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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生
その21
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お話しライオンの怒りが、俺に振動で伝わる。
お話しライオンの頭の上に、俺がいる。俺の体の中に霧蔵がいて、その力は、俺に伝わり、信じられないくらいの力が湧いてくる。これでお話しライオンとの戦いは、わからなくなったぞ。
お話しライオンは、大きな口を素早く真上に向け、荒ぶる勢いのまま、俺を食らおうとする。
ガブッ。
俺は宙を舞い、着地する。
体操の採点で言えば、10.0です。
少し離れた所で、シュティールが何を悟ったのか、ニヤニヤ笑みを浮かべている。
助ける気、全くなし!それは伝わるけど、それは仕方がないか。お話しライオンの、俺への矛先を、一度はシュティールに向けさせたのだから。
お話しライオンは、首を何回か回し、少しリラックスし始めた。自分の気を鎮めるかの様に。
「いい動きだ、餌よ。その身のこなし、先程とは違うな。まるで、別のものかの様に。本気を出した、そう捉えても良いのか?ならば、そうだな餌よ。いや、我が敵となるものよ。食らう前提での労りの心を捨て、例え肉片が粉々に吹き飛び、儂の腹を満たす事ができなくなろうとも、貴様を殺すためだけに、力を使うとしようか。なあ、我が敵よ」
お話しライオンの目の色が、黄色から染み込む様に徐々に銀色に変わる。何か、冷血な感じに見える。実際に、吐いている言葉も、冷血そのものだ。
「え…?」
お話しライオンの本領発揮。
駆け寄るというより、飛んでくる、そんな感じに思えた。間一髪、お話しライオンを何とか避ける事はできたけど、この速さ、先ほどとは、比べ物にならないくらいだ。
俺はお話しライオンを警戒しながら、大剣が落ちている場所へ、駆けていった。今度は、素手のままで牙を掴んだりとか、できそうに思えない。
あ、また離れた所から、飛んで、こっちに向かってきた。
うわっ!
また間一髪で、かわせたけど。お話しライオンは、少し俺の動きに予測を入れて突進してくる。何度もこれを繰り返されたら、いつかは捕えられてしまう。
シュティールは腕組みしてニヤニヤしているだけ。俺が死ぬかも知れないのに、おもしろそうだな、シュティールよ。あの性格の悪さは、どういう環境で育ったからなのか、わからないな。あいつの血族も同じ様ならば、死滅した方が、みんなから喜ばれるんじゃないのか?
あ、お話しライオン。飛んでくる様な感じで駆けてくる。駆ける速度を変えてきたな!変則的な動きだ。くそっ!惑わされるな!
間一髪で、かわせた。
そう言えれば良かったが、
すね当てと膝当ての防具を、簡単に剥ぎ取っていきやがった。負傷していないか手ですねと膝を触ったけど、アドレナリンが出ているせいか、少し感覚が麻痺している。多分、大丈夫だ。多分。
大剣の側まで行って、そしてその大剣を手に取った。
お話しライオンを、これで斬る。
俺はお話しライオンの方へ体を向けた。
あ、あれ?
いない!?
あ…
夢か?
もしかして、シュティールから必死に逃げていた時に頭打って、幻覚を見ていた?
まぁ、そんな訳ないから、お話しライオンを探さないと。
どこだ?
お話しライオンは!
「間抜けな郁人君。上を向けよ」
「え!?」
ガブッ!
俺はすぐ様上に目を向けた。空高く跳び上がったお話しライオンが、俺を目がけて落ちてくる。大きく開いた口の黒い牙が、俺の体に激しく噛みついた。黒い牙は、俺の体を貫く。
「お話しライオン…んんん!」
ハズレだ。
大量の土を噛んだな。どうだ?苦いだろう。俺も体育の授業でソフトボールをやった時、ホームベースに頭からヘッドスライディングをかまして、口に土を入れた事があるが、酷く苦かった。コーヒー通の人が飲むどんなコーヒーよりも苦いんじゃないか?
変わり身の術。霧蔵のおかげで、こんな事もできる様になった。
それでも、シュティールがお話しライオンの場所を教えてくれなければ、やられていたな。
あいつの本心がわからない。気まぐれか。まあ、そんなところだろうな。でないと、俺を助ける訳がないからな。
さぁ、霧蔵が体得した次元斬を使って、お話しライオンを倒すとするか。
大剣を水平に構え、息を吐く俺。行くぞ、お話しライオン!
「はぁっ!」
ドフッ!!
