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第4章 貴方へ愛の言葉を
真偽のゲーベルドン
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僕を威嚇するかの様な目をし続けていたゲーベルドンは、竜剣ジオグリシェルに砕かれた彼の心臓部の紫の宝石に輝きが失われていくとともに、目の力も失っていった。
小さな唸り声を上げながら、最後の時を迎える。
お前が希望に見えた絶望の始まりは、終わりを迎える。
もう、何も思い残す事なく、あの世へ旅立て。
ゲーベルドンの荒々しい息は、やがて、子供が寝静まる穏やかな吐息へと変わり、そして。
ゲーベルドンは、怪物の姿のまま、ゆっくりと目を閉じ、
死んでいった。
ゲーベルドンとの戦いは、もう、これ以上はない。
ただ、
これで、囚人が生け贄として海賊に連れていかれる事がなくなるとは思えない。
偽者のゲーベルドンの正体をはっきりさせる必要がある、と。
偽者のゲーベルドンが、ゴルイルの魔女によって復活した紫の海賊なら、何をすれば、その紫の海賊がまた深い眠りに戻るのか。
ゴルイルの魔女の放った呪文というものを、無効にはできないのだろうか。
正直言って、魔法というものの存在に未だ疑いの目は持っている。
魔法というものに、理解が追いつかないけれど。
ミノタウロスの迷宮も、一種の魔法と言えば、魔法だ。その現実を、受け止めないといけない。
ベリオストロフ・グリーンディが、そのゴルイルの魔女の呪文と紫の海賊について、何か知っているのかも知れない。
かんたんに答えるはずがないけど、聞いてみる事にしようと思う。
しばらくして、ミノタウロスの命が消えたとわかった。
このカインハッタ牢獄に仕掛けられた迷宮は解かれ、牢獄本来の姿を取り戻したと、感じた。
いつも通りの、カインハッタ牢獄に。
カツン、カツンと、看守が牢獄の回廊を歩く足音が響いている。
僕が迷宮を解かれた時にいた場所は、カインハッタ牢獄の何処の場所かの一室。
最初は、この場所が何処かわからなかったけど。
少し離れた場所で、鍵を開ける場所が聞こえた。
そして、僕の方へ向かって歩いてくる足音。
その足音は、壁の向こう側で立ち止まり、何かを外した小さな音が聞こえた。
この壁の向こう側に立つ者。
足音は1人だった。
僕のいた部屋は、天井から月明かりで微かに光が入る程度で、部屋に何があるのかはわかりづらかった。
壁が開かれ、光が入ってくる。その光の中に、1人の影が見えた。
その時に、この目の前の者は、まさか僕がこの部屋にいるとは、思いもしないだろう。
そう思ったんだ。
壁を開いた者の手には、ランタンを持ち、月明かりとは比べものにならないほどの光を放っていた。
その者は僕を見るなり、口元を緩め、笑みを作った。
僕がこの部屋にいる事が予測できたかの様に。
この牢獄における、厳重な見回りに感謝します、騎士殿、と言ってきた。
その余裕のある笑みは、虚勢でも張っているのか、それとも、よほどの自信があるからなのか。
わからないけど。
僕を見くびると、きっと後悔する事になる。
久し振りに姿を見せた、
偽者の、ゲーベルドン。
小さな唸り声を上げながら、最後の時を迎える。
お前が希望に見えた絶望の始まりは、終わりを迎える。
もう、何も思い残す事なく、あの世へ旅立て。
ゲーベルドンの荒々しい息は、やがて、子供が寝静まる穏やかな吐息へと変わり、そして。
ゲーベルドンは、怪物の姿のまま、ゆっくりと目を閉じ、
死んでいった。
ゲーベルドンとの戦いは、もう、これ以上はない。
ただ、
これで、囚人が生け贄として海賊に連れていかれる事がなくなるとは思えない。
偽者のゲーベルドンの正体をはっきりさせる必要がある、と。
偽者のゲーベルドンが、ゴルイルの魔女によって復活した紫の海賊なら、何をすれば、その紫の海賊がまた深い眠りに戻るのか。
ゴルイルの魔女の放った呪文というものを、無効にはできないのだろうか。
正直言って、魔法というものの存在に未だ疑いの目は持っている。
魔法というものに、理解が追いつかないけれど。
ミノタウロスの迷宮も、一種の魔法と言えば、魔法だ。その現実を、受け止めないといけない。
ベリオストロフ・グリーンディが、そのゴルイルの魔女の呪文と紫の海賊について、何か知っているのかも知れない。
かんたんに答えるはずがないけど、聞いてみる事にしようと思う。
しばらくして、ミノタウロスの命が消えたとわかった。
このカインハッタ牢獄に仕掛けられた迷宮は解かれ、牢獄本来の姿を取り戻したと、感じた。
いつも通りの、カインハッタ牢獄に。
カツン、カツンと、看守が牢獄の回廊を歩く足音が響いている。
僕が迷宮を解かれた時にいた場所は、カインハッタ牢獄の何処の場所かの一室。
最初は、この場所が何処かわからなかったけど。
少し離れた場所で、鍵を開ける場所が聞こえた。
そして、僕の方へ向かって歩いてくる足音。
その足音は、壁の向こう側で立ち止まり、何かを外した小さな音が聞こえた。
この壁の向こう側に立つ者。
足音は1人だった。
僕のいた部屋は、天井から月明かりで微かに光が入る程度で、部屋に何があるのかはわかりづらかった。
壁が開かれ、光が入ってくる。その光の中に、1人の影が見えた。
その時に、この目の前の者は、まさか僕がこの部屋にいるとは、思いもしないだろう。
そう思ったんだ。
壁を開いた者の手には、ランタンを持ち、月明かりとは比べものにならないほどの光を放っていた。
その者は僕を見るなり、口元を緩め、笑みを作った。
僕がこの部屋にいる事が予測できたかの様に。
この牢獄における、厳重な見回りに感謝します、騎士殿、と言ってきた。
その余裕のある笑みは、虚勢でも張っているのか、それとも、よほどの自信があるからなのか。
わからないけど。
僕を見くびると、きっと後悔する事になる。
久し振りに姿を見せた、
偽者の、ゲーベルドン。
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