剣士アスカ・グリーンディの日記

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第4章 貴方へ愛の言葉を

面会人

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ベリオストロフ・グリーンディに面会があった。

もちろん、看守2人が戸のすぐ外で話を聞いているため、下手な事を言う事はできない。

しかし、2人の会話は、全く重要じゃない、他愛のないものが続いていた。

ただ、ベリオストロフ・グリーンディの、会話の中で、手がない、という言葉だけは少し不可解な事だと思ったんだ。

手がない、とは、手段がない、という事を言いたいんだろう。

そう言ったかと思うと、目がない、の間違いだった、と声を抑えながら笑っていた。でも、その言葉を聞いて、動揺した体の動きをしたのは、面会人だ。

カッタという魚を包んだパイには、目がない、という言葉を、カッタという魚を包んだパイには、手がない、そう間違えたんだ。

カッタという魚は存在する事は間違いないけれど、臭みの強い川魚で、好んで食べる者など、いるわけがない。

特に、貴族階級にいた者が、そのカッタという魚を口にする瞬間などないはずだ。

カインハッタ牢獄の現状を伝えたかったんじゃないだろうか。

本物の看守長ゲーベルドンが倒された事か、偽物の看守長ゲーベルドンが失踪でもしたか、それによって、ベリオストロフ・グリーンディが、ヘイル・サイン騎士隊が、企てていた事が実行できなくなった、そう伝えたいのだろうか。

面会人は、ベリオストロフ・グリーンディとの再会を約束して、看守2人にお金を渡し、去っていった。

ベリオストロフ・グリーンディと面会人の会話は、彼の体調や、牢獄内での過ごし方、ウイプルの街の状況など、本当に他愛のないものに終始していた。

その会話が特別な意味をなさない、ただ久々の交流をしただけの話なのかも知れない。

でも、僕は今日の何処かの時間で、彼に話しかけてみようと思っていた。

もちろん、意味のない会話をするつもりはない。

そこで、隠された真実というものを確認するつもりでいた。

そう簡単に、核心の話をするわけがないけど、こちらもそう時間があるわけじゃない。

それに、僕がこのままこの牢獄内で、もう少し長く過ごせるとも思っていない。だから、囚人バルケーと共にこのカインハッタ牢獄に帯同した護衛兵の1人に、この孤島を去る前に頼んでいたんだ。ある事を国王に伝える様にと。

もし、この牢獄内に不審な動きを確認した場合。それが、ウイプル国王が軽視できないと判断した場合。

ウイプル軍が、このカインハッタ牢獄の全てを制圧する事になる。

その前に、僕は僕で、今、この瞬間、できる事をやるだけだ。


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