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悪魔王の章
piece29 お人形さん
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「テンダー・レイ!!」
僕は、細身剣を相手に向け、光線をバタルドンの心臓目がけて、放った。
視界にも止まらない光速をもつ、この青白い光は、一瞬でバタルドンに届いた。
バタルドンは、外壁まで吹き飛び、頭を強打し、倒れていった。
チェダーは、もう1人の男の子に引っ張られ、なんとかこの場から去ろうとする。
バイカルの恐ろしく冷たい目が、僕の方へ向いた。
マイハークは、この一瞬の隙に、バイカル相手に、攻撃呪文を詠もうとしていた。
「フハハッ!マイハーク…その魔法を放てば、今度はこの小僧が、死ぬぞ?」
バイカルは、マイハークのそばに近寄り、僕を指差した。
あ…
気づけば、バタルドンは、僕の頭をつかみ上げ、鋭い爪を僕ののど元に突き立てていた。
なんて、恐ろしく俊敏、なんだ。
「さぁ、お前の死か、この小僧の死か。選ぶがよい」
マイハークは、目の光を落とした。
「ば、バカだ…」
僕は、力を込めて、バイカルに言った。
「僕の師匠は、お前が…考えてる様な、甘ちゃんじゃ、ないよ…」
バタルドンの爪が、のど元に食い込み、息がつまる。
「きっと、きっと…」
マイハーク。
「お前らは、マイハークに。こ、殺さ、れ、る…」
マイハークの弱味になるくらいなら、僕の命は、ここまで、だ…
細身剣の切っ先を自分ののど元に向けた。
さよなら、マイハーク…
今まで、
ありがとう…
その時、
大きな声で、
子供が叫んだ。
「…し!」
なんだ…?
「弱…虫!」
よわ、い?
「弱虫!弱虫!嫌いだ…、大っ嫌い!」
チェダーが涙を流して、必死に叫んでいた。
そうか…
君が。
…僕に
言葉を、くれるなんて…
僕は、弱虫だから。
あんな事になって、みんなを道連れにする様で、苦しかった。
マイハークの言った…
救えない命もあれば、
まだ救える命もある、
僕の存在は。
今、どこにも、位置しない…
でも、
楽になろうとして…いるだけなのかも、知れない。
みんな、戦っているのに。
チェダー、君もずっと、悔しくて、苦しい思いをしながらも、
生き続けていたんだろう。
たくさんの家族に、囲まれていたのに、今は。
僕も…
悔しいよ。
君達を…
聖術騎士を…
仲間を…
みじめな思いを、させた。
僕は、細身剣の切っ先をバタルドンの腕に向け、斬りつけた。
バタルドンは、僕を離し、そして鼻息を荒くして、睨みつけた。
足元には、僕のお人形。
目がぱっちりと開いて、青白く光っている。
僕も、貴方も、本当は、お互いに恋しがっていた…
そうだろう?
マイハーク。
今まで、僕の心が壊れない様に、守ってくれて、ありがとう。
本当は、少し気づいていたんだよ。
このお人形は…
僕の、
半身…
僕は、細身剣を相手に向け、光線をバタルドンの心臓目がけて、放った。
視界にも止まらない光速をもつ、この青白い光は、一瞬でバタルドンに届いた。
バタルドンは、外壁まで吹き飛び、頭を強打し、倒れていった。
チェダーは、もう1人の男の子に引っ張られ、なんとかこの場から去ろうとする。
バイカルの恐ろしく冷たい目が、僕の方へ向いた。
マイハークは、この一瞬の隙に、バイカル相手に、攻撃呪文を詠もうとしていた。
「フハハッ!マイハーク…その魔法を放てば、今度はこの小僧が、死ぬぞ?」
バイカルは、マイハークのそばに近寄り、僕を指差した。
あ…
気づけば、バタルドンは、僕の頭をつかみ上げ、鋭い爪を僕ののど元に突き立てていた。
なんて、恐ろしく俊敏、なんだ。
「さぁ、お前の死か、この小僧の死か。選ぶがよい」
マイハークは、目の光を落とした。
「ば、バカだ…」
僕は、力を込めて、バイカルに言った。
「僕の師匠は、お前が…考えてる様な、甘ちゃんじゃ、ないよ…」
バタルドンの爪が、のど元に食い込み、息がつまる。
「きっと、きっと…」
マイハーク。
「お前らは、マイハークに。こ、殺さ、れ、る…」
マイハークの弱味になるくらいなら、僕の命は、ここまで、だ…
細身剣の切っ先を自分ののど元に向けた。
さよなら、マイハーク…
今まで、
ありがとう…
その時、
大きな声で、
子供が叫んだ。
「…し!」
なんだ…?
「弱…虫!」
よわ、い?
「弱虫!弱虫!嫌いだ…、大っ嫌い!」
チェダーが涙を流して、必死に叫んでいた。
そうか…
君が。
…僕に
言葉を、くれるなんて…
僕は、弱虫だから。
あんな事になって、みんなを道連れにする様で、苦しかった。
マイハークの言った…
救えない命もあれば、
まだ救える命もある、
僕の存在は。
今、どこにも、位置しない…
でも、
楽になろうとして…いるだけなのかも、知れない。
みんな、戦っているのに。
チェダー、君もずっと、悔しくて、苦しい思いをしながらも、
生き続けていたんだろう。
たくさんの家族に、囲まれていたのに、今は。
僕も…
悔しいよ。
君達を…
聖術騎士を…
仲間を…
みじめな思いを、させた。
僕は、細身剣の切っ先をバタルドンの腕に向け、斬りつけた。
バタルドンは、僕を離し、そして鼻息を荒くして、睨みつけた。
足元には、僕のお人形。
目がぱっちりと開いて、青白く光っている。
僕も、貴方も、本当は、お互いに恋しがっていた…
そうだろう?
マイハーク。
今まで、僕の心が壊れない様に、守ってくれて、ありがとう。
本当は、少し気づいていたんだよ。
このお人形は…
僕の、
半身…
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