幾重にもなった毛布を叩いているかの様な。俺の、振り回して叩きつけた大剣の威力はお話しライオンの体に吸収され、腕には重さが残った。
お話しライオンは、全くの無傷。
何だコレは。
とても、斬れる気がしない…
怖気づいた俺は、思わず数歩後退りした。
お話しライオンの凍えそうになるほど冷たい銀色の目が俺に向けられる。そして、姿勢を低くし、飛びかかろうとしている。
まずい。
動揺した俺は、お話しライオンよりも先に動かないとという気持ちで、高く跳ぶ。
あー、お話しライオンのフェイント。
俺だけバカみたいに、空とハグするかの様に高く跳んだ。
戦える訳ないよな。
殴り合いのケンカが日常茶飯事って訳でもなかったこの俺だ、戦闘能力が限りなく0に近いのに、いきなり猛獣と対決しても、勝てはしないよな。霧蔵の力を手にしても、俺には宝の持ち腐れだ。
諦めるな、そう言っているのか?霧蔵。
諦めるんじゃない。
元々、スタートを切れてなかったんだよ俺は。
そう言えば、俺は一体、何を目指していたんだっけな。高校1年になって、それで。
何も目指してなかったのかな。
そうだな。
そんな気がしてきた。
もう、昔の事かな。
そうでもないのかな。
もう、未練はないよな。
オレンジジュース飲まなければ、良かったなー。
あーあ。
手には、大剣があるか。こんな重い大剣を持ちながら、高く跳べるのは、霧蔵のおかげだよな。ただ、間抜けな俺が、無駄に跳んじゃったけど。
大きな戦いに出るはずがさ、まさか味方に毒殺されるなんてさ、霧蔵、お前もついてないよな。しかも、仲良くしてた奴にさ。
俺より、ずっと、ずっと。努力してきたのにさ。
無念、だよな。
仲間に裏切られるために、あの大技を体得した訳じゃないのに。敵に試す前に、殺されてしまって…。
え?
霧蔵…。
そうか。
そうだった。
何を見せられていたんだ。
バカだな、俺は。
わかったよ、霧蔵!
お話しライオンが下の地面で、俺を見て、構えている。俺の落下に合わせて体当たりを食らわせ、地面に伏したところを、ガブッていこうと思っているんだろ?
俺は体を屈めてバランスを取って、腰を捻って、大剣を構えた。
来い!
お話しライオン!!
お話しライオンのいる地面まで、
距離は5m…
4m…
お前の無念を、少しでも晴らそうぜ!
一緒に行くぞ!霧蔵!!
3m…
2m!
食らえ!
お話しライオン!!
あらゆる防備を無に帰し、急所のみ捕らえる!
…外を斬らず、中の…心臓のみ斬るんだ!
これが…!
城威夜叉流…
真・次元斬!!!!!
お話しライオンの頭の上に、俺がいる。俺の体の中に霧蔵がいて、その力は、俺に伝わり、信じられないくらいの力が湧いてくる。これでお話しライオンとの戦いは、わからなくなったぞ。
お話しライオンは、大きな口を素早く真上に向け、荒ぶる勢いのまま、俺を食らおうとする。
ガブッ。
俺は宙を舞い、着地する。
体操の採点で言えば、10.0です。
少し離れた所で、シュティールが何を悟ったのか、ニヤニヤ笑みを浮かべている。
助ける気、全くなし!それは伝わるけど、それは仕方がないか。お話しライオンの、俺への矛先を、一度はシュティールに向けさせたのだから。
お話しライオンは、首を何回か回し、少しリラックスし始めた。自分の気を鎮めるかの様に。
「いい動きだ、餌よ。その身のこなし、先程とは違うな。まるで、別のものかの様に。本気を出した、そう捉えても良いのか?ならば、そうだな餌よ。いや、我が敵となるものよ。食らう前提での労りの心を捨て、例え肉片が粉々に吹き飛び、儂の腹を満たす事ができなくなろうとも、貴様を殺すためだけに、力を使うとしようか。なあ、我が敵よ」
お話しライオンの目の色が、黄色から染み込む様に徐々に銀色に変わる。何か、冷血な感じに見える。実際に、吐いている言葉も、冷血そのものだ。
「え…?」
お話しライオンの本領発揮。
駆け寄るというより、飛んでくる、そんな感じに思えた。間一髪、お話しライオンを何とか避ける事はできたけど、この速さ、先ほどとは、比べ物にならないくらいだ。
俺はお話しライオンを警戒しながら、大剣が落ちている場所へ、駆けていった。今度は、素手のままで牙を掴んだりとか、できそうに思えない。
あ、また離れた所から、飛んで、こっちに向かってきた。
うわっ!
また間一髪で、かわせたけど。お話しライオンは、少し俺の動きに予測を入れて突進してくる。何度もこれを繰り返されたら、いつかは捕えられてしまう。
シュティールは腕組みしてニヤニヤしているだけ。俺が死ぬかも知れないのに、おもしろそうだな、シュティールよ。あの性格の悪さは、どういう環境で育ったからなのか、わからないな。あいつの血族も同じ様ならば、死滅した方が、みんなから喜ばれるんじゃないのか?
