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第一章 オレン死(ジ)ジュースから転生

その11

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ギルロの事を教えてくれないか、とこの金髪君であるシュティールに聞くと、僕なんかよりも、ここからそう遠くないフルワットの街にいるガインシュタット家の人にでも聞いたらどうか、と。早速、こいつの価値が下がったな。この世界に詳しい住人がいた方がいいだろうとか言っておいて、いざそれを使おうとしたら、かわしてきやがる。

「ガインシュタット家の人が、何でギルロの事が詳しいの?親戚とか?」

そう聞いたら、シュティールは首を横に振って、

「恨みを持っているから、いい加減な情報は持っていないんじゃないかな?」

そう言ってきた。

火に油を注ぐ様な事にならなければいいけど。というか、何でそんな奴らに聞かなければならないんだ。このシュティールは、リスクの高い方から順に提案する癖があるのか?性格悪そうだし、きっとそうなんだろうな。マジで、使えねぇ。もっと、聞きやすくて情報を持っていそうな感じの人はいないのか。


街の門番が出入り口の門の両脇にいる。

「何て言ったら、この街を出られるんだ?」

このシュティールと口を利くのもムカつくが、仕方がない。

「扉の向こうに虹がある、そう言えば、通れるよ。この街は、とても慎重で、街の組合が決めた通りの合言葉を言わないと、行き来できないんだ」

屈託のない笑みで、シュティールはそう言った。その笑みが、他人を罠に掛けるんだ。だが、さすがにこの合言葉は本当だろう。嘘をつく理由がない。

門番の前で、俺は慎重に言葉を吐いた。

「扉の向こうに、虹がある…」

よし、正確に言えた。噛んだらどうしようかと思ったぞ。自分で言うのも何だが、声の高さ、口の開き具合、滑舌、全てにおいて完璧だ。

「…良かったね。じゃあ、行ってきな」

門番は、死んだ様な目で俺を見て、喋るのもダルそうな感じで言った。完全に頭おかしい奴への対応だった様な気がするが…!

「お互いの合言葉が、今のやり取りなんだ。覚えておいた方がいいよ」

そう言って、また穢れのない笑みを浮かべる。こんなにも信用できない男を側に置いてもいいのだろうか。いや、しかし、この合言葉が嘘とはまだわからない。実際に、門番を抜け、街から出られたんだから。

俺達は、街から出て、20m程度歩いた時、シュティールが急に俺の方を見る。

「あ、最後にオレンジジュースもう一杯飲んでくるから、ここで待っていてよ」

そう言って、急ぎ足で街の方へ向かっていった。



もちろん、



俺は全力でシュティールを追いかけていき、奴に追いつくと、呪いの言葉を吐く様に、奴の耳元で囁いた。

「さっきの合言葉、今度はお前が言うんだろ?そうだよな、だってそれ言わないと、通れないもんな!?」

俺は、完全にムキになってシュティールに言った。だって、信用なんてできないからな。何か1つでも本当の事を言うという確証を得たい!

そうしたら…

「僕は、顔パスなんだ」

屈託のない笑みで言うシュティール。

へぇぇ…?



そして、俺はさらにこのシュティールへの信用度を下げるのであった。
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