剣士アスカ・グリーンディの日記

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第4章 貴方へ愛の言葉を

アタフの伝言

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フラペイルは、アタフの言葉の意味を出し渋ったり、僕と自分自身がこのカインハッタ牢獄から出られないと口にしても、その先は言わず、僕に対していぶかる目をするから、僕は賭けに出た。

ケツァル島の言語なのは明らかだ。ごまかすと言うのなら、君はこのカインハッタ牢獄から永久に出さない様にする事にしよう、そう言った。

僕はウイプル王国のリガード竜騎士団の一員で、それは僕がここに来るまでに周知の事だろう。

ウイプルにおける僕の権力は決して小さくはない。

もちろん、不当な事に使うつもりはない。

でも、それは相手の出方次第でもある。

ここに収監するまで運んだバルケーを盗賊に渡すのに力を貸したのなら、なおさら容赦はしない。

フラペイルは少し間を置いて、ため息を吐いて、許しを請う様な目をしてみせた。

箝口令かんこうれいでも敷かれていたとしても、徹底できず、口を開いてしまったのなら、観念して話してほしい。

そう思った。

囚人のベリオストロフ・グリーンディにこれ以上勝手な事をさせるつもりもなく、彼自身、手詰まりなのも感じていた。

僕は、不審な動きを見せ、そして僕を殺そうとした本物のゲーベルドンの普段の行動や、それに関連した出来事を、このフラペイルは知っていると思っていた。

いくつかの壁を触ったりして、何かを感じ取り、失望したり、アタフの意味不明な言語の意味を訊いた時に変に動揺したり、僕がこのカインハッタ牢獄から出られないなどと、普通の看守が言うにしてはおかしい。絶対にないとは言い切れないが。

僕がフラペイルに向けた目は、確証を得た、揺るがない目、ただそれだけだった。

正直言って、そこまでの確証などない。

でも、僕に残された時間など、大してないだろうし、小さな機会もそこから糸口をつかんでいく必要があった。

そして。

その糸口となり得る言葉を口にしたんだ。

だから、僕は慎重に言葉を選んで返したんだ。

その事について、正直に話してほしい、と。

彼が口にした言葉は、看守としての役割の一つにも聞こえる。

その1日に問題を起こした囚人に、夜中に独房に入れる事。それを実行したかと、アタフの口を使って確認された、と。

彼が言ったのは、囚人が昼間に問題を起こしても、独房へは夜中に入れるという事。そこが重要だ。


すると、話は繋がる。

夜中に本物のゲーベルドンが壁などをすり抜けたり、ミノタウロスの力を借りたりしてその独房へたどり着き、その囚人を紫の海賊へ生贄として渡す。

ただ、その日はうまく事が運ばなかったのだろう。

僕が、牙を剥いて襲いかかる本物のゲーベルドンを倒したからだ。

その日には、生贄になるべき者が独房にいなかったのか、時間が経ち、生贄を囚人部屋に戻さなければならなかったのか。

そこを訊きながら、次第に話の真相を知る事にしよう。
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