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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その18

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大剣など、持てる状況じゃない…!

右手が…!?

燃えている!!

熱いッ!

右手を地面に生えている草に擦りつけて火を消そうとしても、消えない。地面の土に手を突っ込んでみても、消えない。このままじゃ、右手が燃え尽きて、なくなってしまう。それだけじゃなく、体全体に広がって…死!?焦りと恐怖の追いかけっこ。急に燃え出す意味がわからない。

赤々と燃える右手の、その甲に、青白い炎が一点、燃えているのに気づいた。それは赤い炎の上を動き、何かを描いている様に見えた。赤い炎に、青い炎のイルミネーション。この状況では、全く綺麗とは思えない。頼むから、あのお話しライオンの頭の上にでも移動してやってくれないか!?

青い炎は何を描いているのか、少し気づいた様な気がした。英語?いや、中国語?いや、それは全然違う。漢字とかじゃなく、英語のローマ字に近いのか?言葉の様にも、紋章の様にも、見える。青白い炎は、俺の手の甲に何かを描けば描くほど、火傷の痛みから解放されていく気がした。

その青白い炎は何かを描き切ると、赤い炎と混ざり合い、紫色の炎に色を変える。そして、その炎は、手の甲から手首、腕へと上がっていった。

ヤバい!今度は腕に炎が移る!死ぬのか、俺は!?俺は過呼吸気味になって、混乱していく。成すすべもなく、ただ、左手で右手の腕を強く押さえつけた。

だけど、その炎は、体の中に入り込むかの様にして、すっと消えていった。

冷や汗を流しながら、右手右腕を確認する。何もなっていないか。それどころか、右手右腕は、大して熱くはなっていない。先ほどの焼ける様な熱さは、何だったのか。幻覚、なのか。

少しだけ落ち着いた俺に、大きくそして鋭い黄色の目が、俺の顔の前で光る。次の恐怖が再び俺を混乱状態に戻していった。

「餌よ!燃えた火は消えたな。食べられ方をお前なりに考えた様だが、構わぬぞ。そのまま、生肉で頂くとしようか」

「わぁぁ…!?」

目の前に迫ったお話しライオンの黒光りする牙が、俺を捉えようと、口の中を大きくして見せる。

この牙が俺の喉元に入り、窒息死させた後、ゆっくりと食べるのか、それとも、生きたままの残酷極まりない踊り食いをして見せようって言うのか。

もう終わり。

ギルロの体と魂がどうとか…

もうどうでもいい。

しもべに殺され、この世界に転生された時点で、全てが終わっていたのさ。

そもそも、俺の人生、あのまま生きていても、大して成功しそうでもなかったしな。息を吸い込む時の酸素の無駄使いにならずに済んだなら、少しは地球のためになったかな。

あ、そう言えば、地球の時間が止まっているとか言ってなかったか?

まぁ、誰か動かすだろう。気にする事はないか。

気にする事かも知れないが、すぐ目の前に死がやってきている俺が考える事もない。

いや、それでも考える事かも知れないが、でも…

いや!

でも…

いも!

いも??

「あ、あれ?」

お話しライオンが10mくらい、俺との距離を空けているな。何だ、俺の体臭がかなりキツかったのか。だとしたらショックだな。どこかで風呂にでも入りたいくらいだ。

何だ、この模様。

俺の手の甲と腕に、何かの黒い模様が描かれている。これは…

「うおっ!?」

俺、大剣を片手で楽々と持ち上げてるぞ!?ど、どうしたんだ?この剛力、どうやって手に入れたんだ。

あ、お話しライオンが、また食おうとして駆けて寄ってきているな。

この剛力があれば、少しはいい勝負ができそうか?

ようし。

やるか…!
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