あ、お話しライオン。飛んでくる様な感じで駆けてくる。駆ける速度を変えてきたな!変則的な動きだ。くそっ!惑わされるな!
間一髪で、かわせた。
そう言えれば良かったが、
すね当てと膝当ての防具を、簡単に剥ぎ取っていきやがった。負傷していないか手ですねと膝を触ったけど、アドレナリンが出ているせいか、少し感覚が麻痺している。多分、大丈夫だ。多分。
大剣の側まで行って、そしてその大剣を手に取った。
お話しライオンを、これで斬る。
俺はお話しライオンの方へ体を向けた。
あ、あれ?
いない!?
あ…
夢か?
もしかして、シュティールから必死に逃げていた時に頭打って、幻覚を見ていた?
まぁ、そんな訳ないから、お話しライオンを探さないと。
どこだ?
お話しライオンは!
「間抜けな郁人君。上を向けよ」
「え!?」
ガブッ!
俺はすぐ様上に目を向けた。空高く跳び上がったお話しライオンが、俺を目がけて落ちてくる。大きく開いた口の黒い牙が、俺の体に激しく噛みついた。黒い牙は、俺の体を貫く。
「お話しライオン…んんん!」
ハズレだ。
大量の土を噛んだな。どうだ?苦いだろう。俺も体育の授業でソフトボールをやった時、ホームベースに頭からヘッドスライディングをかまして、口に土を入れた事があるが、酷く苦かった。コーヒー通の人が飲むどんなコーヒーよりも苦いんじゃないか?
変わり身の術。霧蔵のおかげで、こんな事もできる様になった。
それでも、シュティールがお話しライオンの場所を教えてくれなければ、やられていたな。
あいつの本心がわからない。気まぐれか。まあ、そんなところだろうな。でないと、俺を助ける訳がないからな。
さぁ、霧蔵が体得した次元斬を使って、お話しライオンを倒すとするか。
大剣を水平に構え、息を吐く俺。行くぞ、お話しライオン!
「はぁっ!」
ドフッ!!
幾重にもなった毛布を叩いているかの様な。俺の、振り回して叩きつけた大剣の威力はお話しライオンの体に吸収され、腕には重さが残った。
お話しライオンは、全くの無傷。
何だコレは。
とても、斬れる気がしない…
怖気づいた俺は、思わず数歩後退りした。
お話しライオンの凍えそうになるほど冷たい銀色の目が俺に向けられる。そして、姿勢を低くし、飛びかかろうとしている。
まずい。
動揺した俺は、お話しライオンよりも先に動かないとという気持ちで、高く跳ぶ。
あー、お話しライオンのフェイント。
俺だけバカみたいに、空とハグするかの様に高く跳んだ。
戦える訳ないよな。
殴り合いのケンカが日常茶飯事って訳でもなかったこの俺だ、戦闘能力が限りなく0に近いのに、いきなり猛獣と対決しても、勝てはしないよな。霧蔵の力を手にしても、俺には宝の持ち腐れだ。
諦めるな、そう言っているのか?霧蔵。
諦めるんじゃない。
元々、スタートを切れてなかったんだよ俺は。
そう言えば、俺は一体、何を目指していたんだっけな。高校1年になって、それで。
何も目指してなかったのかな。
そうだな。
そんな気がしてきた。
もう、昔の事かな。
そうでもないのかな。
もう、未練はないよな。
オレンジジュース飲まなければ、良かったなー。
あーあ。
手には、大剣があるか。こんな重い大剣を持ちながら、高く跳べるのは、霧蔵のおかげだよな。ただ、間抜けな俺が、無駄に跳んじゃったけど。
大きな戦いに出るはずがさ、まさか味方に毒殺されるなんてさ、霧蔵、お前もついてないよな。しかも、仲良くしてた奴にさ。
俺より、ずっと、ずっと。努力してきたのにさ。
無念、だよな。
仲間に裏切られるために、あの大技を体得した訳じゃないのに。敵に試す前に、殺されてしまって…。
え?
霧蔵…。
そうか。
そうだった。
何を見せられていたんだ。
バカだな、俺は。
わかったよ、霧蔵!
お話しライオンが下の地面で、俺を見て、構えている。俺の落下に合わせて体当たりを食らわせ、地面に伏したところを、ガブッていこうと思っているんだろ?
俺は体を屈めてバランスを取って、腰を捻って、大剣を構えた。
来い!
お話しライオン!!
お話しライオンのいる地面まで、
距離は5m…
4m…
お前の無念を、少しでも晴らそうぜ!
一緒に行くぞ!霧蔵!!
3m…
2m!
食らえ!
お話しライオン!!
あらゆる防備を無に帰し、急所のみ捕らえる!
…外を斬らず、中の…心臓のみ斬るんだ!
これが…!
城威夜叉流…
真・次元斬!!!!!
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