11 / 113
第1章 ドラゴンバスター
動向(for three days)
しおりを挟む
かつてのリガード竜騎士団だった老兵フリディエリが、病により、床に伏せていた。
もう、先がない。
僕と、副騎士長ハルガルドが、彼の住まいのハーディーン地区へ向かった。
大きく地面が陥没した跡がある。
僕は、知っている。
貴覇竜が暴れた時に、火の玉を吐いた。
そして、この場に落ちたんだ。
ラリュナピュートは、苦しんでいた。
それでも、フリディエリは、貴覇竜をウイプル王国の救世主だったと言った。
数々の戦いは、ラリュナピュートなしでは勝利を手にする事はなかった、と。
その中でも、小国ウイプルを攻め落とそうと、ハイヤイン王国軍が侵攻してきたフレデンスの戦いで、
数千の敵兵を倒したその姿は、今も忘れない、と。
ただ、小国ウイプルは、元々は小国でもなかった。
北西にある、かつてのウイプル王国だった、ダルレアス自治領が、今もウイプル王国と和解をしない、それが心残りらしい。
ウイプル王国軍は、昔に友好国のヘンデルソン王国に侵攻して、幸福の象徴である巨大な鷲オーバーシルゾを殺した。
それが、彼らは許せない、と。
そしてそれを忌み嫌うザシンを長として、ダルレアス地域をダルレアス自治領として独立した。
あちらにも、ツォルバ竜騎士団という精鋭部隊がいる。
フリディエリは、ハルガルドからウイプル王国の動きを聞き、力なく笑った。
竜は、本当に死んだのだろうか、と。
ハルガルドが、小さく頷いた。
フリディエリは、悲しそうに天井に目をやっていた。
貴方には、ラリュナピュートが、怒り狂っていたのではなく、苦しんでいたのだと、
わかっていた?
フリディエリ…さん。
彼は、夜に、あの世へ旅立った。
ジスエルの21日
王城の見張り台にて
___________________
同い年のビエルカ。
僕の顔を見て、気まずそうにしていた。
別に、慣れているさ。
イージブの酒場へ行くのか?
行けばいい。
僕は、そこへは行かないから。
最近は、他国の動向で、家にも帰っていないし、ずっと帰らなくてもいい。
居場所は、戦場。
コーリオ王国への援軍に、僕も加えてくれれば、良かったのに。
去ろうとした僕に声をかけて、
父親を探しているのか、と言ってきた。
探してはいない。
探しても。
仕方がない。
ビエルカの父親は、僕の父親を知っていると言っていたから。
何か知っているのだろう。
生きているみたいだけど、という言葉を聞いて、そして。
ビエルカの表情を見て、僕は返事をした。
わかった、と。
君の表情を見て、わかったんだ。
一度も会った事がないという事が、物語る。
わかってるさ。
あちらは、会いたくないんだろう。
いいさ。
僕も、会いたくはない。
ジスエルの22日
王城の見張り台にて
___________________
ドメイル教信仰国オルフブ王国の軍勢は、コーリオ王国軍とウイプル王国増援軍に対して、優勢。
その相手の兵が、骸の姿をしていたという報告がある。
コーリオ王国は、東のアスデン王国に軍の救援要請をしたらしい。
リガード竜騎士団騎士長アーマンは、王城で再び国王と話をしている。
ドメイル教の推奨する聖戦とは。
南には、今は大人しくも、帝国主義のカーディアもある。
お母様の好きなウイプル王国を、守れる様に。
どの国だろうと、
容赦はしない。
それが、貴女の望みでしょう。
ジスエルの23日
王城の見張り台にて
___________________
もう、先がない。
僕と、副騎士長ハルガルドが、彼の住まいのハーディーン地区へ向かった。
大きく地面が陥没した跡がある。
僕は、知っている。
貴覇竜が暴れた時に、火の玉を吐いた。
そして、この場に落ちたんだ。
ラリュナピュートは、苦しんでいた。
それでも、フリディエリは、貴覇竜をウイプル王国の救世主だったと言った。
数々の戦いは、ラリュナピュートなしでは勝利を手にする事はなかった、と。
その中でも、小国ウイプルを攻め落とそうと、ハイヤイン王国軍が侵攻してきたフレデンスの戦いで、
数千の敵兵を倒したその姿は、今も忘れない、と。
ただ、小国ウイプルは、元々は小国でもなかった。
北西にある、かつてのウイプル王国だった、ダルレアス自治領が、今もウイプル王国と和解をしない、それが心残りらしい。
ウイプル王国軍は、昔に友好国のヘンデルソン王国に侵攻して、幸福の象徴である巨大な鷲オーバーシルゾを殺した。
それが、彼らは許せない、と。
そしてそれを忌み嫌うザシンを長として、ダルレアス地域をダルレアス自治領として独立した。
あちらにも、ツォルバ竜騎士団という精鋭部隊がいる。
フリディエリは、ハルガルドからウイプル王国の動きを聞き、力なく笑った。
竜は、本当に死んだのだろうか、と。
ハルガルドが、小さく頷いた。
フリディエリは、悲しそうに天井に目をやっていた。
貴方には、ラリュナピュートが、怒り狂っていたのではなく、苦しんでいたのだと、
わかっていた?
フリディエリ…さん。
彼は、夜に、あの世へ旅立った。
ジスエルの21日
王城の見張り台にて
___________________
同い年のビエルカ。
僕の顔を見て、気まずそうにしていた。
別に、慣れているさ。
イージブの酒場へ行くのか?
行けばいい。
僕は、そこへは行かないから。
最近は、他国の動向で、家にも帰っていないし、ずっと帰らなくてもいい。
居場所は、戦場。
コーリオ王国への援軍に、僕も加えてくれれば、良かったのに。
去ろうとした僕に声をかけて、
父親を探しているのか、と言ってきた。
探してはいない。
探しても。
仕方がない。
ビエルカの父親は、僕の父親を知っていると言っていたから。
何か知っているのだろう。
生きているみたいだけど、という言葉を聞いて、そして。
ビエルカの表情を見て、僕は返事をした。
わかった、と。
君の表情を見て、わかったんだ。
一度も会った事がないという事が、物語る。
わかってるさ。
あちらは、会いたくないんだろう。
いいさ。
僕も、会いたくはない。
ジスエルの22日
王城の見張り台にて
___________________
ドメイル教信仰国オルフブ王国の軍勢は、コーリオ王国軍とウイプル王国増援軍に対して、優勢。
その相手の兵が、骸の姿をしていたという報告がある。
コーリオ王国は、東のアスデン王国に軍の救援要請をしたらしい。
リガード竜騎士団騎士長アーマンは、王城で再び国王と話をしている。
ドメイル教の推奨する聖戦とは。
南には、今は大人しくも、帝国主義のカーディアもある。
お母様の好きなウイプル王国を、守れる様に。
どの国だろうと、
容赦はしない。
それが、貴女の望みでしょう。
ジスエルの23日
王城の見張り台にて
___________________
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる