人形と少年騎士と

sayure

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悪魔王の章

piece1 お人形

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金髪の男の子の人形に必死に話しかける僕は、きっと周りから、気持ち悪い奴だと、思われているだろうか。

「大丈夫だよ。お人形さんの君だって、立ち上がれるよ。だって、こんなにも…愛されているんだから」

ん?

誰だ、今悲鳴を上げたのは!?

助けてやるぞ。

この僕が。

まぁ、いい。

取り敢えず、入り口の扉をしっかりと閉めたか、もう一度確認をしよう。

よし、大丈夫だ。

そうだ、髪を梳かしてあげようね。

櫛を持ってくるからね。

この家は、大きな本棚ばかり。本当につまらない所なんだ。

僕の部屋は、階段を上がった二階にあるんだけど、とても狭くて、光もあまり入らないから、ほとんどは一階の居間でくつろいでいるんだ。

でも、私物はちゃんと後で部屋へ持っていく。

師匠のマイハークが、下をよく見ずに歩くから、僕の物がひたすら破壊されていくんだ。

ほら。

外から足音が響いてくる。

さて、行きましょう。

僕の部屋へ避難だ。

扉から破裂音が響く。扉の破片が辺りに飛び散り…あ、違った。扉を開けたのか。大魔神が。

いや、師匠のマイハークだ。

マイハークは、結構歳のいったジジイだ。

太い眉からわずかに覗く目が僕を捉えている。口髭が口を覆い…どこが口だ?

「お人形さんは、元気かな!?」

そして、マイハークとの会話が始まる。

「とても元気そうにしているよ。今日はたくさん、話をしていたんだよ」

「心を開いてくれたのかな?」

「内気なんだ。虐める人は、嫌いだって言ってるよ」

「12歳のお前には、心を開いたか?」

「さぁ、どうだろうね」

マイハークは、少し呆れ顔を見せて、溜め息を吐いた。そして、気が逸れ、右から左へ広く広がる本棚に目をやり、何かを確認する。

さぁ、行きましょう。

邪魔はしない様にね。

人形を抱え、二階へ上がろうとした時、マイハークが呼び止めた。

「近々、またレイハルク国王から呼び出されるかも知れん。準備だけは怠るなよ」

そう言い、再び本棚に目をやった。

「怠りは…しない。そうした事も、ないだろう?」

「知らん。やっておるのなら、良い」

師匠のマイハークは、魔法使いで、また剣術にも長けている。

僕が12歳で、魔法剣士としての称号を得たのは、このマイハークの教えとコネのお陰だろう。

魔法と言えば…

そう。

今度は、御馳走を目の前に並べる魔法を教えてもらいたい。

可能か?

可能なのか?

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