10 / 31
悪魔王の章
piece10 久しぶり
しおりを挟む
気づけば、僕は師匠のマイハークの胸の中にいた。
マイハークは、僕の顔を見て、安心した様に頷き、座っていて腰が痛くなったのか、腰を叩いて、立ち上がった。
僕も、正座し続けていたのか、足が痺れて、悶絶した。僕は、立ち上がれない。
僕らの他に、メルトリー兵が10人くらいと、メーヘンハイユの紋章をつけた兵が1人いた。
この場所は、マドゥーサを倒した場所だ。
彼らがここに着いてから、そう時間が過ぎていない様だった。
「マイハーク様、お疲れ様でした」
黒髪で、硬い髪質なのか、毛がやや跳ねている20才過ぎくらいのメーヘンハイユ紋章の兵が、マイハークに話しかけていた。
「魔物の方は、大丈夫なんじゃな」
「魔物の通り穴は、塞いであります。マイハーク様の言う通りでしたね」
マイハークと彼のやり取りで、魔物のトンネルはすでに塞いであったとわかった。
身長は2メートル近くあるのかな、このメーヘンハイユ紋章の兵が、高い位置から僕を見下ろしている。
「この小僧は、何ですか?」
驚くほど、まっすぐに言ってきたな。
「わしの弟子じゃ。あまり気にせんでくれ」
マイハークは、そう言って、辺りを見回した。
ありがとう、師匠。ただ、言葉が足りませんよ。僕は、一応メーヘンハイユ王国の魔法剣士、ですからね。
あ、口に出して言おう。
「ありがとう、師匠。ただー…」
マイハークに、頭を叩かれた。
何だよ。
足元にあるお人形を拾い上げ、チリを払い、ギュッと抱きしめた。
僕と一緒に、行きましょうね。
こいつらは、捨てておけばいい。
「一人前に、白銀の鎧?いや、違うのか。しかし、こいつ」
…何?
「マイハーク様、俺にも、同じものを下さいよ。俺にも、この同じ形の白銀の鎧を」
この能なし君は、礼節もクソもなく、口を開く。
「おいガキ、そのお人形をくれよ。そのふざけた…さ」
いいだろう、魔物同様に、やっつけてやろう。
マイハークは、僕の頭をつかみ、無理矢理下を向かせた。
いてー。
「この男は、かつてメーヘンハイユのキヴァリエ詠世魔法騎士団だった者じゃ」
マイハークはそう言った。
だから、偉そうか。フン、僕だって、魔法剣士だぞ。お前には、負けないよ。
「キヴァリエ詠世魔法騎士団の…」
悪口部隊の、能なし君だろう。
「聖術騎士の一人、じゃ」
そう…か。
だったら、僕がここに来る必要がなかったじゃないか。
死にそうに…なったじゃないか。
この男と一緒に、マドゥーサを倒せばよかった…
僕は、いらなかっただろう。
メーヘンハイユの精鋭が、いるんならさ。
「抑えてくれ、シュツハイド。お前の、気持ちは…」
マイハークは、このシュツハイドと呼ばれた能なし君の気をなだめようとしている。僕は、放置か。
じゃあ、僕は放置君とでも呼んでくれよ。
「聖術騎士は、あの戦いで。辛いな。裏切り者扱いだった。でも、今はまた、お前達は、英雄ぞ」
放置君…
シュツハイドの目が怒りを表し、それをマイハークからそらす様に、地面に視線を落とした。
「聖術騎士は、死にましたよ…」
そのシュツハイドの言葉に、マイハークは、息を吐いて、首を振っていた。
「目の前に、おるではないか」
マイハークは、つぶやく様に、言った。
僕は、こいつが嫌いだと思う。
でも、不思議だね。
こいつの、感情が僕の中に入り込んでくる、そんな気がした。
メーヘンハイユに、帰りたくても、帰れないんだ。
こういう人も、いるんだね。
自分の心がそうさせないのか、メーヘンハイユに帰れない理由が他にあるのか、わからないけど。
母国の人達と会って、こう言いたいんでしょ?
