111 / 113
第4章 貴方へ愛の言葉を
アタフの伝言
しおりを挟む
フラペイルは、アタフの言葉の意味を出し渋ったり、僕と自分自身がこのカインハッタ牢獄から出られないと口にしても、その先は言わず、僕に対して訝る目をするから、僕は賭けに出た。
ケツァル島の言語なのは明らかだ。ごまかすと言うのなら、君はこのカインハッタ牢獄から永久に出さない様にする事にしよう、そう言った。
僕はウイプル王国のリガード竜騎士団の一員で、それは僕がここに来るまでに周知の事だろう。
ウイプルにおける僕の権力は決して小さくはない。
もちろん、不当な事に使うつもりはない。
でも、それは相手の出方次第でもある。
ここに収監するまで運んだバルケーを盗賊に渡すのに力を貸したのなら、なおさら容赦はしない。
フラペイルは少し間を置いて、ため息を吐いて、許しを請う様な目をしてみせた。
箝口令でも敷かれていたとしても、徹底できず、口を開いてしまったのなら、観念して話してほしい。
そう思った。
囚人のベリオストロフ・グリーンディにこれ以上勝手な事をさせるつもりもなく、彼自身、手詰まりなのも感じていた。
僕は、不審な動きを見せ、そして僕を殺そうとした本物のゲーベルドンの普段の行動や、それに関連した出来事を、このフラペイルは知っていると思っていた。
いくつかの壁を触ったりして、何かを感じ取り、失望したり、アタフの意味不明な言語の意味を訊いた時に変に動揺したり、僕がこのカインハッタ牢獄から出られないなどと、普通の看守が言うにしてはおかしい。絶対にないとは言い切れないが。
僕がフラペイルに向けた目は、確証を得た、揺るがない目、ただそれだけだった。
正直言って、そこまでの確証などない。
でも、僕に残された時間など、大してないだろうし、小さな機会もそこから糸口をつかんでいく必要があった。
そして。
その糸口となり得る言葉を口にしたんだ。
だから、僕は慎重に言葉を選んで返したんだ。
その事について、正直に話してほしい、と。
彼が口にした言葉は、看守としての役割の一つにも聞こえる。
その1日に問題を起こした囚人に、夜中に独房に入れる事。それを実行したかと、アタフの口を使って確認された、と。
彼が言ったのは、囚人が昼間に問題を起こしても、独房へは夜中に入れるという事。そこが重要だ。
すると、話は繋がる。
夜中に本物のゲーベルドンが壁などをすり抜けたり、ミノタウロスの力を借りたりしてその独房へたどり着き、その囚人を紫の海賊へ生贄として渡す。
ただ、その日はうまく事が運ばなかったのだろう。
僕が、牙を剥いて襲いかかる本物のゲーベルドンを倒したからだ。
その日には、生贄になるべき者が独房にいなかったのか、時間が経ち、生贄を囚人部屋に戻さなければならなかったのか。
そこを訊きながら、次第に話の真相を知る事にしよう。
ケツァル島の言語なのは明らかだ。ごまかすと言うのなら、君はこのカインハッタ牢獄から永久に出さない様にする事にしよう、そう言った。
僕はウイプル王国のリガード竜騎士団の一員で、それは僕がここに来るまでに周知の事だろう。
ウイプルにおける僕の権力は決して小さくはない。
もちろん、不当な事に使うつもりはない。
でも、それは相手の出方次第でもある。
ここに収監するまで運んだバルケーを盗賊に渡すのに力を貸したのなら、なおさら容赦はしない。
フラペイルは少し間を置いて、ため息を吐いて、許しを請う様な目をしてみせた。
箝口令でも敷かれていたとしても、徹底できず、口を開いてしまったのなら、観念して話してほしい。
そう思った。
囚人のベリオストロフ・グリーンディにこれ以上勝手な事をさせるつもりもなく、彼自身、手詰まりなのも感じていた。
僕は、不審な動きを見せ、そして僕を殺そうとした本物のゲーベルドンの普段の行動や、それに関連した出来事を、このフラペイルは知っていると思っていた。
いくつかの壁を触ったりして、何かを感じ取り、失望したり、アタフの意味不明な言語の意味を訊いた時に変に動揺したり、僕がこのカインハッタ牢獄から出られないなどと、普通の看守が言うにしてはおかしい。絶対にないとは言い切れないが。
僕がフラペイルに向けた目は、確証を得た、揺るがない目、ただそれだけだった。
正直言って、そこまでの確証などない。
でも、僕に残された時間など、大してないだろうし、小さな機会もそこから糸口をつかんでいく必要があった。
そして。
その糸口となり得る言葉を口にしたんだ。
だから、僕は慎重に言葉を選んで返したんだ。
その事について、正直に話してほしい、と。
彼が口にした言葉は、看守としての役割の一つにも聞こえる。
その1日に問題を起こした囚人に、夜中に独房に入れる事。それを実行したかと、アタフの口を使って確認された、と。
彼が言ったのは、囚人が昼間に問題を起こしても、独房へは夜中に入れるという事。そこが重要だ。
すると、話は繋がる。
夜中に本物のゲーベルドンが壁などをすり抜けたり、ミノタウロスの力を借りたりしてその独房へたどり着き、その囚人を紫の海賊へ生贄として渡す。
ただ、その日はうまく事が運ばなかったのだろう。
僕が、牙を剥いて襲いかかる本物のゲーベルドンを倒したからだ。
その日には、生贄になるべき者が独房にいなかったのか、時間が経ち、生贄を囚人部屋に戻さなければならなかったのか。
そこを訊きながら、次第に話の真相を知る事にしよう。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる