人形と少年騎士と

悪魔王の章

piece15 貧民街にて

はぁ…

はぁ…

地下道を抜けた。

板をかんたんに組み合わせた手作りの家々が、200メートルほどの長い道に、雑に並べられている。

外壁側には、べったり地面に座った老人が、かけ回る子供達を力なく目で追っている。

貧民街、だ。

はぁ…

あいつ、どこに行ったのかな。

かんたんに見失った。

僕は、間抜けだ。

ここの人達、着ている服は、意外とまともそうに見えた。

ただ、汚れている。

盗んで、ずっと同じものを着ている？

それとも、元々違った所に住んでいた？

まぁ、いいや。

お人形は、どこだ。

あいつ、どこへ行ったんだ。

鼻水を垂らした7才くらいの子が、ぼうっと僕を見つめている。

「おい、僕の人形を持った奴が、走って来なかったか？」

そう聞いた…

僕が間違っていた。

この小僧は、ニコッと笑顔を見せただけだった。

おもしろそうだな。

何かおもしろい事を言った所があったら、教えてくれないか。

先を急ごう。

家々の窓口らしき所から、中の様子が見て取れるけど、どの家も汚な過ぎて、お人形があるかよくわからない。

でも、何となく引きつけられる場所があった。

あのお人形の場所、わかる気がしたんだ。

僕達は、運命で結びついているんだね。

今、行くよー。

「！？」

僕は、お人形の場所に向かっていたはずだった。

足を止めた。

ここに、あるのかも知れない。

けど…

板張りの家の窓口から、お人形の様に、力なく座っていた、僕より少し年下の子が目についた。

あ…

僕は、この子を。

この子を…

「きっと…」

知っているんだ。