久しぶり。
マイハークは、僕の顔を見て、安心した様に頷き、座っていて腰が痛くなったのか、腰を叩いて、立ち上がった。
僕も、正座し続けていたのか、足が痺れて、悶絶した。僕は、立ち上がれない。
僕らの他に、メルトリー兵が10人くらいと、メーヘンハイユの紋章をつけた兵が1人いた。
この場所は、マドゥーサを倒した場所だ。
彼らがここに着いてから、そう時間が過ぎていない様だった。
「マイハーク様、お疲れ様でした」
黒髪で、硬い髪質なのか、毛がやや跳ねている20才過ぎくらいのメーヘンハイユ紋章の兵が、マイハークに話しかけていた。
「魔物の方は、大丈夫なんじゃな」
「魔物の通り穴は、塞いであります。マイハーク様の言う通りでしたね」
マイハークと彼のやり取りで、魔物のトンネルはすでに塞いであったとわかった。
身長は2メートル近くあるのかな、このメーヘンハイユ紋章の兵が、高い位置から僕を見下ろしている。
「この小僧は、何ですか?」
驚くほど、まっすぐに言ってきたな。
「わしの弟子じゃ。あまり気にせんでくれ」
マイハークは、そう言って、辺りを見回した。
ありがとう、師匠。ただ、言葉が足りませんよ。僕は、一応メーヘンハイユ王国の魔法剣士、ですからね。
あ、口に出して言おう。
「ありがとう、師匠。ただー…」
マイハークに、頭を叩かれた。
何だよ。
足元にあるお人形を拾い上げ、チリを払い、ギュッと抱きしめた。
僕と一緒に、行きましょうね。
こいつらは、捨てておけばいい。
「一人前に、白銀の鎧?いや、違うのか。しかし、こいつ」
…何?
「マイハーク様、俺にも、同じものを下さいよ。俺にも、この同じ形の白銀の鎧を」
この能なし君は、礼節もクソもなく、口を開く。
「おいガキ、そのお人形をくれよ。そのふざけた…さ」
いいだろう、魔物同様に、やっつけてやろう。
マイハークは、僕の頭をつかみ、無理矢理下を向かせた。
いてー。
「この男は、かつてメーヘンハイユのキヴァリエ詠世魔法騎士団だった者じゃ」
マイハークはそう言った。
だから、偉そうか。フン、僕だって、魔法剣士だぞ。お前には、負けないよ。
「キヴァリエ詠世魔法騎士団の…」
悪口部隊の、能なし君だろう。
「聖術騎士の一人、じゃ」
そう…か。
だったら、僕がここに来る必要がなかったじゃないか。
死にそうに…なったじゃないか。
この男と一緒に、マドゥーサを倒せばよかった…
僕は、いらなかっただろう。
メーヘンハイユの精鋭が、いるんならさ。
「抑えてくれ、シュツハイド。お前の、気持ちは…」
マイハークは、このシュツハイドと呼ばれた能なし君の気をなだめようとしている。僕は、放置か。
じゃあ、僕は放置君とでも呼んでくれよ。
「聖術騎士は、あの戦いで。辛いな。裏切り者扱いだった。でも、今はまた、お前達は、英雄ぞ」
放置君…
シュツハイドの目が怒りを表し、それをマイハークからそらす様に、地面に視線を落とした。
「聖術騎士は、死にましたよ…」
そのシュツハイドの言葉に、マイハークは、息を吐いて、首を振っていた。
「目の前に、おるではないか」
マイハークは、つぶやく様に、言った。
僕は、こいつが嫌いだと思う。
でも、不思議だね。
こいつの、感情が僕の中に入り込んでくる、そんな気がした。
メーヘンハイユに、帰りたくても、帰れないんだ。
こういう人も、いるんだね。
自分の心がそうさせないのか、メーヘンハイユに帰れない理由が他にあるのか、わからないけど。
母国の人達と会って、こう言いたいんでしょ?
久しぶり。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

荷車尼僧の回顧録
石田空
大衆娯楽
戦国時代。
密偵と疑われて牢屋に閉じ込められた尼僧を気の毒に思った百合姫。
座敷牢に食事を持っていったら、尼僧に体を入れ替えられた挙句、尼僧になってしまった百合姫は処刑されてしまう。
しかし。
尼僧になった百合姫は何故か生きていた。
生きていることがばれたらまた処刑されてしまうかもしれないと逃げるしかなかった百合姫は、尼寺に辿り着き、僧に泣きつく。
「あなたはおそらく、八百比丘尼に体を奪われてしまったのでしょう。不死の体を持っていては、いずれ心も人からかけ離れていきます。人に戻るには人魚を探しなさい」
僧の連れてきてくれた人形職人に義体をつくってもらい、日頃は人形の姿で人らしく生き、有事の際には八百比丘尼の体で人助けをする。
旅の道連れを伴い、彼女は戦国時代を生きていく。
和風ファンタジー。
カクヨム、エブリスタにて先行掲載中です。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる