれれば、地球に帰れる可能性がもう少し上がるかな。
片眼鏡男は俺をまじまじと見つめ、片眼鏡を外す。そして、それに向けてはぁーっと息を吐いた。何か片眼鏡にくっついて、見づらくでもなっていたのかな。
吐息で曇らせた片眼鏡をそのまま装着しやがった。でも、そんなに気温低くないから、すぐに片眼鏡のレンズの曇りは晴れたけど。何か意味のある行動でしたか?今の…?
「さぁ、会ってくるといい…!」
清々しい表情で言っているところ、悪いんだけど、まさかグレンベールの所に俺1人で行けって事じゃないよね?別にグレンベールと知り合いじゃないんだけどさ、俺。一緒に行く気ないのかな。
「俺と一緒にさ…」
俺がそう言い出したら、片眼鏡男は笑顔で手を振って、
「行ってらっしゃい…!」
そう言いやがった。あれ、俺が困った時に助けてくれるんじゃなかったの?まぁ、もう1人の俺との約束なのかも知れないけどさ。
「君が、女神アンメイレンによる転生を受けていない事が、何を意味するのか、私はそれを確認する事にしよう。今、実はグレンベールは消息不明なんだ。そう簡単に見つからないはずだ。街の住人達から話を集め、行動に移してくれ」
片眼鏡男はそう言うと、笑いながら平手打ちを食らわしてきた。
痛えな!まだ、これやられないといけないの。凄く悪い癖なので、すぐ様直した方がいいぞ。あー、今ので、首やられた…。
「私の知っている君なら、その位はやれる男だった。困った事のうちに入らないんじゃないのか?しかし、君が次の大陸に移るまでには、夢魔操の入手方法を考えておこう。また死なれては、私も困るからね」
片眼鏡男はそう言うと、笑いながら踵を返して、去っていった。
うーん、片眼鏡男とは、あまりうまくコミニュケーションを取れなかった様な気がするんだけど、もう1人の俺は、うまくやったんだろうな。
俺の不思議な力が何なのかも知りたいから、またあの街に戻って、しもべに聞くべきなのかも知れないな。
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