人形と少年騎士と

sayure

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悪魔王の章

piece10 久しぶり

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気づけば、僕は師匠のマイハークの胸の中にいた。

マイハークは、僕の顔を見て、安心した様に頷き、座っていて腰が痛くなったのか、腰を叩いて、立ち上がった。

僕も、正座し続けていたのか、足が痺れて、悶絶した。僕は、立ち上がれない。

僕らの他に、メルトリー兵が10人くらいと、メーヘンハイユの紋章をつけた兵が1人いた。

この場所は、マドゥーサを倒した場所だ。

彼らがここに着いてから、そう時間が過ぎていない様だった。

「マイハーク様、お疲れ様でした」

黒髪で、硬い髪質なのか、毛がやや跳ねている20才過ぎくらいのメーヘンハイユ紋章の兵が、マイハークに話しかけていた。

「魔物の方は、大丈夫なんじゃな」

「魔物の通り穴は、塞いであります。マイハーク様の言う通りでしたね」

マイハークと彼のやり取りで、魔物のトンネルはすでに塞いであったとわかった。

身長は2メートル近くあるのかな、このメーヘンハイユ紋章の兵が、高い位置から僕を見下ろしている。

「この小僧は、何ですか?」

驚くほど、まっすぐに言ってきたな。

「わしの弟子じゃ。あまり気にせんでくれ」

マイハークは、そう言って、辺りを見回した。

ありがとう、師匠。ただ、言葉が足りませんよ。僕は、一応メーヘンハイユ王国の魔法剣士、ですからね。

あ、口に出して言おう。

「ありがとう、師匠。ただー…」

マイハークに、頭を叩かれた。

何だよ。

足元にあるお人形を拾い上げ、チリを払い、ギュッと抱きしめた。

僕と一緒に、行きましょうね。

こいつらは、捨てておけばいい。

「一人前に、白銀の鎧?いや、違うのか。しかし、こいつ」

…何?

「マイハーク様、俺にも、同じものを下さいよ。俺にも、この同じ形の白銀の鎧を」

この能なし君は、礼節もクソもなく、口を開く。

「おいガキ、そのお人形をくれよ。そのふざけた…さ」

いいだろう、魔物同様に、やっつけてやろう。

マイハークは、僕の頭をつかみ、無理矢理下を向かせた。

いてー。

「この男は、かつてメーヘンハイユのキヴァリエ詠世魔法騎士団だった者じゃ」

マイハークはそう言った。

だから、偉そうか。フン、僕だって、魔法剣士だぞ。お前には、負けないよ。

「キヴァリエ詠世魔法騎士団の…」

悪口部隊の、能なし君だろう。

「聖術騎士の一人、じゃ」

そう…か。

だったら、僕がここに来る必要がなかったじゃないか。

死にそうに…なったじゃないか。

この男と一緒に、マドゥーサを倒せばよかった…

僕は、いらなかっただろう。

メーヘンハイユの精鋭が、いるんならさ。

「抑えてくれ、シュツハイド。お前の、気持ちは…」

マイハークは、このシュツハイドと呼ばれた能なし君の気をなだめようとしている。僕は、放置か。

じゃあ、僕は放置君とでも呼んでくれよ。

「聖術騎士は、あの戦いで。辛いな。裏切り者扱いだった。でも、今はまた、お前達は、英雄ぞ」

放置君…

シュツハイドの目が怒りを表し、それをマイハークからそらす様に、地面に視線を落とした。

「聖術騎士は、死にましたよ…」

そのシュツハイドの言葉に、マイハークは、息を吐いて、首を振っていた。

「目の前に、おるではないか」

マイハークは、つぶやく様に、言った。

僕は、こいつが嫌いだと思う。

でも、不思議だね。

こいつの、感情が僕の中に入り込んでくる、そんな気がした。

メーヘンハイユに、帰りたくても、帰れないんだ。

こういう人も、いるんだね。

自分の心がそうさせないのか、メーヘンハイユに帰れない理由が他にあるのか、わからないけど。

母国の人達と会って、こう言いたいんでしょ?

久しぶり。
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